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本当のシェアリングエコノミーは、これからだ。(Reprise)

Platform Cooperativism (プラットフォーム協同組合主義)のためのノート#1(再掲)

シェアリングエコノミーが健全に機能するには協同組合(Cooperative、Coop)、もしくは協同組合的な組織が相応しいのではないかと、かねがね思っている。

そんな折、ネットを活用したプラットフォーム協同組合主義(Platform Cooperativism)の提唱者であるTrebor Scholz氏が来日すると知った。まさにブレイキング・ニュースだ。

告知はこちら。早速チケットを取った。取らないという選択肢はないだろう。

で、またもや思い出した。そういえば、以前、そのことをMediumに書いてたんだっけ。…と漁ってみたら、3年近く前に書いていた。「これからだ」とタイトルつけて、もう3年も経ったのか。あんまり変わってない気もするがそれはなぜだろう。

と思いつつ、例によって一部修正、編集して転載する。

ということで、今日の記事は、2016年11月23日のブログジェリーで書いたものを一部編集して転載しています。相も変わらず長いです。
では、ここから

***

プラットフォーム協同組合主義ってなんだ?

「シェアリングエコノミー」という言葉もそろそろ耳馴染んできた。「共有型経済」と言われるが、本当は「共用型」だ。あるものを個々に所有するのではなくて利用者が共用することで、そこにビジネスが起こり経済が回る。

ちなみに、ぼくらがやっているコワーキングも「共有型ワークスペース」とよく言われるが、そうではない。正しくは「共用型ワークスペース」だ。誰もスペースを所有してなんかいない。むしろ、所有を否定するからコワーキングになるのだ。

「シェアリングエコノミー」ですぐに思い浮かぶのは、UberAirbnbだろう。自分のクルマでタクシー業をしたり、空いてる部屋を旅行者に貸したり、つまり「共用」することで彼らもビジネスに参加できる。

UberもAirbnbも、瞬く間に世界中に広がり、国によっては既得権者と法律とに阻まれつつも、ユーザーの圧倒的支持を強みに、ややなし崩し的にその存在を確固たるものにしつつある。今や、Uberの時価総額は約625億ドル(注:2019年5月のIPO時点で700億ドル)、Airbnbは約300億ドル(注:2019年5月時点で350億ドル)に上るらしい。

そもそも従来のサービスに不満を持つユーザーが世界中にいたこと、そして、インターネットを駆使し簡単なツール(アプリ)を提供することで参加者(ドライバーや家主、それとユーザー)を急速に集めたこと、それが成功の要因だろう。

つまり、サービスの提供者と利用者をマッチさせることで、みんなで「シェアリングエコノミー」に参加しよう、というわけだ。

だが一方で、これは本当に「シェアリングエコノミー」なのか、海外では疑問の声も上がっている。なぜか?

例えばUberでは、ドライバーが必ずしもこのビジネスから正当な恩恵を受けていない、利益の大半がオーガナイザーである企業と株主、ベンチャーキャピタルに持っていかれる、結局、中央集権的なシステムの中で搾取されている立場ではないか、それは、本来の意味での「シェアリングエコノミー」ではないだろう、という懸念だ。

これを、Platform Capitalism 、プラットフォーム資本主義という。プラットフォームとは言い換えればインターネット上で経済活動をするステージのことだ。ネットを駆使して資本家が儲ける。一部では、”crowd fleecing”とも言うらしい。”fleecing” には、金を巻き上げる、という意味がある。資本主義社会だから当然のことだろう、と思うかもしれないがそれは早計だ。インターネットとは、本来、もっと民主的なことに使われるものだからだ。

Platform Capitalism に対するオルタナティブとして現れたのが Platform Cooperativism だ。適当な訳が思いつかないので、便宜上、「プラットフォーム協同組合主義」としておく。そのうち、適当な言葉が生まれると思う。

つい先週、ニューヨークで開催されたカンファレンス、“Platform Cooperativism: Building The Cooperative Internet” のページに説明があるので引用する(注:現在このページは削除されている)。

Almost unnoticed, in the gaps and hollows of the digital economy, a new economy is emerging that follows a different ethical and financial logic.Platform cooperativism, as it has come to be called, is an emerging movement for democratic governance and collective ownership on the Internet and a fairer future of work. It is a concrete, near-future alternative to the on-demand economy; it reclaims humane principles like mutuality, sympathy, and solidarity by bringing together the rich heritage of cooperativism with 21st-century technologies.
(雑訳)
ほとんど気付かれていないが、デジタルエコノミーにギャップと空洞が存在する中、また別の倫理観と金融理論に沿った新しい経済が現れつつある。
Platform cooperativism (そう呼ばれるようになった)は、民主的ガバナンスと集団的オーナーシップをインターネット上で実現し、未来のワークスタイルをより公正なものにするためのムーブメントだ。
これは近い将来には実現するだろうオンデマンド経済に対する具体的な代替案であり、 Cooperativism(※協同組合的思想)の長い歴史と21世紀のテクノロジーが合わさることで、相互主義、共感、あるいは連帯といった人道的な原理を取り戻す。

