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少女漫画的な展開よりもどこまでも間接表現で繋がって行く関係性が心を動かす(「Nのために」第6話レビュー)

登場人物が出揃った第5話から、事件に繋がる人間関係のベース構築までがほぼ済んだと言える第6話。ドラマ後半に差し掛かるにあたり、いよいよ、と歯車が動き出すのはお決まりと言えども、かなりの急展開が感じられた第6話だった。ただしミステリー展開として面白みを増す「急展開」と引き換えに、第5話でも指摘したように「丁寧な心の通じ合い」がやはり見えづらくなっている。

急展開、といえばまさに西崎(小出恵介)と奈央子(小西真奈美)。第5話ラストシーンでようやく初対面、1話内で不倫関係まで持っていくスピードは、ドラマ尺は短きもの、と言えどもやりすぎではないかと思える。第5話でも西崎と希美(榮倉奈々)の関係性の深まりが見えないと指摘したが、今回はさらにその上を行く。この二人は「(受けた側の)罪の共有」のような、ある意味希美と成瀬(窪田正孝)の裏返しのような強い結びつきを得たわけであるが、西崎の小説を読んだだけであの突然の展開とは、あまりに端折りすぎだろう。西崎についてはあくまでミステリ一要素として見ろ、ということなのだろうかと思うが、彼周辺の人間関係についての描写の希薄さはどうしても気になってしまう。

これが何故気になるかといえば、青影島での希美と成瀬の描かれ方との落差が原因となる。「青影島編と東京編は別物として見る」と割り切って見るのがこのドラマの正しい見方な気はするが、あえて同列に置いて見ていきたい。

希美と成瀬がどこまでも間接表現で繋がって行く関係性だったのに対して、より直接的に関係性が描かれるのが希美と安藤(賀来賢人)。明るい展開で育まれる二人の関係性は、一つ屋根の下、仕組まれた沖縄への二人旅行、そこで起こる「酔っ払ってキス」アクシデント、とある種陳腐なほどに少女漫画的に描かれる。それは西崎の言葉を借りれば「正しくて美しい」ものであり、「罪の共有」として闇の部分を抱えた成瀬との関係性ときれいな対比関係にある。「希美-安藤」の描かれ方の陳腐さも、この対比のための恣意的なものなのであろうが、結果的に繊細に心を動かしてくるのは当然「希美-成瀬」の方であり、作品内での描写の優劣までついてしまうように思える。決して「希美-安藤」の関係性が魅力的ではないわけではなく、むしろ輝かしいシーンは多いのだが、2組の対比を通して、改めて陳腐な展開を繊細に描くことの難しさを感じた。

水たまりを踏みつけるハイヒールと、上がる水飛沫。都会的な淋しさを思わせるタイトルバック。


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