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駐在妻が帰国後の仕事に困らないためにすべき17の行動【9】現地での語学学習を本気でお勧めするこれだけの理由

みなさんこんにちは!Kaoです。

今日は「駐在妻が現地で外国語を学習することにどれほどのメリットがあるのか」を、誰よりも熱く、本気で皆さんにお伝えしたいと思います。

ここでの外国語は帯同している国の母国語を指します。アメリカなら英語、ドイツならドイツ語、そして中国なら中国語ですね。

結論:
駐在妻は帯同中に語学を学習しておくべき(絶対的おすすめ)

すでに帯同することが決まっている方はもちろん、現時点では一緒に行こうかまだ迷っている方にも読んでいただき、未来への投資として「語学学習」がひとつの選択肢になればと思い、この記事を書いています。

私が経験したことをシェアするとともに、できる限り具体的な情報を盛り込んでそのメリットをお伝えしていきます。

コストパフォーマンス

授業料が安い

はい。めちゃくちゃ現実的なところから入ります。でも、非常に重要な部分です。

国によって多少の差はあると思いますが、日本で外国語教室に通うよりもかなり安い価格で授業を受けることができます。

私が実際に経験した価格はこちらです。

◆1時間あたりの価格◆
【日本】
  中国語教室 5000円(マンツーマン)
【上海】
  中国語教室 1500円~2000円(マンツーマン)
  大学の留学生コース 380~500円(集団授業:15人程度)
  ※上海での授業料は1元=15円で計算しています

◆日本の中国語教室について

日本の中国語教室に関しては、帯同する直前の2週間だけ通いました。簡単な挨拶と数字(日にち)ぐらいは言えるようになってから行こうと思っていたので、ほんの少しの期間だけ大阪市内の教室に通いました。

マンツーマンであれば、1コマの時間は50分~60分で、1コマあたり4500円~5000円という価格ラインです。

※比較的安価なオンライン講座もありますが、中国語は発音を身につける最初の段階が重要なため、初めて学習する場合は通学タイプの教室をお勧めします。

◆現地の中国語教室について

価格比較:
「日本の中国語教室」と比較すると、約半分の授業料で中国語を学習することができる

上海に移住してすぐに通ったのは日本語が通じる現地の中国語教室。最初は日本語が通じる先生がいる教室で学習することをお勧めします。

現地ではコマ数で授業を購入することになります。45分を1コマとする教室もあれば、60分のところもあります。

教室や学習したい語学レベルによって異なりますが、初級だと1コマあたり安くて100元(1500円)、高くて150元(2250円)ぐらいです。

上級になると少し値段が上がります。

また、HSK特別対策コースや、その他ビジネスコースなどもあり、通常のコマ数(購入済授業)に料金をプラスして受講することもできます。

当然ながら、大量のコマ数を一括購入するとその分安くなります。ただ、どの教室もコマ数の「消化期限」を設けているので、通えるペースを考えて購入しましょう。

◆現地の大学について

価格比較:
「日本の中国語教室」と比較すると、10分の1の授業料で中国語を学習することができる

移住4カ月後に現地の大学に通い始めました。(中国は2月が学期スタート月なので、それを待っての入学でした)

留学生コースなので中国人は先生だけ、生徒は全員外国人です。日本語が全く通じない環境なのは事前にわかっていたので、最初の4カ月で「なんとか通えるレベル」まで最低限の語学力をつけるのに必死でした。

結果的に、一番長く通ったのは現地の大学です。1学期あたりの学費は9000元(約14万円)前後です。

1学期は5カ月間で、平日のみ授業があります。中国は春節明けの2月から新学期が始まりまり、夏休みは2カ月ほどあります。(その間、夏期集中クラスを設けている大学もあります)

強化コース(授業数:多)、ライトコース(授業数:少)を設定している大学もありますが、通常コースはどの大学も半日(午前のみor午後のみ)×週5日です。

学費は1学期ごとに支払いができます。上記に記載の金額は、総時間を1時間あたりで割った金額です。

マンツーマンではなく集団授業(1クラス15人~25人程度)ですが、教師の質はかなり高く、私が最もレベルアップできた場所かつ一番長く通った場所が「現地の大学」でした。