※適当な日本語が思い浮かばないが、後述する日本の「事業協同組合」に近い。

難しいので、もうひとつ、A Shareable Explainer: What is a Platform Co-op? — Shareableから引く。ここでは、Platform cooperativism とPlatform co-op を区別しているが、ほぼ同じ目的で使われるので補完の意味で引用する。

A platform co-op is a digital platform — a website or mobile app that is designed to provide a service or sell a product — that is collectively owned and governed by the people who depend on and participate in it. That includes those who deliver the underlying service by contributing labor, time, skills, and/or assets. Where corporate “sharing” platforms extract value and distribute it to shareholding owners who seek a return on their investment, platform co-ops distribute ownership and management of the enterprise to its participants — those working for the platform or those using the service.
Platform co-ops bring the longstanding tradition of cooperative enterprise to the online economy. The two key traits that these digital co-ops must realize are democratic control and collective ownership. Some advocates insist that in order to be counted as a platform co-op, an enterprise must uphold the International Co-operative Alliance’s cooperative principles.
(雑訳)
Platform co-opとはデジタルプラットフォームのことで、サービスや商品を提供するウェブサイトやスマホアプリのことを指し、そこに参加する人たちによって集団的に所有され運営されている。そしてそこには、その基盤をなす労働、時間、スキル、そして(あるいは)資産を提供する人たちも含まれている。
企業がプラットフォームを「シェア」する場合、そこで生み出された価値は投資に対するリターンを期待する株主に分配されるが、Platform co-op では事業のオーナーシップとマネジメントをその参加者に委ねる。つまり、そのプラットフォームで働く者、そしてそのサービスを利用する者のものになる。
Platform co-opは、協同組合事業の長い歴史で培われた伝統をオンライン・エコノミーに持ち込んだ。この digital co-op (※デジタル協同組合)を理解する際に重要な2つの要件は、民主的な運営と集団的所有だ。
これを支持する一部の主導者は、Platform co-opとして認められるためには、International Co-operative Alliance(※国際協同組合同盟)の規定する「協同組合の原則」に則る必要があると主張している。

要するに、Platform co-opでは、サービス提供者とそれを利用するユーザーがともにその事業を所有し運営し価値を分け合う、そういうことだ。協同組合的事業というのはそういうことであり、まさに、「シェアリングエコノミー」と言っていい。

プラットフォーム協同組合主義の海外事例

この Platform co-op が海外でどんどん生まれている。例えば、ブリティッシュコロンビアの写真家のためのCo-op、Stocksy 。

Stocksy

メンバーである写真家はここで販売された写真の売上から50%を受け取り、なおかつ、決算時に余剰があった場合、その配当を受ける。

元々、iStock と Getty Images のオーナーだった創業者が両社を売却してはじめたCo-opで、2014年までに370万ドルの収益を上げ、余剰金の中から数百万ドルをメンバーに配当している。

ドイツのFairmondo は、ここに参加する販売者、購入者、ここで働く者、出資する者全員でマーケットプレイスを運営し、小さなフェアトレード企業の商品も販売している。

Fairmondo

もっと判りやすい例が、Uberと同じタクシー業だ。

デンバーのGreen Taxi Cooperative では、700人以上のドライバーが参加し集団的に経営している。(注:以下のリンク先は初出時と変わっている)

Green Taxi Cooperative

タクシー関係はこの他にもたくさんある。同じデンバーのUnion Taxiもそうだし、ポートランドのPDX Yellow Cabもそうだ。Uberがそのきっかけになったのだろうが、元々、こういうビジネスはクローンを生みやすい。独自の技術があるわけではないからだ。

その他、Platform Cooperativismには世界中のありとあらゆるPlatform Co-op が紹介されている。

これを一時のブームと呼ぶのは考えが浅いだろう。むしろ、変化が始まっていると見るべきだ。昨今、喧しい「ブロックチェーン」とも絡んで、今後の社会の成り立ちをゴロンと変えてしまうムーブメントだと、ぼくは思っている。すべてを中央がコントロールするのではない、集団で民主的かつ自律的に動かす新しい仕組みがそこかしこで生まれる可能性が高い。それを後押しするのがインターネットだ。

