書店員かっぱ(・θ・)

ちいちゃな書店の書店員をする傍ら、ペン画・木版画・三色色鉛筆を用いて異形や人物を描いて…

書店員かっぱ(・θ・)

ちいちゃな書店の書店員をする傍ら、ペン画・木版画・三色色鉛筆を用いて異形や人物を描いています。 こじれた人間関係のもどかしい模様、怪奇幻想小説の投稿もしております。みてってちょ〜

最近の記事

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書店員でいる私。

 簡単な自己紹介を致しますと、わたくしみどりのかっぱとしてきゅうり畑で新鮮なきゅうりを収穫する労働に就いております。今回はその中でも兼業している書店員として仕事をする自分について書き連ねて行こうと思います。  街に一つしかない小さな書店に棲息しているわたくしは初めてのお仕事が書店員でした。人見知りで人前に出て目立つことをするのも苦手、将来は事務や裏方の仕事に就いたほうが無難だろうナァ、なんて思う専門学生でした。学んでいたのは版画。一人黙々と作業をする行為を日々重ねる生き物が

    • 正体のない不安から抜け出したい私の話

      不調をみつめる日  先の記事でも書いた通り、泥々に精神を崩している。  精神不調を訴える場所もあてもないため自分のなかに溜め込んで蠱毒の如く煮詰まる頃には強固な希死念慮が出来上がる。心と頭と体へ膜のように覆い被さり、浸透しきって剥がれない。  友人へ気軽に話を振れる程度を越してしまっている。そのような自覚がある。自分のことを話せる友はいるが、それでも相手の調子を損ねたくないという気遣いをこの瀬戸際でも発揮して自分から話しかけることができない。  友はいる。それでも手を伸ばせな

      • 孤独と不安のレッスン

         今、自分はとても元気だ。同時に、強烈な孤独と不安に苛まれている。  孤独でいることを恐れる必要はない。「多数」でいることにより生まれる軋轢で心をすり減らす必要はない。「個」でいることに重きを置いていれば、あらゆる不安がのしかかる人間社会の中でひとり立って生きていける。知ってはいる、けれど頭と心と体が分かってくれない日がある。それがここ一ヶ月続いている。いや、心の深くに根を張って、ずっと体を蝕んでいる。土を掘り返さなくても姿が見える。骨が露出している痛みを感じる。  専門学

        • 書店員かっぱの好きなことしたい、ぼやぼや、ぼやき

           クジラや白鳥にコウモリ、ザリガニまでいる、近頃賑やかな話題書コーナー。カマキリ先生なる存在もいるらしいですね。生き物の知識に触れる機会は多ければ多いほどいいと私なんかは思うわけです。私は海洋生物が大好きなのでいつか小さくてもイイ、さかなクンさんコーナーを作りたい。美しい海中の世界を伝えてくれる鍵井靖章さんの写真集も置きたいし、深い海を身一つで潜り続ける二木あいさんの活動も紹介したい。沖縄美ら海水族館の研究員をされている佐藤圭一さん、冨田武照さん共著の「寝てもサメても深層サメ

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        書店員でいる私。

          きのしのねんりょと、すみれちゃんの話

           どうしても拭えない気持ちがある。
  夜ごとに訪れる、薄まることのないきのしのねんりょ。
  毎晩毎晩、もう一度朝日が昇ることが酷く苦痛で、綺麗な日の下になんていてはいけない生き物なんだと自分の存在を認めることができない、夜。毎晩のように音もなく忍び足で擦り寄ってくる希死念慮くんを布団に迎え入れて一緒に眠る、眠れないが、それでも朝日は窓から入りこんで部屋を青色に染めていく。それを明方四時にただ見つめている。考え事を沢山している、ような気がしているが、蓋を開ければ自己否定の堂

          きのしのねんりょと、すみれちゃんの話

          お客さまと、読書がもたらす体験にすこうし、救われた話。

           自死の機運が高まるこの頃、新しい風を受けねば、遂行してしまう。 そう思って新しく文庫本を手に入れてみた。タイトルは「麦本三歩の好きなもの」。へこんだり笑われたりしながらもゆるやかに生きていくひとりの女性の物語。と、最初の数頁を読んで好感触を得ている。あまり読むことのない文体で、足元にたくさん扱いかけの考えや道具やなにがしかが散乱している三歩のあたまのなかから出てきた言葉がそのまま文章になっているようでちょっぴり愉快だ。論理的にかちこちに固まった、平たく言えば「正しい」文章に

          お客さまと、読書がもたらす体験にすこうし、救われた話。

          赤松【小説】

           秋生が呼ぶ。 「おーい、そろそろ一休みいれたらどうだ」 「はあい。行こう、鹿島君」  机に広げていた本へしおり代わりに鉛筆の後尻を挟むと書生は書斎の扉をくぐって居間へ歩む。 「書生君は勉強熱心で見てるこっちがやる気出さなきゃって思っちまうな」  笑いながら家主、秋生が床に坐す。敷かれたランチョンマットの上にコーヒーカップを二つ添えると、不器用に足で挟んだコーヒーメイカーのポットを傾けて、褐色の液体をカップに注いでいく。  御丁寧にどうも、と書生が笑む。視線を感じ振り向くと、

          n

          どうしても諦めきれないものがあったらどうする? この世に生を受けてから四半世紀を過ぎても私はそんな強い執着を何某かに抱いたことはなかったから考えても答えが出ない。手に届かないから諦めるほかないだろう。自尊心も自己肯定感も持ち合わせていない生き物の自分に、なにものにも代えられないものなんて、望みが強過ぎて想像すらできない。 そう思っていた。昨日までは。 自分に納得いかなくて、自分が嫌いで、自分が惨めで、失敗をする度にころしてほしいと呟くのが口癖になってから十の年月が過ぎた。変