では、教師の質についてもう少し詳しく見ていきましょう。

教師の質が高い

日本にもネイティブの中国人教師はたくさんいます。しかし、帯同した国では(その国にとっての)外国と比べるとそれで食べている人が圧倒的に多く、専門教育を受けている人(教師や授業プログラムを組む人)同士の競争もかなり激しいです。

当然ながら、生徒に提供できる質もぐっと高いものになります。

中国語教室でも、大学でも、現地で出会った先生は本当に優秀な方ばかりでした。

ちなみに、現地での中国語教室は自分に合わない先生は変えることができます。生徒側の日本人は、先生を変えたり指名したりすることに遠慮しがちですが、中国人側は全く気にしていません(笑)

私も遠慮なく「この先生しか空いていないなら日にちを変えたいです」と言っていましたし、教え方が上手い先生をバンバン指名していました。

マンツーマン授業に関してもうひとつ。現地の中国語教室で感じたことがあります。それがこちら:

必要以上に日本語で助けを出さない

上海に行ってしばらくは日本語ができる先生がいる中国語教室に通ったのですが、日本語を使うのは「どうしても」のときだけでした。

でも、日本で通った中国語教室も先生もネイティブ中国人ですよね?少し視点を変えて、両者の違いを先生を主軸に見てみましょう。

日本の中国語教室の先生は普段日本語に囲まれて、日本語中心の生活を送っています。当たり前ですよね、生活しているのが日本ですから。一方で、上海の中国語教室の先生は、普段の日常は全て中国語。日本語能力は申し分ないので、初級のときは日本語でフォローしてもらいながら学習するのですが、上海の先生の方が「日本人の私に寄せること」が少ないと感じました。

つまり、よい意味で中国語側に引き寄せてくれる傾向があり、これが最初のワンステップには大きくプラスに働きました。

先生が「無意識の中国語中心」であるのは、生徒の語学力アップにとても効果があると思います。

ちなみに、現地の大学は日本語が話せる人はゼロ。

中級レベルに上がると、どの生徒も中国語でコミュニケーションが取れるようになります。そうなるとだいぶ楽になりますが、初級のときはみんな英語ばっかりで辛かったーー!(泣)

それまでは英語に関して「不得意ではない」と思い込んでいたものの、実際にネイティブのスピードで、ネイティブの表現でペラペラペラペラペラと会話している諸外国のクラスメイトを見て、「全然わからない……」と愕然とする日々を過ごしていました。誰との会話も入っていけずすごくストレスでしたが、今となってはよい思い出です。

中級レベルのクラスに上がると、休み時間もSNSでのやり取りも、全て中国語に変わっていくので、そのストレスも自然になくなりました。

環境

「すぐに使える」の「すぐに」が桁違い

新しく学習したことをすぐに試せるのは、「その国」に住んでいる最も大きなメリットだと言えます。そして、その「すぐに」のレベルが桁違いなのです。

学校で習ったことを、帰り道でもう試せるというなんとも恵まれた環境。私はよくスーパーで試していました。

例えば、語学学校で習ったばかりの「○○はありますか?」。中国語だと、「有○○吗?」というフレーズ。

早速スーパーに立ち寄り、「你好,有酸奶吗?」(こんにちは。ヨーグルトはありますか?)

そのスーパーでは何度も買い物しているので、ヨーグルトがある場所は既に知っています。けれども、「今日習ったこと」が実際に通じるかどうか、毎回試していました。

スーパー以外にも、カフェや文具店、マンションの守衛さんなど、あらゆる場所で試していました。

これには2つのメリットがあります。

【1】アウトプットすることで新しく習ったことが頭に(体に)定着する

どれだけ単語を覚えても、板書しても、「実際に使う」ということをしなければ自分のものにはなりません。ただ、語学学習のアウトプットには相手が必要です。その相手がどこにでもいる――これ以上ない好条件です。授業が終わり、学校の外に一歩出た瞬間から「試し放題」となります。

【2】「自分の中国語はなかなか通じない」を早い段階で経験できる

学校の授業で先生とやり取りしたときは通じたのに、一歩外に出るとさっきと全く同じことを言っているのに通じない――こんな状況によく出くわします。

当然ですよね。多少無理のある発音でも相手が「外国人を相手にするプロ」である中国語教師であれば、必死に耳を傾けた上で何とか意味をくみ取ってくれます。しかし、街中の人はそうとはいきません。少しでも発音が悪いと、「何言っているのかわからない」とバッサリ切られます。

