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初見の問題に対応できるようになるには…

ある授業中、生徒に

初見の問題は絶対解けない。同じ問題を最低1回は解かないと無理」

と宣言されたことがあります。

ベテランの年になって、
ある程度満足のいく数学の授業を提供できていると考えていた私には
かなり衝撃的な発言で、
生徒の切実な思いを理解できたと同時に、
指導の仕方を工夫しなければならないと思い知らされました。

テストにおいて初見の問題に遭遇したとき、
生徒たちの反応は大きく分けて2つ考えられます。

上記のように感じている生徒の場合、
初見の問題は全く新しい未知の問題であると考えてしまうため、
解法を「0」から模索しなければならないという反応を示します。

一方、同じ初見の問題でも、
出題の仕方のアレンジが違うだけであると考え、
今まで学習してきた知識の中から解法を模索するという反応を示します。

もちろん、どちらの反応を示しても、
解ける問題は解けるし、解けない問題は解けません。

しかし、同じ初見の問題でも、スタート時に

未知のものと感じるのか
既知のもので解こうと考えるのか

で結果が大きく変わってきます。
もちろん後者のほうが解ける可能性が高くなることは明らかです。

テストにおいて
前者の生徒の場合、解答欄に空欄が多く、
後者の生徒の場合、解答欄に自分の考えをなんらかの形で記入しています。

正解不正解は別にして、解答欄に何かを記入している場合、その形跡から

どんな知識を活用しようとしていたのか
どのように考えようとしていたのか

を読み取ることができるので、
それに基づいて次回につなるアドバイスや指導ができます。

しかし、解答欄が空欄の場合は情報が「0」のため、
ポイントをしぼった指導が難しく、一般的なアドバイスしかできません。


また、この反応は普段の授業でも見られます。

例えば、
2x+3+5x-8という文字式の計算を学習した次の日に
(2x+3)+(5x-8)という計算を学習する授業をしたとします。

教師サイドは、前時の文字式に( )がついただけだから
すぐに対応できると考えるんですが、

( )がついただけでも生徒にとっては初見の問題であり、
それを全く新しい未知の計算式と感じてしまう生徒が一定数います。

未知の問題と捉えてしまうと、
前時の文字式の計算と関連付けようとしないため、
( )をはずすだけで、
前時の文字式と同じ状態にできるという発想になかなかたどり着きません。

ではなぜ、初見の問題を未知のものと捉えてしまうのかと考えると、

・授業で学習した知識がつながっているという実感がない
 実感できる授業になっていない。

・知識をつなげようとする考え方
 学習した知識を活用しようとする考え方を指導できていない

・数学が系統的な学問であることを伝えきれていない。
 連続性を感じさせる授業になっていない。

・「解ける」「できる」経験を授業で十分積ませておらず、
  苦手意識を払拭させていないため、
  初見の問題に拒絶反応を示してしまう。

などの原因があげられます。

そこで私は、
初見の問題に対応できるようになるための指導のポイントとして、

①知識をつなげること、知識がつながっていることを実感させること
②未知の問題はないと意識させること、
 出題の仕方が違うだけだと認識させること
③相違点と類似点を意識させること
④学習した知識を優先的に活用する習慣を身につけさせること 
⑤類似問題やいろいろな出題パターンの問題に取り組ませ、
 知識の様々な活用法を経験し、「解ける」「できる」実感をさせること

を念頭におくようになりました。

同じ知識でも1つの活用法しか知らないのと、
複数の活用法を知っているので大きく異なります。

数学が得意な生徒は知識に対する理解度が深いため、
教師が指導しなくてもその知識の様々な活用法を思いついていきますが、
全員は不可能です。

生徒に考えさせるだけでなく、教師側から
様々な知識の活用法もそのスキル込みで知識として提供し、
定着させれば、初見の問題に対する対応力が向上し、
意識改革できるはずです。

1つの問題を50分間かけてじっくり考えさせる授業もありますが、
たった1つの問題では経験不足が解消できないため、
初見の問題に対応できない生徒の意識が改善されることは難しいでしょう。

そうはいっても
苦手と感じてしまっている生徒ほど、
初見の問題を未知のものと反射的に考えてしまうため、
なかなか意識改革が難しいのが現実です。

少しずつでもいいから、
「あっ、これ、前にやった問題と同じだ!」
「違う問題だけど、解き方が全く同じだ!」
という感想がもてるような教材を提供し、指導を続けるしかないでしょう。

小学校の算数の段階から、なるべく苦手意識が根付かないように
指導のポイントを念頭において生徒をサポートできればいいんですが、
教科担任制でない小学校では厳しいのかもしれません。

ちなみに中学生の頃、数学が大の苦手だった私は、
初見の問題を未知のものと感じる派でした。

中学3年生のときの数学の先生のおかげでその考え方を打破でき、
なんとか志望校に合格できたことを思い出しました。
その感謝の思いを生徒に恩送りできる教師になったのに
大事なことを忘れており、
私は知識ではなく思いがつながっていなかったようで大いに反省しました。


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