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頭も心も柔らかくありたい / デイヴィッド・ホックニー展

先日、11月5日まで東京都現代美術館で開催中のホックニー展に、ギリギリ滑り込んだ。
わたしのような人が多かったのか、3連休前の平日にも関わらず多くの人でごった返していた。

ひと足先に展示を見ていた夫に(わたしはコロナ罹患で留守番していた)「絶対行くべき!」と言われたり、知り合いの何人かも「すごくよかった!」と言っていたりで見る前から非常にハードルが上がっていたのだけど、さすがホックニーともなれば、そんなハードルはいとも簡単に超えてきたのであった。


ホックニーは何枚もの大きなキャンバスを外に運び、そこで絵を描くといった時代錯誤的な一面もあれば、iPadが発売された2010年から、iPadをつかって絵を描いてきた先鋭的な一面もある。
今回の展示にもiPadを使った多くの作品が展示されていたが、そのどれもが素晴らしかった。
大御所アーティストが新しいものを貪欲に取り入れるだけでなく、それを作品として仕上げ、発表している。
なんか圧倒的な「肯定」を感じる。
好きなものに対して素直でいたら楽しいよ、こっちおいでよ、みたいな。



なんだか幸せな気持ちになって家に帰り、改めてウェブサイトを覗いたら、ホックニーからのメッセージがあった。
日本の若者に対するメッセージをホックニーはこう答えていた。

My only real message is "be yourself".
Find out what you love doing.
If you love it, it will come across it will
Or you have happier reasonable life if you enjoy your work.
I enjoy my work enormously.
I wouldn't know what to do if I don't work, really.
I've always had enough money to do what I wanted to do every day.
This is even when I didn't have that much money.
From about 1962 or 3 when I found out I could paint and make a living at it.
I was thrilled, really, and so I set out on my life's work.
But you have to be yourself.
That's my advice for everybody.
Everybody, including the young and the old.

ありのままのあなたでいなさい。それが伝えたい唯一のメッセージです。
自分が好きなことを見つけてください。
心の底から愛せるものにいつかかならず、巡り合うことができるでしょう。
自分がなすべきことを楽しめば、より幸せで、悪くない人生を送ることができます。
わたしは自分がなすべきことを全身全霊で楽しんでいます。
働かなければ何をすればいいのかわかりません。
日々こうしたいと思ったことができるくらいのお金は持っていました。
それほどお金がなかった頃でも。
1962、3年の頃だったかと思います。
その頃から絵で生計を立てれるようになりました。
とてもわくわくしながら、人生を捧げる仕事への一歩を踏み出したのです。
ありのままの自分でいること。
これがみなさんへのアドバイスです。
年齢に関係なく、みなさんに向けて。

デイヴィッド・ホックニー展 ホックニーさんからのメッセージ(YouTubeより)


86歳を過ぎてもなお、革新し続けている理由がわかった気がする。
好きなものを見つけられた幸せ。
それを今もなお、ホックニー自身がその喜びを噛み締め続けているのかもしれないと思ったら、胸がいっぱいになった。


世の中には新しいものをワクワクして取り入れられる人と、そうじゃない人がいる。
新しいことは知らなくて当たり前。でも、それがちょっと怖い。
知らないことを知るのは学びのはずだけど、いつからか素直に学べなくなる。
新しく何かを始めようとすると、たとえそれが自分の知ったジャンルであっても、失敗するリスクがある。
これまでの蓄積された技術は通用しないことだってある。
あろうことかたとえベテランであったとしても、慣れるまでは自分の力を発揮できなくて、やっぱり前の方がいいじゃないかと落ち込みもするだろう。

うーん、怖い。

そういう怖さを乗り越えるには、それが好きだという気持ちを信じるしかないのだな、と思う。

わたしも、新しいものを怖がらない人でいたい。
新しいものを横目でチラチラ見て、本当は手を出したいのに悪口を言ってごまかすようなおばさんにはならないようにしたい。
何歳になっても、好きなものを好きだと言える人でいたいし、新しいことを知りたいとちゃんと言いたい。

そんなことを思ったホックニー展は、あさって5日まで。

最後まで読んでいただきありがとうございます。よければまた、遊びに来てください。