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播磨陰陽師の独り言・第百七十一話「霊符文字のこと」〈後編〉

 左右対象の文字を霊符に書くのは、霊たちが読めるようにするためです。これは前回に説明を書きました。
 この左右対象の文字には、もうひとつの意味があります。この意味を説明する時は、左右対象の文字を〈鏡像文字〉と呼ぶことにします。ここで説明する〈鏡像文字〉は宇宙の真理を表す文字です。宇宙の真理は、宇宙にあまねく存在する神霊の基本原理ですので、その意味からも知っておく必要があると思います。
 さて、この宇宙の根本的な原理を表す言葉に、
——上のように下にも。
 と言うものがあります。
 これほ、下は原子の動きから上は惑星の運行に至るまで、同じ原理原則の働きによる宇宙の振る舞いがあることを表しています。ここで言うところの振る舞いは、ある種類の美しい音楽のようなパターンを持っています。それが、より完全な状態、つまりは高次の神霊に近づけば近づくほど美しいと感じるようになります。
 一方、低い次元の霊性は美しくない振る舞いを持ちます。こちらは不協和音のように聞こえる嫌なパターンを持っています。しかし、この不協和音のような低い次元の霊性は〈悪〉と言う意味ではありません。良いとか悪いとかの善悪は、人間の立場や都合によって決まる物事ですので、霊性には無関係なのです。この時の高次な神霊を形で表した物が左右対象の形です。
 最終的には左右上下が対象の形が理想なのですが、それでは文字を作ることが出来ませんので、左右を対象とした文字を使うのです。左右対象の文字は出来る限り対象である必要があります。そうなると、文字の概念を超えて絵のような文字になって行きます。この絵のように左右が対象となった文字を霊符に使うと、より高次の神霊が集って来ると言います。こうなったら、書いてある言葉の意味と書いた人の心の状態が神霊に伝わるのです。神霊が読むのではありません。また、書いた人が伝えるのでもありません。あくまでも、心のあり方が伝わって行くのです。そして、何を願うかどうかは無関係に、さらに、善悪すら無関係に心の状態に合った出来事が未来に起こります。
 十日恵比寿の福男さんの多くが、
「福どころか不幸になっている」
 と、最近、話題にのぼります。
 高次の神霊は心のあり方にピッタリの出来事を引き起こすだけなので責任はありません。ただの自業自得な出来事が、福男になったために、少し早く起こったと言うだけです。これらも、宇宙の高次な神霊と言うか、実際は神霊の眷属が起こす出来事です。福男になろうとしたり霊符に左右対象の文字を書く時は、その意味からも普段の心のあり方に注意する必要があるのでした。

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