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建長寺で生まれた「けんちん汁」が心底おいしくて感動します〜鎌倉・点心庵レポート〜

人生で最もおいしいけんちん汁は、建長寺門前にあった。

にんじん、大根、ごぼう、豆腐などをごま油で炒め、昆布や椎茸のダシを加えて煮込み、醤油で味付けするけんちん汁。これまでは「どっちかっていうと地味〜で淡泊な味よね」という印象しかなく、「だったら豚肉たっぷりの豚汁のほうが好き♡」とか思っていました。

完全に、けんちん汁の奥深さと魅力を見誤っていました。
本当のけんちん汁は、地味どころか滋味に富んでいたんです。
そのおいしさを知った今、知らなかった頃の無知な自分を恥じたい。けんちん汁に謝りたい。でも同時に、「今の私はけんちん汁のおいしさを知っている!」と誇らしく思うくらいです。

そのくらい、おいしかったんです、本当のけんちん汁は!

008点心庵けんちん汁

けんちん汁は今や全国区ですが、発祥は鎌倉の建長(けんちょう)寺。けんちんという名前も「けんちょう」がいつの間にかなまって、「けんちん汁」として定着したといわれています。

「けんちん汁と豚汁ってどう違うの?」と聞かれたこともありますが、けんちん汁は本来精進料理なので、そもそも肉は入りません。私は豚肉の旨みがしっかり味わえる豚汁も大好きですが、けんちん汁に肉を入れちゃったら台なし。そもそもの味わい方、おいしさの方向性がまるで違うのです。

というわけで、建長寺を散策する前に、門前に店を構える 『禅茶寮 点心庵』でけんちん汁を味わってきたお話です。
※見どころの多い建長寺については以下にまとめました!


建長寺の老師から伝授された「伝承 建長汁」

鎌倉五山の第一位として知られる臨済宗建長寺派の大本山の巨刹、建長寺。

018建長寺三門

けんちん汁誕生につながるエピソードも、じつに徳が高いというか、なんともいいお話なのでちょっとご紹介します。

昔、小坊主さんが食事の用意のために豆腐を運んでいたら、
あやまって落としてしまい豆腐がくずれてしまいました。
悲しそうな顔をしている小坊主さんを見て、和尚さんが
「気にしないように」と、そのくずれた豆腐を使って
汁を作ったのが始めだという説もあります。
(「伝承 建長汁」を提供する『点心庵』のパンフレットより)

もう、この時点ですでにけんちん汁を愛さずにはいられませんよね!

今回うかがった『点心庵』は本来のけんちん汁を正しく再現しているといわれています。その理由は、建長寺の老師から調理方法を伝授されたから。これはもう、疑うべくもない「本物の味」ですよね。

なので、メニューにも「けんちん汁」ではなく「伝承 建長汁」と誇り高く記されています。教わったレシピを今後もずっと受け継いでゆくぞ、という心意気を感じます。

008点心庵けんちん汁

お椀には、建長寺の吉田老師の書が。この写真には文字の全容は写っていませんが「而今」と掘られています。三橋 鎌幽さん作の素敵な器なので、召し上がるときにぜひ直接ご覧ください。
ちなみに「而今」とは、道元禅師が中国での修行時代に悟った世界観。「ただ、今、この一瞬」(→過去にも未来にもとらわれず、今をただ精いっぱい生きる)というような意味です。この言葉を銘柄にした日本酒もありますよね^^

「けんちん汁×塩むすび」はお肉以上のごちそう!

さて、前置きが長すぎてごめんなさい。
今回注文したのはもちろん「伝承 建長汁」。塩むすびが2個と煮物、お漬け物がついて990円です。お得っ!

007点心庵けんちん汁

「くずれた豆腐を活かしたのが始まり」なので、お豆腐は手でちぎってあります。手でちぎると味も入っておいしいんですよね。

お味はですね〜、もうなんか、想像を超えていました。

同じ写真を何度も使っちゃってごめんなさい↓
でもでも、見てください↓。油の膜が浮いているでしょう?

008点心庵けんちん汁

ごま油づかいが本当に本当に、絶妙なんです。香りだけで食欲が増すような。醤油の味付けも文句のつけ所がありません。地味でも薄味でもない。それどころかむしろ活力がわいてきて、どんどん食べ進んでしまう味です。塩むすびがすごくよく合うし、煮物の味付け、箸休めのお漬け物も最上級。

これぞ和食の魅力!と感動してしまいました。

食べ終えてすぐに「あぁ、夕飯もこれが食べたいなぁ」なんて思ってしまったほど。
そうなんです。どう見ても、派手さ、華やかさのある料理じゃないですものね、でもだからこそ「また食べたい。すぐにでも食べたい」ってなるんじゃないかな。

009点心庵


ちなみに息子は「お肉食べたい」と「自家製ローストビーフ丼 わさび醤油ソース」を頼みました。それはそれでもちろんおいしかったそうですが、私のけんちん汁、塩むすびを少しずつ味見して「・・・次は絶対けんちん汁にする!」と心に誓っていました。「お肉を食べたい」というモードの男子さえも満足するおいしさ。それが「伝承 建長汁」なのです。

010点心庵

けんちん汁だけじゃない。『点心庵』はお庭も素敵!

『点心庵』は椅子席のほか、お庭の見える個室などもあります。私たちがうかがった際、ちょうどその個室が空いていたので、なんとも気持ちのいい接客をされるおねえさんが、「よかったらお料理をお待ちの間、あちらのお部屋からお庭などもご覧くださいね〜」と声をかけてくださいました。

001点心庵

写真も自由にどうぞ〜、とのことなので、待ち時間を利用して撮影タイム。

何枚か撮ってみたけど、なんか息子が一番サマになってる気がする・・・。
小さい頃から神社仏閣が大好きだし、前世は僧侶だったのか・・・?

004点心庵
002点心庵
016点心庵

最後の1枚は、気のいいおねえさんが撮ってくれました。
『点心庵』、接客も最高だぞっ!

さて、大満足のうちに腹ごしらえが終わったので、この後は建長寺に向かいます。ものすご〜くいい運動になるお寺でしたw  次回のnoteでご紹介します。
そしてその後は、「けんちん汁のレシピ」なんかもご紹介予定です。

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