閑窓社

文芸同人誌「閑窓」を発行しています。 最新刊はvol.3「閑日月に捧ぐ」 問い合わせ→…

閑窓社

文芸同人誌「閑窓」を発行しています。 最新刊はvol.3「閑日月に捧ぐ」 問い合わせ→kansousha2019@gmail.com

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  • 瀬戸の記事

    瀬戸が書いた映画の感想記事のまとめです。

  • 熾野の記事

    熾野が書いた記事のまとめです。

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    アンソロジー 名刺をめぐる記憶あるいは空想

    「ーーを忘れない」 名刺に残ったメッセージと 「百崎尋」をめぐる14編の記憶。 [仕様] カバー・オビ有り B6サイズ(128mm×182mm) 口絵6・本文206、全212頁 秘密結社きつね福 作中に登場する名刺が付録でつきます 小説:伊藤なむあひ「生猫作り」 今がいつかって? 私たちはそれをカンマ一秒の誤差もなく共有しており、だからこそ外部からの情報は必要なかった。私たちはもう長い時間をそのようにして過ごしており、私たち以外を求めるなんてことは遥か昔にしなくなっていた。 小説:犬山 昇「草の上の三重奏曲」 さまざまな商売の試みの中で、少なからずうまく行ったのが日記商売だった。名刺大の紙片に、その日の出来事や、心情を書く。それを治療として行う一群があった。記録は、たとえば薄紫のアールグレイの紅茶缶や、三日月の標章があしらわれた黒い焼き菓子の容器など、各自が気に入った小箱に収納されていた。 小説:大木芙沙子「オーロラ」 ポラリス・カーウォッシュは町にひとつだけある洗車場だった。従業員はレイとテオの二人だけ。雇われ社長のグエンはほとんど表には出てこずに、たいてい裏で金勘定か電話かサッカー賭博のどれかをしている。敷地内にはコンテナみたいな掘っ立て小屋の事務所と、車が二台までは入れる駐車場、それにやっぱり掘っ立て小屋みたいなガレージがひとつある。 小説:尾八原ジュージ「ねずみが出る」 わたしたちはそういうものを、決まって「ねずみ」と呼んでいた。 小説:紅坂 紫「酒神(あるいはくいとめる)」 前で、からだに魂をつなぎとめているのだから。記憶を部屋につなぎとめているように、気配を場所につなぎとめているように。誰かの苗字か、名前のどちらかを忘れてしまったとき、あなたのからだを作っている血や骨からそのひとの魂は削り取られてしまっている。 小説:坂崎かおる「ヒーロー」 いつごろからだろうか、百科事典が届くようになった。ブリタニカ。一冊ずつ、不定期に届いた。救世軍や支援団体経由で来たが、差出人はわからない。ただ、ときどき、名刺が挟まっていた。「百崎尋」。モモサキ・ヒロ。 小説:鮭とば子「初恋」 薬をやるようになったのは、おれがまだ十七とかそこらの可愛い子供だった頃だ。高校時代は勉強も部活もなんにもやってなくてとにかく暇で、誘われたらどこでも行くようにしてたらよくわかんないパーティに連れられるようになって、ある日友達の先輩の先輩の知り合いの、みたいな関係の人から薬をおごってもらう。 小説:瀬戸千歳「虎の埋葬」 はじめからいない虎の不在によって私たちの関係はあっけなく壊れてしまった。 小説:鳥山まこと「タイムカプセル」 土以外の他の何かを、自分は掘ったことがあるだろうか。硬そうな地表面にスコップを突き刺しながらコウタは思った。力をかけて掘り起こし、えぐれた土を眺めながらその何かを思い出そうとしたが、すぐには思い出せなかった。 漫画:橋本ライドン「或る福の神からの手紙」 就活で連敗中の私をみかねた両親から渋々明かされ 知り合いの神族経営の会社に裏口就職した 小説:蜂本みさ「記憶の蟻塚」 日曜日、あなたは汗をびっしょりかいて目を覚ます。大学の卒業式で実は単位が足りていなかったと発覚する夢を見たのだ。春なのに電気毛布の温度を高くしすぎたせいだろう。夢の中のあなたは黒地に牡丹の散った着物に薄紫の袴をつけ、誰かとセルフィーを撮りまくっていたが、やってきた大学事務の人に留年を告げられ、膝から崩れて泣きわめいた。 小説:安河内瞳「君の葬式には行かない」 その男は俺に永遠の命を与えると言った。 小説:吉田棒一「インダストリーストリー」 寮メシを食べながら会社の昔話を聞く。昭和の時代は環境対応がいい加減で、祝坐化学も海に汚染物質を垂れ流していたこと。稲津野の漁業組合と付き合いがある理由はそれで、今でも毎年「寄付金」名義で事実上の上納金を収めていること。生野さんと金さんは当時のことを知っていて、少し後ろめたそうにしている。 写真・短歌:ヨノハル「昼の光に」 遠ざかるほどに根雪はかがやいて記憶のための手旗となって 名づけても名づけてもなお憎しみはきみを苛む野火の熱さで 写真:ヨノハル 企画・編者・装幀:瀬戸千歳
    1,650円
    真夜中文庫
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    閑窓vol.5.1 道辻の(ささやかな)灯り

