松雪泰子さんについて考える(17)『ミス・ジコチョー〜天才・天ノ教授の調査ファイル〜』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:7点(/10点)
作品の面白さ:7点(/10点)
制作年:2019年(NHK)
視聴方法:U-NEXT(別途料金)
 
※多少のネタバレを含みますが、結末には触れないようにします。
 
松雪さんが主演。NHK制作の連ドラ。
単独主演となると、『5人のジュンコ』(2015年、WOWOW)以来か。準主演まで広げると『グッドパートナー』(2016年、テレビ朝日)以来のはず。
 
ジコチョーは「事故調査委員会」の略。工学博士の天ノ真奈子(松雪)が、様々な企業・組織の事故調査委員会の委員に委嘱され、独自の観点と考察によって事故の原因と真相を突き止める。推理モノ・サスペンス的要素のある作風。基本的には一話完結。
 
主人公の天ノ教授(松雪)は、研究者によくいるような少し変わり者。癖が強いとまでは言わないが、朴訥としているようで我が強く、プライドが高いようで弱気なところもある。そして、女性らしいようで中性的な雰囲気もまとったような、つかみどころのない感じだ。今まで松雪さんが演じてきた役柄のどれとも似つかない、独特のキャラクター。全編通してメガネというのも珍しい。
 
作品自体の面白さとしては、謎解き要素があるため、観ていて普通に楽しめる。推理モノと比べると緊張感やスリルがあるわけではなく、多少地味ではあるが、他の作品が取り上げない事故調査委員会というテーマは、オンリーワンで悪くない。
 
ある意味実験的な作品・テーマ選びなので、もう少し工夫・改良できる余地があるような気がした。社会的な要素、ドロドロとした人間関係、組織の病弊などの味をもう少し加えれば、もっと重厚な仕上がりになりそう。そういう意味では、この1クールだけで終わらせるのはもったいない。もうひとひねりさせた続編を観てみたい。
 
ところで、松雪さん以外の役者さんについて。
 
同じ研究室のメンバーとして、まず須藤理彩さん。『救命病棟24時』(2001年)以来、約20年ぶりの共演。今回は、須藤さんの方が強気な役柄。
 
それから、高橋メアリージュンさん。個人的には、『闇金ウシジマくん』出演時の残忍なキャラのイメージが強いので、子を持つ優しい女性役が新鮮だった。
 
そして、天ノ教授の母親で同じく工学博士役の余貴美子さん。同じNHKで、『半分、青い。』以来1年ぶりの共演。2人とも、『半分、青い。』とは性格もタイプも全く違うキャラクターなのが面白い。ちなみに、遡れば、映画『子宮の記憶 ここにあなたがいる』(2007年)でも共演しているので、他になければ3度目の共演。
 
『半分、青い。』といえば、同作で夫婦役として名コンビだった滝藤賢一さんが第7話でゲスト出演。今回は「元」夫役。
 
ということで、派手さは無いが素朴でそれなりに面白い作品なので、おすすめ。松雪さんに関しては、痺れるような名演技のシーンは無いけれども、全体として好演。
 

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