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コワーキングカンファレンスJapan2024、その2日目:今日のアウトテイク#197(2024-06-02)

<アウトテイク>
・SNSに投稿する前の推敲(もしくは配慮)なしのメモ、殴り書き
・ブログ記事として仕上げる前の思索の断片、または下書き
・一部、筆が乗ってきて文字数多いのもあり〼
・たまに過去に書いたネタを展開する場合も
・コワーキング関連のネタが多め
・要するに「伊藤の現在地点」

※今日はちょっと長いよ。


#今日のBGM

#今日のコトバ

"人を許せるほどには善良であれ。だが、再び信用するほど愚かになるべからず。"
(古い諺)

#コワーキングカンファレンスJapan2024 、その2日目

「コワーキングカンファレンスJapan2024」の2日目は、朝イチの「コワーキングスクール」から始まった。

ここでのぼくの役目は、コワーキングの基本的理念について話すこと。となると、「コワーキングの5大価値」と「コワーキング曼荼羅」しかない。

曼荼羅では、例によって上図のテーマごとに各地のコワーキング事例を紹介した。コワーキングをただの作業場だと思っている人には、コワーキングってこんなに多様な可能性があるのかと、発見だったと思う。

これを持ち時間20分で奇跡的に終了して(いつもは90分で話してるので、もちろん十分ではないが)、あとは最後の質疑応答。

ここで、こんな趣旨の質問が出た。質疑したのは不動産業界の方だった。

コワーキングにはコミュニティが必須、とよく聞くけれど、うちはガッツリ作業だけに集中できるコワーキングが作りたい。
なので、コミュニティとか面倒くさいものは要らない。
コミュニティを作れば儲かるんですか?

まあ、その業界の人にしたらまったく興味ないのだろう、これまで14年、コワーキングに関わってきているけれど、こういう考えの人は後を絶たない。

たぶん、そういう疑問を抱くのはコワーキングをただ席を貸して売上を上げるビジネスとしか見ていないからだろう。だから、いかに利用者をたくさん集めて効率よく回転させるか、それしか思い浮かばないのだと思う。

そう考えるのは勝手だ。しかし、あなたがやりたい「ガッツリ作業だけに集中できる」ワークスペースは、コワーキングではない。それはシェアオフィスだ。コミュニティが要らないのなら、シェアオフィスをやればいい。それだけの話。

ただ、この質問の真意は「コワーキングはどうしたら満足な収益があげられるのか?それに、コミュニティがどう絡むのか?」だと思った。

そこでぼくは、利用者を客ではなく仲間(協働者)と捉えて、ワーキンググループのメンバーとし、コワーキング自らが仕事案件の受け皿となって受託する、それをグループでこなして収益を上げ、その仕事に関わったコワーカーには相分の売上を分配する、要するにコワーキング自らがプレイヤーになりディレクションするということ、そうして、コワーカーとの関係をタイトにすること、受託窓口となることでコワーキングの収益モデルとなり、同時にコワーカーに仕事を斡旋する立場にもなりうる、それがまたコワーキングとコワーカーとの関係を密接にする、で、結局そういう「コワーカーにとって頼りになるコワーキング」がメンバーを増やし、ワーキングコミュニティとして機能するという話をした。

そのことは以前にも書いてる。

質問された方はチンプンカンプンだったかもしれない。不動産事業としてコワーキング、いや、この場合はシェアオフィス、をやろうとしているのに、なんで仕事を取って利用者に振り分けねばならんのか、と思ったことだろう。

でも、それがもしコワーキングなら、そうすることで収益源になる。真の問題解決になる。これ実は、多くのコワーキング運営者が気づいていない。専ら場所を貸すことだけに専念している。それでペイできればいい。でも、ローカルコワーキングの現実は厳しい。違う収益モデルを持つべきなのは誰が考えても判る。

そして、さっきの「コワーキング曼荼羅」に挙げられているテーマが、実はその違う収益モデルのヒントになっている。

というか、質疑応答に先立つ朝イチの「コワーキング曼荼羅」のところで、長野県上田市の「はたらクリエイト」(旧ハナラボ)さんの事例を引いて、まさにこの収益モデルについて講義してたのに、聞いてなかったのかな?やっぱり20分では十分伝わらない、ということか。

