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人口2500人弱の村でコワーキング運営の研修をしてきた〜ローカルコワーキングこそ地方創生の鍵〜

※この記事は、2022年11月15日に公開したものを再録しております。

去る11月8〜9日、岩手県普代村でコワーキングの運営について研修させていただいた。題して「コワーキングスペース運営研修講座〜ローカルコワーキングこそ地方創生の鍵〜」。

ローカルコワーキングが地元の人たちのコミュニティとして機能し、かつ、外部からのリモートワーカーを受け入れ、ローカルとリモートの接続点となることで地域の活性化に大いに役立つことをお伝えし、ではここではどういうコワーキングを運営するのかを考えていただく、というのがこの講座の趣旨。

その普代村は岩手県の沿岸部のここ。2020年の国勢調査によると人口2,487人。実は今回、初岩手だった。

会場となったのは、国民宿舎「くろさき荘」。

三陸復興国立公園の景勝地、黒崎の高台に建ち、もうすぐそこが海というロケーション。部屋数は36室(定員94名)で、どの部屋も海側のオーシャンビュー。展望大浴場からも太平洋が望める。まさに絶景です。

(出典:くろさき荘ウェブサイト)

ロビーの横にコワーキングスペースが開設されている。(他に2階会議室内と1階食堂内にもワークスペースがある)

ローカルコワーキングの本質と運営について研修

ちなみに今回は、この講座(↓)を元に普代村向けにカリキュラムを再編成し、

以下の3つのテーマを、各90分で実施した。

(1)「コワーキングの基礎知識と実現したいコワーキングの形」
ただの作業場ではない、人と人がつながることで地域の課題を解決し、個人の目的を達成するためのコミュニティとしてのコワーキングを学ぶ。

(2)「協働関係を育むコミュニティとしてのコワーキング」
コラボレーションによって新しい価値を生み、ビジネスを起こすことでローカル経済を駆動し活性化するコワーキングについて学ぶ。

(3)「これからのリモートワークとワーケーション」
コワーキングを外部からのリモートワーカーと地元のローカルワーカーとの接合点にし、継続的なリレーションシップを築くことで、サステナブルなまちづくりに活かすことを学ぶ。

参加いただいたのは、普代村のみならず近隣の住田町、野田村、田野畑村、また岩手県の職員の方々、加えて、普代村と洋野町の地域おこし協力隊の方々、それとこの講座を企画していただいた株式会社アースカラーの社員の皆さん。

講座はまずぼくが1時間講義し、その後、20分ほどテーマに沿ってグループ・ダイアログし、最後にどういう対話が行われたかをグループごとに発表して終了。2017年から続けているこれからのコワーキングを考えるイベント「Beyond the Coworking」の進め方だ。

ちなみに、ぼくの講座(研修)では、ぼくの講義はあくまで知識や知見の共有であり、いわばネタフリであって、その後、参加者がぼくの話を受けて何をどう考えたかを参加者同士で話し合うのがメインイベント。←ここでいろんなアイデアやヒントが交換され、次の行動につながる。

ただ講義を聞くだけではなくて、(参加される方も何かしら課題を抱えておられるはずなので)自らも次のステップに進んでほしいのでこうしている。ポイントはひとりで考え込まないこと。その意見の交換がコワーキングの5大価値のひとつ「SHARE(シェア)」になる。

アースカラー社の目指すところ

ところで、今回、研修開催の労を執っていただいたアースカラー社は、「わくわくする農山漁村を創る」をミッションに、そして「都市と農山漁村がバランスよく共生し、地球上の人類と自然界全体が繁栄する世界を実現する」をビジョンに掲げている。

同社はサイトのトップで、こう宣言している。

私たちアースカラーは、地球をサステナブルな世界に変えていくために、まず足元の小さなローカルをサステナブルにしていく活動を行います。
日本の農山漁村には自然と共生しながらサステナブルに生きる技術・智慧がたくさん埋まっています。これらを活用して地球をサステナブルに変えていくための貢献をしていきます。

たぶん、日本の各地で地域振興に携わっている人たちの共通認識もしくは共通理念としてこの言葉は通用するのではないだろうか。

そのカバーする領域は実に広範囲に渡っており、上記サイトに詳しいが、一言で表すとこの画像に集約されている。

こんなにたくさんのテーマを取り扱っているのかと思うが、裏返せば、それだけたくさんの課題が地域(ローカル)にはあるということだ。それを、地元自治体ともガッツリタッグを組んで、ひとつずつ丁寧にカツドウされている。

そのアースカラーの関連組織であるNPO法人に「地球のしごと大學」がある。

対象はずばり

  • 将来、農山漁村に何かしらの形で関わっていきたい

  • 今農山漁村で活動しているが学び続ける場所と仲間が欲しい

  • 先ずは農山漁村のことを知りたい

という人。ピピピと来た人、きっといるはず。

ここでは『これからの「生きる」と「しごと」を創る』ことを目的に、実にさまざまな講座を開講していて、そのテーマの充実ぶりたるやものスゴイ。

「地球のしごと教養学部22-23年度」は、2年間で約40回の講座受講を軸にしたオリジナルのカリキュラムを提供している。いわく、

思想哲学、水資源、まちづくり、システム、医療福祉、山林、水産、交通インフラ、教育、民藝工芸、飲食商店、農、狩猟、住まい、衣服、エネルギー、祭り、芸能、教育、観光、働き方など、地球の未来を創る農山漁村のしごとについて網羅的に、とことん学ぶことができます。