そのときに私が感じたこと――学校の中と外の世界とでは、「合格レベル」が違う。

これにかなり早い段階で気付くことができたおかげで、学校の中だけに頼ることなく、目標を常に高く持ち学習に取り組むことができました。

新しいことを「学習」するのは教室の中。自分が「到達しないといけない指標」があるのは教室の外。

この意識を常に持ち、「中で習う」「外で試す」を繰り返すことが、私の語学学習スタイルでした。これができるのは「その国」で外国語を学習しているからに他なりません。これも、日本では絶対に実現できないことです。

日本にはない考え方に触れることができる

これは、現地の大学が設けている留学生コースに通う場合です。

大学の留学生コースは、中国人を母国語としない外国人が、中国語を学習するカリキュラムです。ネイティブの中国人は教師陣のみ。(あと事務局の人たちも中国人)

生徒は世界各国から来た外国人です。私が通った大学は、ヨーロッパ、タイ、インドネシア・韓国から来た人が多かったです。もちろん、日本人も多数通っています。

年齢も様々で、交換留学で来ている10代の若者もいれば、仕事を始める前のトレーニングとして来ている20~30代、子育て中の40代、仕事はもうリタイアした60代の方もいらっしゃいました。

国が様々なら個人の経験も多種多様。そして当然のことながら、それぞれの考え方や抱える悩みも日本にはないものがたくさんありました。

世界各国の友人と毎日を共に過ごし、授業内外を問わず色々な話をしました。もう、ちょっとしたカルチャーショックなんて日常茶飯事で、最初は「そんな風に考えるのか!」「そんな見方があるのか!」のオンパレードでした。(次第に慣れてきます)

そして、「いかに私は、日本人の、日本人らしい、日本からしか物事を見ていない視点しか持っていなかったか」ということに気付かされたのです

具体的な例をいくつかお話しします。

ある日、働く時間について議論するという授業がありました。私は自分が会社員をしていた頃の話をしました。

私:
「朝9時に出勤して、定時は17時半だけど、帰るのは大体20時は過ぎていたなー。定時で帰るときももちろんあるよ!でも毎日じゃない。繁忙期のときは夜0時を過ぎるときもあったよ。年に数日だけどね」

友人A(ドイツ人・女性・20代):
「Kaoだけ?」

私:
「他の人も何人かいるよ。男性の方が残業する割合高いけど」

友人B(オランダ人・男性・40代)
「結婚している人はいないの?子どもいないの?」

私:
「いるよ。子どもは奥さんがみてるよ」

友人A:
「その人、家族と過ごす時間全然なくない?」

私:
「うん、日本人はそういう家庭多いかも」

そのとき、友人Bが私の目を真っ直ぐ見て、ゆっくりとこう質問しました。

わからないから教えてほしいんだけど、という前置きのあとに彼の口から出た言葉。

「その人たちは、一体何のために働いているの?」

彼は嫌味を言ったのではなく、本当にわからなかったのです。家族を犠牲にして毎日自分の時間もなく仕事をすることに、何の意味があるのか。結婚して家庭の中の一員である意味があるのか。

ここで私が言いたいのは、日本の働き方が「間違っている」うんぬんではなく、今まで私の「標準」だったことが、別の国では「全く理解できないこと」であったということ。

自分の中にある「普通の感覚」を全く普通としない人が全世界にはたくさん存在しているということ。

当時33歳。今まで日本の中で一度も疑問に思わなかったこと、思っても「そういうものだから」と考えることもしなかったこと、その存在の多さに次々と気付かされたのです。

その質問に答えることができなかった自分が後から恥ずかしくなり、帰宅後はずっとそのことばかりを考えていました。彼の言葉、今でもすごく印象残っています。

直接的な議論をしていないことも然り。

同じクラスに30代のスウェーデン人(女性)がいました。彼女は6カ月の女の子のママ。母親似で目がくりくりしていてとってもかわいい赤ちゃんは、学校の人気者でした。そうです――彼女は毎日、生後6カ月の娘さんと一緒に通学していたのです。