そんなことを調子に乗ってベラベラと長口舌をふるったのだが、ぼくの時間オーバーを心配する(はずの)司会進行の岡さんは、意外にも途中でぼくを止めなかった。きっと彼も、場所貸し業ではないコワーキングの真の価値を信じているからだと思う。

今回のカンファレンスでは、「不動産業としてのコワーキング」を見ている人と「コミュニティとしてのコワーキング」を見ている人が、入り混じっていた。混じるのはいい。しかし、そこにただひとつだけの正解を求めるのは危険だし、まったく意味がない。

コワーキングにはひとつとして同じものはない。それぞれがそれぞれの構成要素を持っている。ややもすると、成功の方程式を求めたくなるが、コワーキングは人と人をつないでコトを起こすコミュニティであり、そこに集まる人たちによって、あるいは日によって顔を変える「生き物」であるという認識に立てば、成功の秘訣なんてものは存在しない。

毎日、試行錯誤し、体験値を積み重ねていくだけのことだ。そして「そこにあるべきコワーキング像」を指し示すことで、それに共感する人たちが集まり手を貸すようになり、そのコワーキングをユニークなものにする方法論が構築されていく。利用料金の安さやフリードリンクの種類で差別化を図るなどというような、コモディティ化を避けるにはそれしかないし、コワーカーもそれを求めている。つまり、インディー・コワーキングだ。

#コワーキングとまちづくり〜この2つの文脈で交差するヒトとコト

さて、最後のお勤めは、13時からのパネルディスカッション。タイトルは「コワーキングとまちづくり〜この2つの文脈で交差するヒトとコト」。

ローカルコワーキングは、コワーカーを支援するためにあるが、そのカツドウを続けることで結果的に地域経済を活性化し、以って、まちのサステナビリティを実現している。

そこで、コワーキングという枠から、いい意味ではみ出してカツドウしている江原 政文さん(長野県佐久市:コワーキング iitoco!!)、後藤 峻 さん(広島県尾道市:きっかけオノミチ合同会社)、安形 真さん(愛媛県西条市:サカエマチHOLIC)、の御三方をパネラーにお迎えして、どんな活動をしているか、それがまちづくり、地域づくりにどう寄与しているか、を話してもらった。

4人で持ち時間はわずか50分。やっぱり50分は短かったけれど、御三方のエッセンス(のごく一部)は伝えられたかなと思う。

3人のプレゼン内容は、山本さんが簡潔明瞭にまとめておられるので、ぜひご一読を。

ここでは最初から、ハコ(施設、ハード)の話をするつもりは欠片もなかった。

そういう次元ではなくて、まさに江原さんが言った「農園をコワーキング化する」のように、まちを構成するさまざまな要素が折り重なって実行される、いわばまち全体がコワーキングの舞台である、という帰納的認識に立って、このテーマを設定した。

というかむしろ、ハコの外にこそコワーキングの方法論が展開されるべきであり、それは何度もくどいが、この5つの価値を提供することだ。(つまり、朝イチの講義はこのパネルディスカッションにつながっている)

これらを実行することが、引いてはまちづくり、地域づくりにつながる。そして、それまさに、インディー・コワーキングの実像であり、これからの地域社会に不可欠なインフラであると考えている。(余談だが、会場内でインディー・コワーキングという言葉が、軽くバズったのは嬉しかった)

実はこの3人が顔を合わせるのは今回が初めて。にも関わらず、話はごく自然に、しかし、コワーキングに対して同じ価値観、世界観を持つ者同士の波長が絶妙に共振するような対話が続いた。

参加者の中には「これはコワーキング運営の玄人にウケる内容だ」と言ってくれる方もいたし、すべてのセッションを視聴していた方からは「2日間の中で一番良いセッションだった」と言っていただけた。企画した者にとっては最大の褒め言葉だとありがたく受け止めている。

