見出し画像

子育てが人生を豊かにするわけ【幸福学第一人者 前野教授×カラダノート代表 佐藤】

当社は「家族の健康を支え笑顔をふやす」を掲げ少子高齢化の社会課題の解決を実現したいと考えています。
 
少子化を改善するにあたって官民ともに様々な対策が講じられるなか、私たちは、子育てにおける不安等のマイナスをゼロにするだけでなく、どうすればもっと幸せに、笑顔になるのか、を考えたいと思っています。
 
そういった思いから、少子化に取り組まれる企業や有識者とカラダノート代表 佐藤との対談を通じて、少子化を解決する上での「課題」だけでなく、インタビュイーご自身の「子育ての魅力」についてなども発信してまいります。
 
第一弾となる今回の対談は、幸福学第一人者 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏にインタビューしました。

少子化の原因は、大人が幸せではないこと

佐藤:本日はよろしくお願いいたします。
 2020年の上場を経て現在の私たちは、子育てをアプリでDX化する以外に、環境を変えるような社会的なムーブメントを起こしたく、社会全体への発信を強化したいと考えています。

そこで、様々な角度から研究されている方や少子化に取り組まれる企業様との対談を通じて、事業に限らず、少子化を解決する上での「課題」を伺いたいと考えています。
 
また、以前、前野教授のお子さんが「幸せな人生を送る自信がある」と話されていた、とおっしゃっていたのが印象に残っていて、そういった子育てのコツについても、ぜひ教えて頂きたいと思いこのような機会を持たせて頂きました。

前野教授(以下:前野):ありがとうございます。よろしくお願いします。

佐藤:前野教授に最後にお会いした3年前から少し私のステータスが変わりまして、4人目の子どもが生まれました。子どもが2人から3人に増えたときは少し大変さを感じましたが、3人から4人はあまり変わらない感じです。少子化が社会問題となるなか、日本の子育て環境に閉塞感を感じるのですが、何が原因だと思われますか?
 
前野:様々な原因があるのは大前提ですが一つ挙げるとすると“幸せじゃない大人が増えていること”だと考えます。自己肯定感が低く、未来に自信がない大人が多い。僕が子どもの頃は高度成長期で未来を明るく描くことができました。大人たちも定年まで働けばなんとかなり、社会全体に希望があった時代です。
 
佐藤:おっしゃるように、時代の変化も大きいですね。前野教授がおっしゃった、大人の自己肯定感が低い背景はどのように考えられていますか?
 
前野:昔から大人でも自己肯定感が低い人は多かったと思います。日本人は自信のない民族と言われるように、他の人種に比べ心配性な人が多い。
 
高度成長期は、終身雇用もあり皆が定年まで働ける安定した環境がありましたが、終身雇用が崩れ、不透明な時代を自力で切り拓く必要もでてきました。仕事で結果をださなければ、収入が減少し、収入が少ないから結婚ができず、結婚ができないから子どもを望む人が少なくなっているのではないでしょうか。少子高齢化の問題の根底には、こういった雇用環境の変化や格差の拡大があると思います。
 
佐藤:子育てする上でお金の問題は大きいですね。
 
厚生労働省の調査によると、私が生まれた1984年頃は、父親は働いて母親は専業主婦の家庭が多く、子どもがいる世帯の平均年収は約550万、現在は共働き世帯が増え平均約750万というデータがあります。社会保障費の上昇もあるため手取りが増えたか一概にはいえませんが、世帯年収は昔よりあがっています。当時の出生数は約140万人で、昨年の84万人からすると非常に多い。
 
現在は、世帯年収は増え、待機児童も大きく減少しているにも関わらず、ワンオペ育児という言葉があるように、子育てがしにくいという声が多いのが日本の現状だと考えています。

子育てで大切なのは、夫婦の会話とつながり

佐藤:2019年に実施した、前野教授との共同調査では、ママの幸福度に影響が高いのは、「夫婦間の家事のシェア率」と「夫婦間の会話」という結果でした。

 印象的だったのが、「旦那さんとの家事育児の共有率が2割を超えると幸福度の平均値を超えたこと」また、夫婦の会話では、仕事やお金の話題よりも、子どものことを会話する家庭の方が幸福度が高かったことです。

前野:子育て中に夫婦の会話があるのは大切です。量より質だと思いますね。
 
夫婦で話し合って決めたことなのでネガティブなことはなかったですが、子どもが小さい頃、妻は専業主婦でした。その頃、私は仕事で夜中の12時に帰ることも多い生活でしたが、帰ってから1時間ほど妻から子どもの話を聞くのが楽しみでした。「今日はこんなことがあって、あれができるようになった」と妻から聞き、週末に子どもと一緒に過ごすなかで、妻の言うように、子どもの成長を感じるのが楽しみでもありました。
 
佐藤:仕事で忙しい中でもご夫婦で会話する時間を作ってこられたのですね、素敵です。ほかに、お子さんが小さい頃、やってよかったこと、楽しかった思い出はありますか?
 