授業中は教室には入れないので、同じ棟にあるカフェでベビーシッターが面倒を見ています。休み時間になると彼女がそこに行くか、シッターさんが教室に来てミルクタイムです。

最初見たときは正直びっくりしました!あんなに小さな子ども(というかまだ歩けない赤ちゃん)を連れて毎日通学する。何を心配するわけでもなく、自分が授業の間はシッターさんに「よろしくね」――日本では考えられないですよね。6カ月の子どもがいたら、毎日大学に通うことなんて無理。誰もがそう考えると思います。

でも、他の国であれば「何の不思議もない光景」という事実。そして、母乳をあげるタイミングになると男性陣はもう慣れっことばかりに自然に教室の外へ。もしかして、びっくりしているのは日本人の私だけ!?と思ったり。

その他にも、「中国では結婚しても女性は姓が変わらないという常識」や「転勤や単身赴任の日本特有文化が他の国では意味不明すぎる」など、今までの自分の常識がガラガラと崩れていく日々を過ごしました。

逆に、日本は恵まれすぎているなと感じたことも多々あります。自分がいかに「狭い世界のものしか見てこなかったか」ということを突きつけられました。

これらは全て、中国語という「共通語」があったから経験できたことです。中国語が架け橋になって、その先にある「日本にはない考え」に触れることができる――そこで得た発見は、人生において大きな収穫といえます。これができるのも、現地の特殊な環境の中で語学学習をしているらですよね。

本当に、世界は広いです。

その国を「内側から」覗くことができる

中国で中国語を学習して最もよかったと思うことが、「内側から」その国を覗くことができたということです。

結果、通常であれば外側からしか見ることがないであろう「日本以外の国」で起こっている出来事を、その国の人の視点で覗き見ることができます。

これは本当に貴重な経験でした。中国のことや中国人のことをより深く知ることができたと感じています。(この部分こそ、私が次の仕事を選ぶ大きな要素になった部分です)

語学レベルが上がってくると、現地で放送されているテレビを見たり、書籍を読んだりすることができます。当然ながら、インターネットで色々な情報を取りに行くこともできます。

現地に住みながら、現地の言葉で、現地の人が見るものと同じものを見る。

とある企業の特集番組を見て「中国ってこんなに進んでいるんだ」と驚いたり、何気ない雑誌を読んで「中国人ってこんな悩みがあるんだ」と、日本にはない問題に目を向けてみたり。

もちろん、あらゆること全てを知り尽くすには、時間が短すぎます。しかし、その国の「過去のこと」「現在のこと」、そして今向かっている「未来のこと」を非常に近い距離で(というよりどっぷりその中に浸かって)体感するというのは、なかなかできることではありません。

大人になってからは尚更です。

少し前までは「おかしい」と感じていた中国人の行動や考えも、色々な本が読めるようになると、「昔のこういった文化が今のこの考えに繋がっているんだ。だから皆ああいった行動をとるんだ」 と理解できる局面が増えていきます。

そして、その国の文化や歴史、日常生活で触れることに数多くの小さな発見が散りばめられ、現地で過ごす時間が「興味の宝箱」のようになります。

私が中国語に夢中になった理由。中国語自体が面白かったのはもちろんあると思いますが、結局のところ「中国語を通してその先に見える中国」に夢中になっていたのです。

気がつけば、自分でも驚くほどに夢中になれるものを手にしていました。中国で中国語を勉強して、心底よかったと感じている部分です。

このような経験をすることができたのは、中国だったからでしょうか?

私は、これはどの国でも言えることだと思います。それぞれの国には日本にはない伝統や文化が存在していて、それらを「内側から」覗くことは、私たちに何にも勝る大きな発見を持ってきてくれます。あなたも、その奥深さにきっと夢中になるはずです。

その「夢中」がまた「語学力向上」の原動力になり、向上した語学力がさらなる「興味と夢中」を生み出す。

このサイクルが語学習得にどれだけの効果を発揮するか。学習をどれだけ濃密な、そして楽しいものにしてくれるか。

今考えても、「外国語の学習」にこれ以上の好条件はないと思います。

これは、やはり環境に起因するところが大きいです。環境――その外国語を使う国のど真ん中で生活するということ。そしてその生活を味方につけるということ。

私が帯同中(外国での生活中)に語学学習をお勧めする一番の理由はこれです。

駐在妻だからこそ

駐在妻という立場を味方につけよう

駐在妻という立場は、自分の資産になる学習に思い切り時間を投入できるチャンスのかたまりのようなものです。

私がなぜそう考えるのかを説明させていただきますね。

そもそも駐在妻の一番大きなメリットは何でしょうか?

