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播磨陰陽師の独り言・第三百九十九話「四谷怪談現象」

 かの有名な四谷怪談は作り話です。
 と言うと、
——えっ、祟りがあるのに?
 と首を傾げる方も多いと思います。しかし、実話ではありません。
 確かに東京の四谷にはお岩稲荷と呼ばれる神社があります。お岩様を祀っていますが、向かい合わせに二社あるのです。この二社に祀られているのは、両方ともお岩様のモデルです。実はふたつの物語が合わさって、四谷怪談の物語が出来ていたのです。
 架空の物語の筈の怪談で、祟りなど起こるものでしょうか?
 こんな話があります。
——ただの廃墟で、人が死んだと言うこともなく、怖いと言う噂があるだけの建物。そこに肝試しに行ったばかりに化け物に出会ってしまった。
 とか、
——いくら調べても事故物件ではなく、怪しさもないアパート。だが、住むとそこに亡霊が出る。
 と言う。
 これらはただの根も葉もない噂だけしかないのですが、霊現象が起きるのです。正しくは〈霊現象を引き寄せる〉と言った方が良いかも知れません。
 ただ恐れて噂話をするだけで、現実の方からやって来るのです。これを〈四谷怪談現象〉と呼びます。
 四谷怪談現象は、ありもしない場所に恐ろしい霊現象を作り出すものです。この現象は恐怖の感情によって発生します。いると思って恐れると、それだけで、恐れた場所に発生します。この現象のせいで、調べても原因の分からない種類の霊現象が多発するのです。
 たとえば、根も葉もない学校の怪談の花子さんに出会う子供が発生します。そして、騒ぐと〈集団ヒステリー〉と判断され、何となくうやむやになってしまいます。
 霊現象の多くは、怖がる人々の感情によって引き寄せられます。本当にあるかどうかは問題ではありません。そして、見る人によって、見えるものが違って来るのです。見えるものが違う……と言うのは、たとえば、女の霊を見る人もいれば、同じ場所で男の霊を見る人もいると言うことです。奇妙な化け物を見る場合もあります。しかし、それらは同じものなのです。たまには違う場合もあります。ですが、多くは同じものです。同じ霊現象が、見る人によって異なるのです。これは霊現象の霊現象らしい特徴です。

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