ネットの普及は民主的、かつ自主的な組織運営を促進することにも加担し、ひいてはそういう社会の構築にも役に立つ。もちろん、ノイズも多いし、ガセネタも尽きない。人間が作ったものには完全なものはない。先日も、Facebookの偽ニュースについてざわついていたが、そこは民意の浄化作用が、さしてスピードはないものの、徐々に働いて、補正されつつ共有されていくものと希望的に考えている。これは終わることのないカルマだ。

コワーキング協同組合とプラットフォーム協同組合主義

実はぼくらも協同組合を運営している。コワーキング協同組合がそれで、ただしくは「事業協同組合」であり、主に、IT、ウェブ系の仕事をする、フリーランサーまたは小規模事業者、それと彼らをサポートする立場のコワーキングスペースの運営者で組成されている。設立は、2012年だ。

日本には、中小企業等協同組合法という法律があり、コワーキング協同組合はこの法律に則り、国の認可を受けて設立されたれっきとした認可法人だ。この法律は小規模な事業者が一致団結することで、その事業を発展させることを目的にするものであり、その精神はコワーキングの目指すものとまったく一致している。

運営の仕組みとしては、ここで紹介したCo-op と(当然だが)ほぼ同じくしている。メンバー(組合員)は全員が出資者であり、ステークホルダーであり、議決権を等しく一票ずつ行使でき、かつ、事業を行う(仕事をする)。組合を利用してのメンバー間でのコラボ(取引)はもちろんのこと、組合が窓口となって案件を獲得し、組合員でチームを組んで担当をアサインすることも行っている。ただし、そのビジネスに参加するかしないかは組合員の自由意志に任せられる。もし、決算後に余剰があれば、出資額に応じて全員に配当される(まだ、その実績はないが、一応、できる)。(注:現時点でも、ない)

Platform Cooperativism は、コワーキングというキーワードではじまったぼくらの活動をぐんと前進させるかもしれない。まだ、よく判らないこともあるが、その予感がする。

実を言うと、中小企業等協同組合法の制定が昭和24年6月1日といささか古い。今の時代にそぐわない面も多々ある。まして、我々はウェブを舞台に仕事をする者たちで構成されている。時間や場所にとらわれない働き方を選択した人たちであり、そのスタイルは大変フレキシブルだ。

細かい話は別の機会に譲るが、Platform Cooperativism もしくは Platform Co-op の発想をうまく取り入れて、もっとわかりやすく、かつスピード感のある活動をしたいと思う。そして、参加メンバーの総意をもってビジネスを動かし、収益を分配する組織として成長したい。

そもそも、コワーキングは「協働」であり、それを支えるのがコミュニティであり、「雇用」ではなく「コラボ」であり、そこに通底するのは「シェア」の理念だ。Platform Cooperativism は、インターネットのちからを借りてそれをより具現化する。

本当のシェアリングエコノミーは、これからだ。

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このテーマは継続して書いていく。以下、参考サイト(記事)をいくつかあげておく。時間があれば、また雑訳して紹介するかもしれない。

A Shareable Explainer: What is a Platform Co-op? — Shareable
Platform Cooperativism: Taking back the internet — Co-operative News
The Benefits and Impacts of Cooperatives | Grassroots Economic Organizing
11 Platform Cooperatives Creating a Real Sharing Economy — Shareable

なお、主唱者であるTrebor Scholz氏のブログは下記。ここから、Platform Cooperativism 議論に火がついた。

Platform Cooperativism vs. the Sharing Economy

そのTrebor Scholz氏の今年(2016年)5月の論文(PDF)。読み応え十分

PLATFORM COOPERATIVISM

ついでに、Trebor Scholz氏の新著が12月に出る。(注:刊行済み)

そして、もうひとりの重要人物、Nathan Schneider氏の記事。

Owning Is the New Sharing — Shareable

このふたりの共同編集による書籍も、いま取り寄せ中。(注:入手済み)

***

ということで、最後までお読みいただき有難うございました。「このテーマは継続して書いていく」と書いていますが、Scholz氏の来日もあることだしネタはあるのでちゃんと書いていこうと思います。

この記事は「ブログジェリーマガジン」にも収録しています。よろしければ、そちらもご覧ください。で、フォローなんぞしていただければ大変ウレシイです。よろしくです。

ではまた。

Photo by Kimson Doan on Unsplash


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コワーキング+コワーケーション+コリビング・プロデューサー。メディア企画、執筆、翻訳、編集。経産省認可法人「コワーキング協同組合」代表理事。「カフーツ〜コワーキング@神戸〜」主宰。目下のテーマは、グローバルなビジネス・リレーションシップを構築するコワーケーションの啓発と普及。
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