          心優しい人たちへ

          生涯をかけて蒐集してきた言の葉たちに意味を感じなくなることが起きていてそれは少し、だいぶ、怖いことのように思う。進化、つまり変化をしていくことが生物の定義だと私は思うがこれは望んだ変化ではない。自分の体さえ自分の思う通りに動かせない事実に諦めてしまいたくはないがやや辟易していて思考を放棄してしまう。時は繰り返さない、と心から愛する小説家が作中繰り返していた。時は繰り返さない、戻ることはできない。わかっているつもりで未だ未熟な己の魂が厭々と頭を振るう。 少し外の空気を吸いに近

          心優しい人たちへ

          赫景【小説】

           水で濯いだようだった快晴が夕刻を過ぎるにつれて、赫く、焼け焦げたように変わっていく。辺りは縁取りを残して燃えたように紅蓮に飲み込まれる。  ぼうぼうと葦が生い繁る人気の無い小径を踏み歩く書生は、畑の中に立つ細い電信柱の陰に、黒い影が蠢くのを見た。目が、合う。体が慄く。抱えた風呂敷を握り直し、咄嗟に砂利道を走りだす。得体の知れないなにかが追ってきているような錯覚を覚え、後ろを振り返ることもできずにただ走った。下駄の鼻緒が指股に食い込んでじくじくとした痛みが走る。畑を抜けた先に

          火葬【小説】

           人気の途絶えた細い路を黒い影が歩いていく。辺りには誰もいない。先を見ても周囲を見回しても、どこまでも続く薄闇に草木が揺れるだけだ。陽が沈み、日陰から立ち現れた夜気が、しっとりと風や地面を濡らしている。空を切る様な甲高い音を感じて、鹿島は目線を上げた。長く続く土路の先に小さな人影を捉える。足付きはたどたどしく路の向こうからこちらに向かってふらふらと歩いてくる。幽かな月明かりのなかに足を踏み入れた、その、小さな姿を認めた。  短く質素な着物に身を包んだ齢五、六の童だった。先刻耳

          見てくれてありがとう! の御礼!

          こんばんは。 段々と夕の寒さが濃くなって参りましたね。 真っ黒な街並みから切り取られたみたいに暮れてゆく茜空を見つめる度、「このまま街の闇の中へ消えていけたらいいのにな」と考えます。誰も私を探さない場所があるのなら向かってしまいたい、と。 こんなことを思えるのも普段親しくして下さる皆さまがいるからでそこに甘えた戯言なんだと分かっています。分かっております。こんな子供じみた戯れた思いを胸に閉じ伏せて自分を傷つける想像から目を逸らす毎日です。 さて、前置きが長くなった、というよ

          見てくれてありがとう! の御礼!

          クラブ「優美(ゆうみ)」【小説】

           大きな案件を抱え疲労を感じる日々だったがそれも晴れて円満となり、社内はにわかに和らぐ。秋生と藤田もこのところ書類に営業にと仕事に追われるだけだった日々に区切りがついてほっとしていた。藤田の担当する業務を補助する形で仕事を任されてきた秋生は、藤田を含め社内の人間の苦労が報われたことを喜んだ。 「ぱあっとやろう。今日の終業後、宴会だ」  社内がわっと盛り上がる。秋生も責務からの解放感から、ほっと息をついた。  藤田と秋生のデスクは離れている。といっても三つほど隔てた位置にあるの

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          酔い心地・秋生ver.&藤田ver.【小説】

          秋生ver.  再び酒を注ごうとすると藤田の手が瓶を奪って遠ざける。抗議の視線を投げると程々にしておけ、といさめられた。  体が熱い。気怠さに顔を伏せるも、肩に手をかけ揺り起こされる。でもまだ、飲み足りない。この時間から抜け出したくない。今夜もなんでもない夜だ、でもまだ眠りたくない、ここにいたい。アルコールに痺れた頭では、聞きわけのない子供地味た我が儘だなんて、判る筈もない。  腕を掴んできた藤田の胸に緩く縋る。酒が回りきって、吐息が熱い。頭が重くて傾く。揺れるままに頬を寄

          酔い心地・秋生ver.&藤田ver.【小説】

          宵酒を交わそう【小説】

          「秋生、さっきの酒……」 「わ、入るな、馬鹿」 「え、なんで」 「……とにかく来んな」  ガチャ。 「入るなって言っただろーが!」 「なんだ、普通じゃない」 「……っ」 「さっきの酒。呑まない?」 「……ああ」 「お前の部屋でいいか」 「……」  ベッドから床に移る秋生。扉を閉め、藤田がその向かいに座る。  持参したワイングラスに赤い酒を注ぐと、芳醇な香りが漂う。  小皿にチーズやナッツを転がすと、さて、と藤田が一杯目をあおった。  仕事の近況に始まり、野良猫が駐車場をうろつ

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          コバルトブルー【小説】

           しまった、と思うより先に、ガチャンと派手な音を立てて食器が床に砕け散った。後を追って湿りきった白いタオルが滑り落ちる。己の不注意から出た要らぬ失敗に、静かに溜息がこぼれた。片付けなくては。そう思うものの、秋生はその場から動けずに、ぼんやりと足元で砕けた破片を見下ろす。  割れてかけらとなった物はもう微かな音も立てなかった。大小様々な破片は尖っていたり欠けていたりといびつな形だというのに、元からそこへ置かれていた物のように厭に静かだった。粒ほど小さな違和を感じて立ち尽くしてい

          コバルトブルー【小説】