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かんやん
2022年6月2日 05:38
それ以来、ジャズバーにたまに顔を出すようになると、他に客がほとんどいないこともあって、オーウェンさんを一人占めにすることができ、彼の人となりや来歴を知ることができたのである。他人にあまり興味がない私がマスターに関心を持ったのは、私の周囲に、たとえばセリーヌだとかヘルマン・ブロッホだとかを読んだという者が一人もいないどころか、そもそも読書家(もちろん、国民的な人気を誇ったレイプ未遂犯を主役としたギ
2022年6月4日 07:29
短くなった安煙草を太い親指と人差し指でつまんで旨そうに吸っているハンチングに派手な柄シャツ姿のオーウェンさんはたしかに様になっていたけれど、カウンター越しに見ていると、酒場のオヤジ六十歳限界説がどうしても脳裏をよぎるのであった。けれども、いつまでも、どこまでも正常性バイアスと不安症の板挟みのような日々がだらだらと続いて、店を閉じたマスターと他の店へ呑みにゆくということもあった。閉店時刻には会計も