前野:僕には長男と長女、2人の子どもがいます。子どもの幼稚園のパパ友とのつながりで、その頃から5家族ぐらいで仲がいいんです。子どもが小さい頃は毎年のようにその友達家族と一緒にキャンプへ行きました。
 クリスマスには、同じメンバーでクリスマスパーティーもやっていましたね。毎年お父さんが順番にサンタクロースになって、すぐに「〇〇ちゃんのパパ」とわかるのですがそれもまた楽しくて...

5家族でキャンプに行った帰りの集合写真(提供:前野教授)

子どもを通して、親同士のつながりがあるのはよかったです。今は子どもも大きくなり子どもと親で集まることはなくなりましたが、時々親同士で近況報告をしています。思い出のコアがあるのはいいですよね。
 
佐藤:子どもを中心に、親同士のつながりがあるのはいいですね。
 
前野:子育て中につながりを持つと、孤独感が少なくなると思います。
 妻は妊娠中にマタニティ教室に通ったのが良かったと言っていました。出産月が近い同士でつながりができたので、産後に夜泣きについて情報交換したりして助け合えたんです。
 昔は親戚や自分のお母さんとのコミュニケーションがあったように、そういったつながりは子育てにおいて大事ですね。
 
佐藤:子育てにおける孤独は重要な課題ですね。子育てが1人に偏らない環境をつくる点で、弊社の妊娠・育児関連アプリの家族共有機能は重要な役割を担っていると思います。

子育てとは、自分育て

佐藤:前野教授にお伺いしたかったことが「前野教授にとって子育てとは」という質問でして、20年以上の子育て経験を経てどのように思われますか?
 
前野:そうですね。子育ては「自分育て」だったと思います。
 生まれる前はこんな子になってほしいと結構思いましたが、子どもって全然思うようにならないじゃないですか(笑)最初の3年くらいは思うようにならないことばかりで衝撃でした。
 
ですが、自分も親の思うようにはなっていないわけで、逆に親の思うようになる子ってこわいと思います。親の思うようにならないのなら、この子の良さを育てようとなったんです。とにかく「子供を信じて育てる」を続けてきました。
 
佐藤:子育ては自分育てと、僕自身も本当にそう思います。子供がいるからこそより良い未来を残そうと考えますし、「自分磨き自分育て」という部分でも子育ては大事なのかなと思います。
 
前野:本当にそうだと思います。自分で言うことでもありませんが、子育てを通して自分の愛情が育ったと思います。
 例えば、子どもが挫折している時に、ここで手を差し伸べるべきか、可哀想だけどグッと堪えて突き放すのか、など愛情のいろんな形を考えてきました。こういった体験を通して、おこがましいですけど自分の器が成長したと感じます。

桜舞い散る春の日に娘さんの入園式に向かう前野教授のご家族(提供:前野教授)

佐藤:「子どもを信じて育てる」というお言葉のように、前野教授は子どもがやりたいことを尊重してこられたからこそ、「幸せになる自信がある」と言い切れる、自己肯定感が高いお子さんに育ったのですね。
 
実は、前野教授のお子さんのエピソードから、我が子も「幸せになる自信がある」と言えるような子に育ってほしいと思っています。
 
前野:ありがとうございます。ゲームというと語弊はありますが、子どもが「幸せになる自信がある!」と思えるにはどうすればいいか、を考え子どもと接することで、子育てがもっと面白くなるのではないでしょうか。

※子ども自身が幸せになる自信を持てるようにどうすればいいか。『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』にヒントがたくさん詰まっています!

子育てが人生を豊かにする

佐藤:前野教授のお話を伺い、やっぱり子育ては楽しいものだと確認できましたし、自己成長にもつながると再認識できました。
 
前野:子育ては楽しいですよね。ニュースやメディアでは「結婚して子どもができると幸せ」という発信が少ないように感じます。離婚したニュースや「子育ては大変」と思える内容が多く、発信する側は、もっと子育ての楽しさ、人生が豊かになることを広めてほしいと思いました。
 
佐藤:そうですね。本日の先生との対談を通じて、子育ての素晴らしさに改めて気づけた時間でした。子育ては自分を成長させ、人生をより豊かにするというプラスの面も発信していきたいと思います。
 
前野:こちらこそありがとうございました。子育ては楽しいとどんどん発信してください!


今後も、カラダノートでは、様々な角度から「少子化という社会課題」と「子育ての魅力」を発信してまいります!

今後の参考にさせていただきたく、記事に関するアンケートを募集しています。ぜひお声をいただけたら嬉しいです!
▶︎
アンケートフォームはこちら


この記事が参加している募集