答えは「自由な時間」です。

「仕事を辞めてきているので、失ったものは大きい!」という意見もあると思います。それも事実ですよね。しかし、仕事を辞めたというのは日本でのこと。帯同の地に降り立ったあとは、一旦「過去のこと」として切り離して考えてみてください。

現時点(帯同中)の最大のメリットは、仕事に縛られていた時間が全て自分の時間になったことです。

こんなチャンス、もう一生ありません。

また、生々しい話ですが、生活費の面でもかなり恵まれた環境です。

私は上海に来る直前まで独身でした。10年間、会社員をしている間はずっと一人暮らし。仕事が嫌になったことも何度かありますが、「辞めたいけど、辞めると生活できないもんなー。食費、水道代、電気代、誰が払うのさ」という考えのもと、辞めるという選択肢はありませんでした。そもそも家賃が払えなくなるので、仕事をしない=給料が入らない=寝る部屋がなくなってしまいます。

ずっとそんな頭でいたので、駐在妻になって上海に行ったとき、自分でお金を1円も払っていないのに水道が使えて、電気が使えて、寝る部屋も確保できているという状態が何だかすごく不思議でした。

ほとんどの人がそうだと思うのですが、現地での生活費は夫が全て出してくれます。光熱費や食事代だけでなく、自分の携帯代すらも「払ってもらえる」状況にあります。

要は、仕事をしなくても、収入がなくても、何の不自由もなく生活できる環境だということです。

これ、めちゃくちゃすごいことです。奇跡です。本当に。

ですので、この奇跡の環境に甘んじて「やったー!ラッキー」とおしゃれランチばかりせずに、この時間が意味のあるものになるよう恵まれた環境を最大限に活用しましょう。

こんなときこそ、自分の資産になる学習に時間を投入するべきなのです。

不確定要素とうまく付き合おう

様々な種類の「学習」がある中で、語学の学習は最も駐在妻に向いている学習領域と言えます。

なぜそう言えるのでしょうか?

どの言語もそうですが、語学学習には終わりはありません。外国語学習の最高到達点は、「ネイティブと同じ」になること。何かの資格取得ではありません。

しかし、どれだけ頑張ってもネイティブと完全に同じレベルになることはありませんよね。なので、語学学習って終わりがありません。その分かっちりとした「型」もありません。

例えば検定ひとつとっても、語学に関連するものは段階的設計になっています。

英語ならTOEIC、中国語ならHSKというように、その言語ごとに語学検定が存在しますが、これらの検定は複数のレベルが設定されていますよね。つまり、「○○技能試験」のように合格/不合格の二択ではないので、小刻みにレベルを上げていくことができます。

何かの資格のように「合計○○時間の実習が必要」というものでもありませんよね。

これ、違う角度から見ると、自分が納得いくレベルでいつでも区切りをつけられるということなのです。

目標を小刻みに設定できますし、期間や学習濃度に関しても自分で決められる要素が大きいです。「あと○○時間実習に通わないといけないのに、本帰国になった!」なんてことになるなんて、考えただけで相当なストレスですよね。

つまり、語学学習はいつ日本に戻るかわからない駐在妻にとって、自分の意思で柔軟にアレンジできるとっても都合のよい学習なのです。 そういった意味で語学学習は不確定要素が多い駐在妻に向いているといえます。

また、外国語習得の道には終わりがないので、ある意味「一生のお供」にすることができます。何かの資格学習で「合格する」がゴールだとすると、合格した瞬間に上に続く階段は終わってしまいますよね。

しかし、語学は永遠に続く階段のようなものなので、「かけないといけない時間」「到達しないといけない明確なライン」が何かの資格学習のようにきっちり決まっているというわけではありません。自分で色々なことを体感しながら学習を進めていくことができます。

