寄付とブロックチェーン7

寄付とSNSとブロックチェーン

noteの投稿募集に、#寄付について考えるというテーマがあり、思うところがあるトピックだったので、アウトプットしてみます。

寄付は「市場経済」と「社会保障」のキャズムの緩衝材

そもそも寄付ってなんなんでしょう?

僕は、寄付という行為は、
市場原理における経済合理性が無く (= 儲からない)、社会保障の手が十分に届かない (= 政治的影響力が不十分) 領域に、
問題意識を共有する (経済的余裕のある) 有志が、問題に直面している人に対して、所得の再分配を行うこと、という風に捉えています。

公的機関による再分配が行き届かない原因には、
文化政策のような政治的優先順位が上がりにくいケース、
保障にかかる金額が莫大で、公的資金投入が難しいケース、
災害時にような緊急性が高く、行政手続きのスピード感では遅いケース、
国際的な貧困問題のような単一の政治主体での解決が難しいケース、
等々、多岐にわたり、

「銀の弾丸」的な根本的な解決策が基本的には無く、市場経済の原理で掬うことは出来ないから、民間から民間への所得再分配でカバーしている、という風に捉えています。

寄付への対価としてどんな欲求が満たされているのか

寄付という行為は、基本的には金銭的見返りを求めない行為ではありますが、(経済的な意味で) 何の得もないのに何故多くの人が寄付という行為に参加するのでしょうか?

それは、”金銭的な見返りを得たい”という以外の何らかの欲求が満たされていると考えるのが自然かと思います。

では、どんな欲求が満たされているのか?

僕は、
1) 利他欲求 (誰かの役に立つ喜び)
2) 承認欲求 (良い人だと思われる喜び)
の2種類の欲求のどちらか (あるいは両方) が刺激されているのではないかと考えています。

ちょっと脱線しますが、寄付という行為をめぐっては、よく、良い人と思われたいだけの偽善だと揶揄されることがあります。

しかし、利他行為によってドーパミンが分泌され、脳が快楽を感じるというのは脳神経科学分野の研究でも明らかにされていることからも、
人の役に立ちたい!という欲求は、単なる承認欲求をカムフラージュするツールとしてではなく、純粋に人の役に立つ喜びを感じたいんだと受け取って良いものだと思っています。

SNSは承認欲求のトークン化によって急成長した

突然ですが、僕は、2010年前後のFacebookやTwitterの爆発的な成長は、「承認の経済」が限界費用ゼロで超高速フル回転した結果だと考えています。

SNSというプラットホームは、

たくさんのユーザが、
たくさんのコンテンツを投稿し、
人々の可処分時間シェアを得るほどに、
媒体価値が向上し、
経済的価値が向上する

という循環で成長します。

なぜ僕らは、そんなSNS側の経済合理性に与するような形で「時間コスト」を投下するのでしょうか?

その最大の原動力は「承認欲求」でしょう。

Likeされたり、Shareされたり、RTされたり、コメントされたりするとドーパミンが大量に分泌され、さらなる時間コストを投下してコンテンツを投稿してしまいます。

一番のポイントは、インターネットの仕組みによって、この「承認」を与える行為の限界費用がほぼゼロ (例えば、Likeボタンを押すだけ) になったことでしょう。

つまり、「承認」によって得られる満足に対して、それを与えるコスト極端に小さいのです。

結果、「承認」の生産・交換・消費 (= 経済) が超高速フル回転し、承認欲求市場が急成長した結果、SNSが爆発的に普及した、と考えています。

寄付の"市場経済化"で社会問題を解決する

なぜ突然、SNSの話をおっ始めたのか。

僕は、今後の「寄付」は、新たな欲求の経済を生み市場化していくのではないか、と考えています。

「経済 (= 生産・交換・消費のループ)」が、ポスト・インターネットの世界では「金銭」を介するとは限らない、ということがSNSの爆発的な成長からの最大の学びだったのではないかと思います。

つまり、財やサービスの交換を効率化するためのトークンとして貨幣があるように、 また、承認欲求の交換の効率化トークンとしてLike数やフォロワー数があるように、

寄付行為によって得られる利他欲求と承認欲求が、限界費用ゼロで交換可能になることによって、
市場経済と社会保障の狭間にあるキャズムを、新たな経済によって善意(だけ)ではなく、仕組みで埋めることが出来るのではないか?と考えているのです。

寄付の"市場経済化"の基盤技術としてのブロックチェーン

ブロックチェーンというと、ビットコインを始めとする仮想通貨バブルが記憶に新しく、ギャンブル的な怪しいやつというイメージが浸透しつつあります・・・が、この技術は、世の中に本質的な変革を生むものだと僕は信じています。

中でも、
・トークンエコノミー
・スマートコントラクト
の組合せは絶大で、「トラストレス (= 取引相手への信頼が不要) な取引が加速することで、
様々な取引の仕組みが根本的にひっくり返るだろうと考えています。

詳しく書き始めると重厚長大になるので、割愛しますが、乱暴にまとめてしまうと、

ブロックチェーン (= 改竄が非常に困難な非中央集権的に管理される取引台帳) を利用して、
価値 (トークン、あるいは仮想通貨) の交換記録を蓄積し、
高い透明性を持って価値の移転を可視化するのがトークンエコノミー。

この"価値の移転"に加えて、"契約の履行 (=事前に定義されたプログラムの実行)"もブロックチェーン上で、改竄困難な形で管理しようというのがスマートコントラクトの考え方です。

これを利用すると、例えば、「寄付を募って、貧困地域に物資を届ける」というプロジェクトを、

ある寄付プラットフォームでトークンを購入し、
そのトークンをこのプロジェクトに投入すると、
スマートコントラクト上で実装された"物資を買って現地に配送する"というプログラムが自動的に実行され、
発注し、配送する、

といったことが、すべてオープンな環境で自動的に履行可能になります。
(その物資が現地の人たちに届くところまで、その気になればこの仕組み上で追跡可能になると思います)

(作図はチャーリーさんのビジネスモデル図解ツールキットを利用させていただきました)

仮にこういった世界観が実現すると、寄付の使い道はスマートコントラクト上で追跡可能なため、利他欲求も今以上に満たされ、
トークンのやり取りはブロックチェーン上で公開されるため、誰がどれだけ何に貢献したのかが可視化され、承認欲求も今以上に満たされる、
といったことが実現可能なのではないでしょうか。

ここにFacebookのLikeボタンのような、限界費用ゼロ化の仕掛けが加わると、「寄付行為による社会問題解決」が、「欲求の経済の超高速フル回転」によって加速度的に進むのではないか?と考えています。


こういった世界観は、既に様々なクラウドファンディングプラットフォームを通じて部分的に実現していたり、同様のコンセプトで既に実装し始めている人たちもたくさんいるんじゃないかと思います。

僕自身は、直接的にこういったプラットフォームを構築しようとしているわけではないですが、そんな世界の実現に向けて色々チャレンジしたいと考えて起業し、現在、活動しています。

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