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靴を買う
雪が降り冬靴を出した。
が、どうにも水がしみてくる。
よく見ると表面の生地にヒビが入っているようだ。
出かけるたびに足が濡れるのは嫌だから買わなくてはいけない。
最近自分の身に着けるものがどんどんダメになっていく。
バッグは破れる。
傘は細い骨が折れた。
靴は水がしみる。
一回買うと壊れるまで使うから仕方がない。ちょうど一度に買い換えるタイミングだったのか。
所用のついでに昔からある街の靴屋に行くことにした。数十年前、品揃えが豊富で価格がお手頃なのでいつもここで靴を買っていた。
奥行きのある店内。
整然と並べられた大量の靴。
いらっしゃい!と元気な店主の声。
見事に髪が真っ白くなっている。
「サイズ色々ありますからね。言ってくださいね」
入り口のすぐそばに防寒靴が並んでいる。
一番譲れない条件はピンスパイクがついていること。ピンスパイクの靴を履くともう他のものには戻れない。
それくらい氷の道でも滑らない。
ただ普通のスパイクよりお高い。
形は雪の入りにくいショートブーツがいいな。
色は茶系で。
靴の裏と値段を見ながら選んでいると店主に足のサイズを聞かれた。
そして程なく何やら一足持ってやってきた。
見ると黒でベルトが2本ついたショートブーツだ。
「こちらはね、もう廃盤でこれしかないんですよ」
履いてみてくださいと言うので履いてみた。
サイズはぴったり。履き心地もいい。
ただ私が履くには見た目が若向けかも。
黒かぁ、茶色がよかったなぁ。
「ピンスパイクのものは数が意外と少なくて高いんですよね。道内にしてもどこでも売れる訳じゃないですから。なかなかこの値段にはならないですよ」
流れるような店主の営業トークに茶色はないですか?の言葉を飲み込んだ。
「あ、じゃこれください」
「ありがとうございます!サイズが合ってよかったですね」
お会計のため店の奥へ向かう途中、同じデザインで同じ赤札がついた茶色が見えた。
「お?」と思ったがきっとサイズが合わないのだろう。
この間わずか10分足らず。
店主の効率のいい仕事っぷりにただただ感心してしまった。
帰ってきてから改めて見るとコロンとした形がなかなか可愛い。
黒も悪くない。
新しいお気に入りにさっそく防水スプレーをたっぷりかけた。
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