言語って結局は道具であり、その先に見えるものが人によって異なるので、広がる世界も多種多様です。

そこがまた面白いのです。

もちろん、途中で仕事のフェーズに移ることができるのも、語学学習のメリットです。(その場合はビザ含めて夫の会社に確認が必要になってきます)

現地での生活が長くなり、学習から仕事のフェーズに移りたいという場合でも、翻訳やライティング、動画コンテンツの作成など、外国に居住していても日本企業からの仕事を受けることは十分可能です。

一生懸命頑張って何かの資格を取ったとしても、それが「帰国しないと使えない」「どこか専門の場所にいかないと活用できない」というものだとしたら、また「駐妻特有の不確定要素」に阻まれることになってしまいます。これは非常にもったいないことです。

日常生活そのものが学習素材

語学を学習している駐在妻は、日常生活を通して「鮮度ある学習素材」を「毎日」「無料で」提供してもらっているようなものです。

語学の面白さに目覚めた人の場合、検定や資格とは別次元の世界に目が向くようになります。(検定はある程度勉強して専用の対策をすれば、大体の結果は見えてきます)

別次元とは、その国の言葉を通じて見える世界が変わってくること。そしてその世界がぐんぐん広がっていくこと。

そして、駐在妻の場合、その世界が日常生活そのものだということ。

だから、いつまでたっても飽きない。

上海で通っていた大学の先生が私たち生徒に言ったこと。「あなたたちの一番の強みは、日常生活そのものが学習素材だということ。学習が、日常生活に溶け込んでいること

その先生曰く、どんなに優秀な生徒でも教室の中でずっと同じテキストで勉強していたら伸びない――。

私は、本当にそうだなと感じました。

一歩外を歩けば目に飛び込んでくる中国語の看板。「今日家にいますか?」という宅配便業者からの電話。どっぷりはまった中国ドラマ。大好きだったカフェの定員さんとのおしゃべり。日本の4分の1の値段で観られる映画。

楽しみにしていたもの、時には意識もしていないようなもの全てが学習素材なのです。

鮮度ある素材が毎日、そして全て無料で私の生活に飛び込んでくる。学習と日常生活の境目が徐々になくなってくると、語学が本当に楽しくなりますよ。

こんな経験が仕事に追われることなくできるのは、世界中で駐在妻だけだと思っています。

成果について

私の具体例

よく聞かれることとして、HSK6級に合格するまでの必要時間があげられます。私の場合は1年3カ月でした。

ステップごとにかかった具体的な時間をシェアします。ひとつの目安として、学習計画の参考にしていただければと思います。

最初はかなりつめつめでやっていました。日々新しいことを学習するのはとても楽しかったですが、同じことをもう一度やれと言われると……かなりキツイです(笑)

単語もひたすら覚えました。とにかく手を動かして、帰宅後はその日にやること(学校の宿題+予習復習+自分で決めたこと)を消化するのにいっぱいいっぱいでした。ただ、ここで素晴らしい教師陣に恵まれたのは、本当に運が良かったといえます。

後半にいくにつれて、アウトプットの量が増えていきます。大学の上級クラスの授業はほとんどがアウトプット授業(PPT資料を作って前で発表するなど)でした。この時期は大学とは無関係の外部のスピーチコンテストなどにもよく応募していました。

学校に通う際のレベルアップのコツとしては、少し無理して「一段階上」のクラスに入ること。

大学は毎期レベル分けテストが実施され、自分のレベルに応じたクラスに振り分けられます。私はこのクラス分けテストの前に集中して学習して、本来よりも「一段回上」のクラスに入る目論見を立てて臨んでいました。(毎回なんとか成功しました)

最初はついて行くのに必死ですが、時間が立つにつれてそのクラスのスピードにも自ずと慣れていき、1学期が終わったあとの着地点がかなり変わってきます。

ちなみに、1日の学習情況はこんな感じでした。

8:30~12:00 大学
12:00~13:30 移動・昼ご飯・ちょっと家事
13:30~18:00 宿題・予習・復習・その他まとめや資料作成
       (たまにサボって中国ドラマ)
18:00     一日の学習は終了。ご飯作りなど開始