この市民学校は、「頭だけで考えるのではなく、身体感覚に基づいた学びを獲得することを重要視する」として、フィールドワーク講座を充実させているのが特徴。←この身体感覚というのは大事。ややもすると話を聞いただけでわかった気がするけれども、体を動かして初めて学びは身につくものだ。

この大學はアースカラー社の代表である高浜さんのこんな想いから始まっている。

都会で疲弊し、意欲を失っているビジネスパーソンを、新しいカタチで農山漁村の継承者に転身させることで、都市人材の余っているパワーを再生・有効活用すれば、都市も農山漁村も HAPPY な人材の配置転換が行えるのではないか。
都会が失ってしまった【やりがい・働きがい】に当たるものを、日本のかけがえのない知恵・技術・精神を守り活用するという仕事が代替し、【やりがい・働きがい】が復活するのではないか。

これは、高浜さんのブログからの引用だ。3篇に渡って熱く語っておられて、その理念とするところがよーく分かるのでぜひ読まれたい。

ぼくはこの高浜さんの思想には共感するところ大だ。

コワーキングと地域おこし協力隊と公民館

ところで、今回、特に感じ入ったのは、地域振興を目的とする企業や団体にはさまざまなスタイルやパターンがあるということ。アースカラー社には独自の考えと行動様式がある。それと同様に、全国各地でカツドウする同業者にもそれがある。

先日書いた、長野県佐久市のワークテラス佐久を拠点に繰り広げられている地域複業も、立ち位置や参加者との関係は違えども、共にカツドウすることで地域を活性化していこうというところは地域振興の方法論として一致している。

ただその中で、最近、富に共通して聞く言葉が「地域おこし協力隊」だ。

今回の講座でもおふたり、地域おこし協力隊の方が参加された。おひとりは自然観光振興事業推進員をされており、北三陸ベースとして主にサイクルスポーツで観光振興に携わっておられる。

もうおひとりはJAICAでの活動履歴があり、現在、普代村で養蜂をされている。ちなみにこれはミツバチを語るポッドキャスト。勉強になります。

こうしたユニークな経歴を持つ協力隊員がいることで、地元を活性化するための多彩な企画が生まれることは想像に難くない。つまり、「人」だ。

実は地域おこし協力隊として活動する過程で、協力隊員がコワーキングを開設する事例は、ここ数年、いくつもある。

以前も書いたが、愛媛県西条市のコワーキング、サカエマチHOLICはまさにその好例だ。

ここにおじゃましたときのことはここに書いている。

サカエマチHOLICを運営する安形さんも、過去にさまざまな仕事について経験を積み、地域おこし協力隊となって西条市にやって来た。その後、サカエマチHOLICをオープン。任期が終了した今も運営を続けて地域振興に貢献している。この5月には地域課題を地域の住民の寄付を元手に解決する「えひめ西条つながり基金」を設立している。これは四国初のコミュニティ財団だ。

その安形さんに、ぼくは地域おこし協力隊のことをいろいろ教えていただいた。

地域おこし協力隊は文字通り、さまざまなカツドウを通じてその地域を活性化する(起こす、興す)ために自ら望んでその地に入る。その地域の人たちと協働、もしくは共創するための拠点としてコワーキングスペースという物理的な場所があることは、カツドウしていくうちに自然と湧き起こるニーズだろう。

いわば、現代版公民館だ。

今ではお年寄りの憩いの場であったり、習い事の会場であったりするが(それも大事だが)、そもそも公民館とは住民が集まって地域の課題解決のために話し合い、役割を決めて行動を起こすための施設だったらしい。まさしくコワーキングがそれを代替するわけだ。

コワーキングと地域おこし協力隊と公民館。この3つのワードが絶妙に絡んだ時、人と人がつながってコトを起こし、小さなコラボがたくさんできて、サステナブルなまちづくりが進行する。そのテーマは「コワーキング曼荼羅」の中に必ずある。それを見つける。

今回の研修の「ローカルコワーキングこそ地方創生の鍵」という副題はやや大げさに聞こえるかもしれない。けれども、各地のコワーキングを訪ねて、たくさんの人たちと縁をつないでいくに従って、地方創生=活性化の文脈におけるコワーキングの役割は大きいという想いはどんどん膨らんでくる。

それもしかし、小さなコラボからはじまる。誰かが発した「これって、こうできないかな?」という言葉に誰かが反応してコラボが動き出す。そのつながりを創るのが、ローカルコワーキングの最重要な役目。

今回の研修が少しでもコワーキング運営のお役に立ち、誰かと誰か(それは地域内の人でも、地域内と地域外の人でも)のコラボが立ち上がり、皆がハッピーになるまちづくりが実現できることを期待している。

お招きいただきました普代村および近隣市町村の自治体の皆さん、企画いただいたアースカラー社の皆さん、ご参加いただいた皆さん、誠に有難うございました。

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