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防災のためのバンライフ(VanLife)を通じたレジリエンス(Resilience)について

いつ災害が起きても不思議でない、日常のなかで

地球温暖化により、気候変動による異常気象や台風や地震のような自然災害が世界各地で起きている。

“災害は、いつ自分の身に起きてもおかしくないもの。

私は、幼少期から冷静にそう捉えていた。実は、生まれてから10歳になるまでの間、茨城県東海村という原子力施設のある村で育った。日本で原子力の灯をともした初めての村でもあった。国内の優秀な研究者がたくさんいて、科学に触れる機会も多かった。

そんな楽しい日々が続くと思っていた矢先、事件が起きる。1999年9月30日、原子力発電というのはトップニュースにもなるような事故が起きた。「東海村JCO臨海事故」といえば、覚えている人もいるだろうか?事故当時は、日本中のニュースで話題になった原子力発電事故だった。このとき、私は9歳だった。

私が居住していた区域は避難勧告のある半径10kmではなかったが、数週間は自宅隔離をしていた。当時、人口が3万人程度の小さな村に多数のメディアが村を訪れて、連日取材をしていた。私も、事故当時に通っていた学校から避難をするとき、避難する少女としてテレビに小さくだけど映り込んだこともあった。自身が"被災者"になっていたことは大人になってから知った。

原子力がある村だからこその恩恵を受けていただけに、事故は子どもながらに大きなショックを受けた記憶がある。しかし、親や先生の指示に従って冷静に避難しようと思っていたのは、幼少期から近所にある原子力施設で原子力の基本情報を学んだ経験や、避難訓練を学校で受けていたことがあったからだと思っている。このとき、幼いながらにも、日頃から正しい防災の知識としっかりとした備えをすることの大切さを実感を今でも覚えている。

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話は変わるが、大人になってからも、災害について考えさせられる機会があった。昨年、2019年10月12日、幼少期から憧れ続けた私自身の結婚式に、まさかの今世紀最大級の大型台風が直撃したのである。

小さい頃から見守ってきた娘の晴れ姿を、親族は心から楽しみにしてくれていたのに...。そんな思いは記録的なハリケーンに見事に引き裂かれた。

「なんで、こんな大切な日に…。」

と嘆きながらも、 “災害は、誰も教えてくれることなく、突然自分の身に降りかかるものということ”を、悔しくも人生で最も大切な日に悟った。

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環境はコントロールできない、いま自分にできることからはじめよう。

“災害に遭ったときにどうするか。”

この問いに対して、これまで私は家族と議論をし尽くしてきた。最終的に、私たち家族は、

“Withコロナ”ならぬ“With災害”という考え方

を抱くようになった。どんな災いが起きても、心身ともに健康を保ち、生活し続ける環境を普段からつくっていこう。と誓ったのだ。

普段から防災に親しみを持って生活をとなると、好きという気持ちが必要になる。そこで、目を付けたのは、バンライフ(VanLife)という新しいライフスタイルだった。

バンライフや車中泊にハマり始めた理由は、もともと好きだった海外ドラマの様なお洒落な世界観に魅了されミーハー心から軽い気持ちで始めたものだっだ。Instagramに映る、海外のバンライファーに心掴まれたりした。

しかし、あるときにバンライフや車中泊特有の良さというものと時代のニーズがパズルのようにしっかりとハマる感じがあった。

拠点を問わず働ける自由に仕事ができる環境、オフグリット、防災インフラともなりうると気づきはじめたのだ。

そこから、私はこのバンライフという世界中の人が熱狂されるこのライフスタイルに、これからの時代を生き抜くヒントが詰まっているとまで考えるようになった。

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都会に住んでいても、私には“きっと、大丈夫”と言える安心感がある理由

私は、普段から自宅にある、愛車のシエンタに、マット・毛布・ガスコンロ・ランタン・水・袋・タオル・バッテリーなどを荷台に載せて、水害や地震など何かあった場合でも車とともに避難できるようにしている。

そして、週末は週末バンライフという形で旅をして、車内での暮らしに“慣れ”と“快適さ”を感じるようにしている。

そうすることで、万一、自分の環境に何かあった場合でも、私には安心して過ごせる、もう一つの家があるという自信を持てるようにしている。

私は、まだまだバンライファーとしては軽微な方で、本格的にバンライフをしている人物によっては、オフグリットとして車にソーラーパネルを取り付けて自己発電をして暮らしている人もいる。

