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山羊文学の源流である、青春エッセイ(『夜空の下には僕達しかいなかった』山羊メイル著)

バイトをしたいが、テニスもやりたい。腹が減るがテニスもやりたい。
時間がない。
https://note.com/yagicowcow/n/nb682bfa861a6

高校生燃費悪すぎますよね。夕飯食べてるのに、うっかりすると夜食にどんぶりで卵かけご飯食べた日もあります。炊飯器が空で、パスタをありったけ茹でたらすごい量で、残せばいいのに必死に食べ切ったのも、作品を読む内に思い出しました。あの頃は、胃袋が暴力。

しかし地元の駅まで1時間。のどの渇きは限界だ。
Yと話もせず、二人黙りこくる。
駅に着いてから飲むものを考えないと。財布を見る。23円しかない。Yに聞く。僕よりひどい。12円。水だ、駅のホームやトイレで水が飲めるはずだ。
https://note.com/yagicowcow/n/nb682bfa861a6

神宮球場でバイトを済ませ、表参道で金がない2人。コンビニも自販機も使えない。ホームもトイレも使えずに、脱水大丈夫かって体で地元まで帰るのです。踏んだり蹴ったりですけど、これが青春。

この作品の中に、他の小説で書かれた要素と結びつくものがあるように思います。テニスだけでなく、働くことも、人がいいことも、友情も。もしかしたら「喪失と回復」をお書きになるキッカケもあるのかも。

Yさんのところには、何でもあるでしょう。「日本の法律関係ないし健康上の問題もないから、冷えたビールも飲める」って、笑って言い返されるかもしれませんね。その理屈はおかしいだろって。noteの小説も読んでくれてるでしょうね。ZOOM繋がるのかな、繋がって欲しいな。

僕らは物語を物語ることで、死者の名前を取り戻し、生きている者の心の中に甦らせることが出来ます。物語は、追悼の1つの選択肢でしょう。

脱水でカラッカラになり、飲めるだけ水を飲んで、月のない夜に星の光を浴びた時間は、山羊さんの創作の源の1つに思えるのです。聖なる時間ですよね、きっと。

本作を読む順番が悩ましい。これを読んでから、小説に入るか、小説を読んだ後にこれを読むか。悩むけど、「あとがき」みたいな位置付けで、小説群を先に読むことを、私は勧めます。創作の源流を見ずに、小説を味わって欲しいから。

順番はどうあれ、必読です。

👆ヘッダーはこげちゃ丸さんからお借りしました。

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Thank you for taking the time to read this.