HSKの取得について、少しお話させていただきます。

ゼロから1年3カ月でHSK6級に合格できたと話すと、「早いね!」と驚かれたことがあります。しかし、私はそうは思いませんでした。なぜかというと……

考えてみてください。

例えば、仕事をしながら中国語学習をしている人がいるとします。1日3時間、中国語学習に充てるとしましょう。ゼロから初めて4~5年継続したのちにHSK6級に合格したと聞くと、ほとんどの人が妥当ラインだと思うはずです。

一方で私は自由に使える時間が3倍以上。1日にかける時間が3倍であれば、その期間も3分の1になるのは何もおかしくないことなのです。

短期間で集中した方が結果が出るのが早まりますし、かつ上に書いたような超絶恵まれた環境での学習。ちゃんとやれば誰でも(最低でも私ができたラインまでは)到達できます。

HSKはリスニング、選択問題、作文で構成されています。その中でリスニングの点数は他の部分よりもいつも少し高かったです。中国語は日本人が馴染みのある「漢字」で構成されているので、現地の先生曰く、「読み書きは日本人、皆得意」とのこと。

それでもリスニングが得意になった理由は、やはり環境面が大きいと感じています。HSKのスピーキング版であるHSKK(口頭試験・試験は全て会場で録音)の高級に一度で合格できたのも、やはり現地で普段から中国語を使っていたからだといえます。

現地での生活は、最長で5年は覚悟していたものの、蓋を開けてみると夫の駐在期間は3年でした。(あと1年ぐらい長い心づもりでしたが……)

私は少し遅れて移住したので、上海在住期間は2年6カ月でした。 この期間の中で、なんとか「中国語を使った仕事につなげる」というレベルまで語学力をアップできた裏には、実は過去の大きな失敗があったのです。

しかも15年もの間、私はその失敗にさえも気付いていなかったのです―― 。

中国語学習に火をつけた過去の失敗

上海に行く直前、私は2週間だけ日本の中国語教室に通いました。さすがに挨拶程度はできるようになって行った方がいいと思ったので。

「ゼロからスタートコース」に申し込んだのですが、申し込んだ時点で私の心は余裕でした。なぜだと思いますか?

大学1年生のときに第二外国語で中国語を選択していたので、「やっているうちにきっと思い出すだろう」という考えがあったからです。(ちなみに、大学2年生以降33歳まで中国語に触れたことは1回もありません……)

結果、この2週間を通して私は自分の愚かさに気がつくことになります。

どれだけテキストを見ても、中国語を聞いても、思い出したことは何ひとつなかったのです――1ミリもなし。単語ひとつすらもありませんでした。

愕然としました。そこでやっと気が付いたのです。思い出す以前に、あの段階(大学生のとき)で自分の中に定着すらしていなかったのだと。15年後にやっと、そのことを知ったのです。

実は第二外国語に関しては「中国語を選択していた」「先生は髪の長い女性だった」以外の記憶はありません。授業も真面目に受けていませんでした。(かなり甘い先生で、出席すれば単位がもらえた記憶があります)

授業中もたぶん他のことをしていたのでしょう。「私」という意味の「我wo」という単語すらも覚えていなかったのです。いや、正しくは「思い出せない」のではなく「知らない」のでしょう。自分の中に定着した瞬間もないのですから。

「ゼロからのスタートだな」――上海に行く前に腹をくくりました。そしてもうひとつ心に刻んだこと。これから現地で中国語を学習することになるけれど、どんなによい環境を与えられても、「自分に必要なもの」として意思を持って必死に取り組まなければ1ミリも定着しないという事実。

「半分ぐらいは記憶に」「2割ぐらいはなんとなく」「簡単なやつはちょっとぐらい」――ないです。ゼロです。しかも、今になってわかりますが、語学は「維持」に対する労力も必要。ゆるっとふわっとやっても、自分の中には何も残りません。残らない前に自分のモノになる瞬間さえありません。

現地でも、中途半端に「やっているふり」をするんだったら、いっそのこと毎日映画を観て、お菓子を食べて、お昼寝してめいっぱいゆっくりしてる方がましです。

日本の中国語教室ではピンインから(かなり難しくて全然前に進まなかった……)、上海でも初級からひとつずつ、学習を進めていきました。

大学のときに真面目にやっておけば……。そんなの後の祭りです。アホすぎます。授業料を払ってくれていた親に申し訳ないと思いました。

これ、中国での学習も甘く見ていると何も定着せぬまま帰国するという恐ろしい事態になるなと、さすがに気が付きました。これが、私が帯同中に大真面目に学習に取り組んだ理由です。