工夫次第で、一軒家やアパート・マンションで過ごすような毎日を車内でできるけど、まだまだ「車中泊」・「バンライフ」に対して、ネガティブな印象を持って警戒する人は多い。

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正しい車中泊をすれば快適になれるもの。

2004年の新潟県中越地震、2016年の熊本地震、2020年7月の豪雨と、被災をする人のなかには、車中泊を用いて避難していた人も一定数存在していたという。

避難時に車中泊をする人は、正しい車中泊の仕方を知らず、「エコノミー症候群」に悩まされたというケースや避難所で車中泊をして避難をする人の支援に課題があるという。

まだまだ、車中泊、ましてはバンライフといったライフスタイルは、限定的で社会に根付いていないのでもあると思う。正直、車中泊やバンライフは万人に対して推奨するものでも受け入れられるものではないと考えている。

しかし、有事の際に、役立つ存在である以上、学校や企業での防災活動では車中泊や今流行のキャンプといった概念でも良いので、防災訓練の一環として「サバイバル」を取り入れて、一種の苦手意識というのを取り除く必要もあるのではとも思っている。

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知って欲しい、いざというときの車中泊という用心棒

私は、被災のときにこそ、車中泊やバンライフは防災インフラとして役立つものだと考えている。 

例えば、女性が避難する際は、車で夜間だけでも安全な地域に逃れてロックができる個室空間で眠りにつくことは安心できないだろうか。性被害・赤ん坊を抱える親の肩身の狭さ、常時よりも混乱する秩序のない世界には、守られたプライベートな空間が必要だと思う。

私は、ある記事をみて衝撃を受けた。

“複数の男性に暴行を受けました。騒いで殺されても、海に流され津波のせいにされる恐怖があり、その後、誰にも言えませんでした・・・。”

トイレに行こうとしたら、知らない男性に襲われた。

夜中に赤ん坊が泣いたら「うるさい!」って怒鳴られた。

被災をして、自分も傷ついて余裕もないのに、第二災害になんて遭ったら。

誰にも「助けて。」と頼れなかったら...。

想像するだけでも心底腹が立つし、やりきれない思いになる。

私は、女性として生まれたからこそ、想像の範囲だけでもリアルに現場が想像できて共感する。今後は車中泊・バンライフを防災インフラとして、避難所の設計・運営・避難訓練に役立てていくようにしたいなと考えている。

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実は進んでいる、防災×バンライフ

今年の新型コロナウイルスや7月の豪雨で、キャンピングカーが大活躍をしたのをご存知だろうか。

新型コロナでは、Carstay株式会社がクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」にて、医療機関向けにキャンピングカーを病床や休憩所として提供する「VAN SHELTER(バンシェルター)」プロジェクトを通じて、医療従事者の慰労に貢献したという。

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さらに、2020年7月の豪雨の際は、NPO法人カタリバの協力要請を受けて、バンシェルタープロジェクトが、医療現場の支援のみならず、被災した地域で活動を行うボランティアの方々に向けてキャンピングカーの無料貸出を行った事例もある。

また、Vanboysという名前の20代前半の若い男性4人グループは、昨年台風被害に遭った地域を、Carstay株式会社から提供を受けたバンでバンライフをしながらボランティア活動を行なった実績もある。

このように、キャンピングカー・バンは、災害時における貴重なレジリエンスの手段として、被災した人々の心を安らげる空間になりうるのだ。

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これからの未来のためにできること。With災害

自分の命を守る。大切な家族を守る。

そのためにも、日頃からの備えが必要だ。実際に被災したときは、頭でシュミレーションしていたことの100%はできないと思う。だけど、何かあったときに冷静な判断ができるように、出来ることはある。

バンライフは、平時の時は旅やワーケーションといった有意義な生活に、有事の時は被災者を守る存在になると思う。

私は、バンライフが、単なる旅や娯楽のみならず、人々を救う防災インフラになりうる、ニューノーマル時代に必要なライフスタイルであると考えている。バンライフを車中泊を一足先に知った当事者として、ここはしっかり伝えていきたいし、役立てていきたいと思う。

まず第一弾は、来月・再来月あたりに都内の高校向けに授業を予定している。災害大国ニッポン、台風・竜巻・地震・噴火などいつ何が起きるかわからない。みんなで防災のためのレジリエンスについて考えていきたい。

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