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読書記録『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』

こんにちは、神崎翼です。
食べ物が出てくる作品が大大大好きなのですが、物語に出てくる以上は食べ物の描写も表現の一つ。何気ない食事シーンが登場人物の立ち位置や感情、はたまたこの先の展開など、様々なことを示唆することも。

そういったことを読み解いていったのが、今回読んだこちらの本。

ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50
(2012.4/福田里香著、オノ・ナツメ挿絵/太田出版)

まんがやアニメ、絵本、映画、テレビドラマ…。画像作品にはさまざまな食べ物が登場する。数多くの物語でよく似たフード表現が繰り返されることを「ステレオタイプフード」と名付け、50の場面を紹介する。

honto商品説明より引用

物語の中において慣用句のように繰り返される食べ物描写を「ステレオタイプフード」と名付け、その場面の意味や特徴などについて深堀りしていった本です。ちなみにこちらの本は最近改題&文庫化されていますが、私が読んだのが上記のタイトルの紙書籍だったことと、オノ・ナツメ先生が描かれたゴロツキの表紙を見て頂きたいのでそちらのリンクを貼っています。文庫版は電子書籍も出ているので、電子書籍でほしい方は下記からどうぞ。

もう全体的に楽しかったし、勉強になる本でした。

フード理論のフード三原則

1 善人は、フードをおいしそうに食べる
2 正体不明者は、フードを食べない
3 悪人は、フードを粗末に扱う

P3 より引用

上記のフード三原則から始まり、「仲間は同じ釜の飯を食う」「失恋のヤケ食いはいつも好物」など、様々なあるあるフード描写がどんなふうに生まれたのか、どう活用されているのか、どういった意味を持つのか等々。フード理論をぎゅぎゅっと楽しく学べる本になっています。

創作者が読めばキャラメイクや場面転換などにフードを活用できるようになりますし、読者が読めば物語の解釈の幅が増えて、ますます読書が楽しくなります。

個人的に特に印象に残った二つのフード理論を紹介していきます。
まずはこちら。

太っているということは、必要以上に飽食を繰り返した結果を指し示している。「飽食」は広義では、食べ物を粗末にしているということだ。フード三原則の「悪人は、フードを粗末に扱う」という例の括りに含まれる。

P.32「03 鼻持ちならない金持ちの子供は、食い意地がはっていて太っている」より引用

印象に残ったというか、正直ドキリとしました。現代日本は美味しいものがたくさんあり、それは豊かさでもありますが、過ぎれば悪なのだなと改めて突き付けられた気持ちです。「日々の食事を私は本当に大事にできてるのだろうか」物語を超えて、否、物語から改めて学ばせていただきました。

次はこちら。

 わたしは、食べ物の「グレーゾーン」とは、いわゆる「香辛料」「嗜好品」「麻薬」などと総称されている一連の物質ではないかと考えている。シナモン・バニラ・ミント・胡椒・唐辛子・山椒・チョコレート・ケーキ・砂糖・はちみつ・コーヒー・茶・煙草・大麻・コカ・阿片・モルヒネ・LSD・覚せい剤……。

P.204 「30 煙草を手放さないひとは、心に秘密を抱える傍観者だ」より引用

喫煙とは二重の意味で「フードなのか、そうじゃないのかの間」というグレーな存在であり、吐き出される煙は、いつも「嘆息と空気の間」に、曖昧に消え去る運命で、見た目どおり、文字どおり、ひとを「煙に巻く」行為なのだ。(中略)必然的に「煙草と空間の間」に漂う紫煙には、物理的現象以上に意味深な雰囲気が漂うことになり、イコノロジー的には「秘密」を示唆するわかりやすいアイコンとして機能することになる。

P.206-207 「30 煙草を手放さないひとは、心に秘密を抱える傍観者だ」より引用

私の好きな作品に『ACCA13区監察課』という漫画があるのですが、作者は挿絵を描かれているオノ・ナツメ先生。

もらいタバコのジーン」の異名を持つ、組織きっての食えない男である主人公が大きな秘密に巻き込まれていく、人間の生き様というか『粋』を楽しめる作品。主人公の異名からわかるように、作中ではタバコがたびたび登場します。更に主人公の相方的ポジションにいる男はチョコレートが好物で、甘いものが作中にはたくさん登場し、酒を飲みかわすシーンも。オノ・ナツメ先生の作品にはミステリアスで色気があって秘密めいた魅力が常にあるのですが、フード理論で言えば食べ物や嗜好品の描写を天才的なまでにうまく活用しているということなのだなと拍手を送りたくなりました。本著の挿絵にオノ・ナツメ先生が起用されたのも、きっとそういうご縁なのだろうなと思います。

山ほど勉強になりましたが一個一個書き出していたら一万文字くらい行きそうなのでこの辺で。本当に本当に勉強になるのでおすすめです!

それでは今日はこの辺で。
また次の記事でお会いしましょう。


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