日本の中国語教室からスタートしてその後学習を継続した期間は2年半。結局、上海で学習している期間も含めて「あ、これ大学生のときにやったな」と一瞬でも思ったことは……ひとつもありませんでした。

目に見える成果物を持って帰る重要性

駐妻期間を終えて帰国し、さあ再就職に向けて動きだすぞ!という時期が訪れます。書類審査や面接では、「その期間何をしてきたか?」が問われます。

そのときに語れるものを持っていないと、駐妻期間が「丸っとブランク」に早変わりです。しかも、語れるものはより具体的で(企業にとって)メリットがあるものでなければなりません。

「何をしてきましたか?」

「たくさんの外国人と触れ合って、様々な考え方を身につけました」

……。

アウトです。

質問の意図は、「その期間、具体的にどんな動きをして、その成果物は何ですか?」です。

その成果物が「面接を受けている会社で使える成果物」でないと無意味なのは、当然ですよね。

その観点で考えても、「語学」の領域は具体的な成果物として履歴書に明記しやすいです。指標として誰もがほぼ同じ認識を持ち、一定の能力として認知もされています。

資格や検定が全てではありません。しかし、突破口を開くという目的には十分な効果を発揮します。どの企業も最初はやはり書類審査ですから。

書類にはっきり明記できるということは、その後のステップでも武器としてしっかり語れる成果物ということです。

そして、その成果物が日本で追うよりも数十倍「得やすい」という理由は、上に書いた通りです。

帯同と同時に退職したものの、帰国後にもう一度仕事をしたいと考えている人、多いと思います。時間は限られています。現地で同じ時間をかけるのであれば、「明記しやすい×得やすい」成果物を集中的に狙っていくことをお勧めします。

私の経験上、駐在妻が帯同期間に得ることができる成果物の中で最も「明記しやすい×得やすい」成果物、それを手にすることができるのが、現地での語学学習なのです。

まとめ:もつべきマインドととるべき行動

~もつべきマインド~

  • 駐在妻は語学学習に関して世界一恵まれている環境にある

  • その国を知ることで、語学学習がより面白いものに変わる

  • いくら恵まれている環境でも汗をかかないと成果はゼロ

~とるべき行動~

  • 習ったことはとにかく試す。無料で試し放題。

  • ドラマや読み物、映画など身近にあるものに手を出していく

  • 日常生活を楽しむ

  • 検定合格ではなく「再就職での活用」を目的にする

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回は、日本が少し恋しくなったときに「この国も悪くないな」と思える方法をお届けします。

<次回>駐在妻が帰国後の仕事に困らないためにすべき17の行動
【10】この国でしか味わえない気分転換スポットを見つける

全シリーズタイトル

駐在妻が帰国後の仕事に困らないためにすべき17の行動

【プロローグ】駐在妻に立ちはだかる2つの大きな壁
【筆者について】私が退職を決意した理由

<退職前~出国まで>
【1】夫に「海外勤務になる」と言われたらまずやること
【2】退職直後に帯同 失業保険は「捨て」になるの?
【3】退職後に支払う住民税を計算しておく

<帯同開始~本帰国確定まで>
【4】定期的に行く場所を「ひとつ」つくる
【5】Excel、PowerPointを無駄に使う
【6】ブログを始める
【7】同じ感覚を持つ友達は1人だけで十分
【8】できる駐在妻の賢いお付き合い方法
【9】現地での語学学習を本気でお勧めするこれだけの理由
【10】この国でしか味わえない気分転換スポットを見つける
【11】できるだけ「国内旅行」をする理由
【12】自分が進化していることを実感できるようにする
【13】本帰国が決まったときの不安の構造を理解する
【14】未来図を描く

<本帰国後>
【15】知らないと損!失業保険の給付制限は短縮できる
【16】再会ラッシュに待った!集団ではなく「個」で時間をつくるべき理由
【17】プライドを捨て切る

【エピローグ】駐在妻を卒業した先にあったもの

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