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増える猫、減る猫

 ナショナルジオグラフィック(日本版)の2022年3月号の見出しは、「よみがえるビック・キャット」であった。インドに生息しているベンガルトラとインドヒョウは、それまでの数百年の間で個体数が大幅に減少していた。しかし、同誌によると、2018年の個体数調査で3,000頭近い野生のトラが生息していることがわかり、個体数は2014年と比べて33%増加した。ヒョウに関しては、生息数は2014年から62%増え、13,000頭近くになるという。

 一方で、個体数が減少し、もはや絶滅と言っても過言ではないビック・キャットもいる。それは、インドから少し西へと移動したところにあるイランのアジアチーターである。イランの環境庁によると、2010年には100頭だったチーターは、現在わずか12頭である。さらに問題なことは、このうちメスが3頭しかいないということである。少ない個体数で偏った性比であれば、絶滅の可能性は高くなる。また、仮に一時的に世代を繋ぐことができたとしても、近交弱勢による悪影響を避けることができない。

 インドでの保全の成功理由は、適切な保護区の設置と運営がなされたことである。一方、イランでの個体数の減少は、干ばつや狩猟、自動車事故が主な原因である。ナショナルジオグラフィックによると、インドの保護区には、太陽光発電の電力によって作動する井戸もあり、常にビック・キャットの飲み水が確保されているという。このビック・キャットの増加と減少は、人類による適切な保護の有効性を示している。ただし、イランのアジアチーターを保全することは、もはや絶望的である。

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