で、ぼくも14年、コワーキングをやってきて、今回感じたのは、コワーキングというものをクリティカルに構想する、そういう次のフェーズに入っているということ。

クリティカル・ビジネスについてはここで書いたし、

ついでに、この本がオススメ。

要するに、コロナ禍を挟んでコワーキングが続々と生まれてくる中、ただアメニティ(機能)のことばかりアピールするのではなくて、「あるべきコワーキングとはこういうコワーキング」という思想、哲学があるのかないのか、が問われる。言い換えれば、そのコワーキングの起点だ。そこに共感する人が利用するようになる。これ、明らか。

はっきり言うけれど、残念ながら、不動産系にはそれがない。だから、ハコのことばかりになる。でも、それはもう仕方がない。仕方がないが、それはぼくらが理想とするコワーキングではない。もひとつはっきり言うが(まだ言うか)、不動産系にコワーキングはスジが悪い。

一方で、ローカルコミュニティとしてのインディー・コワーキングは、これからますます存在感が増す。規模が小さくとも、コワーカー(利用者)の信頼感で成り立つ共同体として、地域に不可欠なインフラとなる。

今回のパネラーである江原さんは、今回のカンファレンスに参加して、こんな投稿をしている。

ここ数年の流れどおり不動産視点でビジネスとしてコワーキング「スペース」を見ている人が多かったような気もします。

そして、コロナを境に、ワークスペースありきでコワーキングスペースを探すユーザーが激増して、コワーキング業界の潮目がより変わったことを体感していたのですが、それはそれで社会のニーズだし、そのニーズに答えようと、さらにはワークスペースを求めてやってきたユーザーさえも巻き込んでコワーキングの価値を最大化しようとしている運営側の姿をみて、なんか吹っ切れました。

去年頃からもやもやしていたコワーキングスペースに対しての想いには良い意味で一区切りすることができたと思います。まったくもって批判ではないと前置きしておきますが、これは、もう僕の思っているコワーキングではないし、別のものだなと。
(抜粋)

コワーキングカンファレンスジャパン2024。 東京に全国のコワーキングが集り、コワーキングの最新情報や未来について対話する機会。無事、パネルディスカッションの役目を終えました。 このメンバーで話ができて、ホントに楽しかったです。 伊藤さん、...

Posted by 江原 政文 on Saturday, June 1, 2024

実は江原さんは、現在、「スペース」というものを持たない。が、「ハコ」を前提にしないからこそ、動ける領域が拡張する。「まち全体がコワーキング」というのは、ハコありきにしないからできる。

また、後藤さんはこう言う。

もう何がコワーキングスペースか、の議論は終えよう。私は私が見てみたいコワーキングをただ追いかけてみることにする。

そう、定義は要らない。各自が納得いく、やりたいコワーキングをやる、それでいいのだ。ぼくもそうしているし、このあと、カフーツをモデルケースにしてやることはぼくの理想のコワーキングであり、そこに共感してくれる各地のコワーキングに拡めたいとも思っている。

コワーキングとコワーキングスペースは違う。そもそも、思想が違う。どこに価値を置いているかで見ている世界が違うし方法論も違う。とすると、今後もカンファレンスをするのなら、この2つを分けてやるべきだろう。もちろん、ぼくは前者にしか参加しない。

ちなみに、4人お揃いのこのTシャツが「どこで売ってるんですか?」と、一部で話題だったらしい。

これ、コワーキング協同組合が開発してるアプリ「cosac」のTシャツです。ただいま、ベータ版テスト参加者募集中。

ところで、今回のパネルディスカッション、時間が足りなさ過ぎて、全員、満足できていない。そこで、カンファレンスから勝手にスピンアウトして延長戦をすることにした。

来る6月9日(日)19時から、オンライン(たぶんZoom)で開催する。きっと、もっと突っ込んだ話になると思う。詳しくは追って告知するので、ぜひ、ご参加ください。

コワーキングカンファレンスJapan2024にご参加いただいた皆さん、実行委員会の皆さん、協賛、応援の各社、そして、スピーカー、パネラーとしてマイクを持った皆さん、誠に有難うございました。

ということで、今日はこのへんで。


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