    閑窓vol.5「道辻を灯す」の舞台だった架空の商店街、祝坐町商店街に新たなお店が新しく4店舗加わりました。全4篇収録。 梅の季節/丸屋トンボ 長年連れ添った妻に先立たれた夫は、一年も経つと呆けるそうだ。医者は娘の心構えのためにと親切心から伝えたのだろうが、傍聞きした夫の三木夫にとっては気分が悪い。今年で米寿を迎えても、なぜか耳は遠くならなっていない。 付憑/瀬戸千歳 カガノさんは風呂がきらいなので、ひとりになりたいときは銭湯へいくことにしている。蒸気のなかにいては境目がますます曖昧になってしまうらしい。それじゃあ銭湯は霊とかいないんですかと、いつだったか尋ねたことがある。そういうんに頓着せんアホみたいなんがおる。 名もなき骨/熾野優 このバス停は車庫の次の停留所にあたるため、毎朝バスの到着が遅れることは決してない。いつも同じ時刻のバスに乗るので並ぶ人たちの顔ぶれも覚えていて、眼鏡をかけた長身だが猫背のサラリーマン、オフィスカジュアルといった服装の茶髪の女性、そしてこうやってバスを待つ間にようやく目が覚めてくる私が続く。 顔燕(ツサカ)/Yoh クモハ 黒い翼が初夏の空気をバターナイフのように切り取っている。商店街をツサカが飛ぶようになると汗ばむ季節だ。ツサカは軒先に巣を作る鳥だ。縁起のいい鳥だと言われているが、フンも落ちるし、食べ物屋には歓迎されない。 挿  画:橋本ライドン デザイン:瀬戸千歳 写真:ヒロセミサキ 口絵:椎木彩子 イラスト:橋本ライドン 装幀:瀬戸千歳 閑窓社 2024.5.18 初刷発行 B6版/28ページ/中綴じ本
    300円
    真夜中文庫
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    アンソロジー 非実在神様(増刷版)

    八つの神様、八つの祈り。 [仕様] カバー・オビ有り B6サイズ(128mm×182mm) 本文148頁 秘密結社きつね福 御札デザインのシール付属 2023.11.11 初刷り 2024.05.18 増刷 再増刷版です オビのデザイン、本文の一部が初刷りから変わっています 犬山 昇「デュッセルドルフの神さま」 水子おばさんの部屋は、水際の最下層にある。ひび割れが目立つ築四十年のアパートは、入口が四階にある。彼女以外に住人の気配はないし、他の部屋はすべて硝子窓が黒のテープで覆われている。目の前はリゾート再開発に失敗した湖で、最寄りのJR駅から五キロ歩いたところに、その湖上アパートの入口はある。 大木芙沙子「お正月さん」 そのひとは、私たちが遊んでいるところへある年ふらっとやってきた。仏間は大人たちがお酒を飲んでいる居間から便所へ通じる廊下の途中にあったから、便所へいくついでに私たちの姿を確認していく大人はいたけれど、そのひとは居間とは逆方向の廊下から歩いてきて、「おじゃまするね」とふすまを開けて、後ろ手でそれを閉めると、すとん、とその場に胡坐をかいた。 尾八原ジュージ「おまよい様の住む家は」 おまよい様を見た。黒い子どもの影のようなものが古地川さんの家の門から出てきたと思ったら、ぴゅんと走って角を曲がった。わたしはとっさに追いかけた。遅れて曲がった角の先に、その姿はもうなかった。 木古おうみ「虚渡しの日」 虚渡しの神が現れる期間はほぼ五十年毎だ。直近で現れたのは二十一年前だから、後三十年近くは安全だ。出たとしても、神に遭遇する確率は飛行機事故より遥かに低い。 紅坂 紫「高峰」 その日、高峰は月見団子をふたつ買ってきた。島で唯一の和菓子屋の名が入ったビニール袋を揺らして、土間に立ったままわたしを呼んだ。気分が良かったのだろう。デジタルノイズのような顔を色とりどりに変えながら大きな声で笑っていた。 鮭とば子「たいか様」 たいか様。その漢字には複数の説があるけれど、大抵は『大禍』と『対価』が選ばれる。「大禍を呑めば対価を与える神様」ということがわかりやすいからだ。 瀬戸千歳「生まれたばかりの泉」 死者に会える泉のうわさを耳にしたことはあったけれど、それにまつわるアルバイトがあるとは思ってなかったし、まさか受かるとも思っていなかった。どれくらいの倍率かは知らないけれど受かったのは僕だけだった。 橋本ライドン「らぶらぶ様」 まったく 信じる力はおそろしい。 企画・編集・装幀:瀬戸千歳 ※付属シールを貼った書影は初刷り時のものです。
    1,300円
    真夜中文庫
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    アンソロジー 名刺をめぐる記憶あるいは空想

    「ーーを忘れない」 名刺に残ったメッセージと 「百崎尋」をめぐる14編の記憶。 [仕様] カバー・オビ有り B6サイズ(128mm×182mm) 口絵6・本文206、全212頁 秘密結社きつね福 作中に登場する名刺が付録でつきます 小説:伊藤なむあひ「生猫作り」 今がいつかって? 私たちはそれをカンマ一秒の誤差もなく共有しており、だからこそ外部からの情報は必要なかった。私たちはもう長い時間をそのようにして過ごしており、私たち以外を求めるなんてことは遥か昔にしなくなっていた。 小説:犬山 昇「草の上の三重奏曲」 さまざまな商売の試みの中で、少なからずうまく行ったのが日記商売だった。名刺大の紙片に、その日の出来事や、心情を書く。それを治療として行う一群があった。記録は、たとえば薄紫のアールグレイの紅茶缶や、三日月の標章があしらわれた黒い焼き菓子の容器など、各自が気に入った小箱に収納されていた。 小説:大木芙沙子「オーロラ」 ポラリス・カーウォッシュは町にひとつだけある洗車場だった。従業員はレイとテオの二人だけ。雇われ社長のグエンはほとんど表には出てこずに、たいてい裏で金勘定か電話かサッカー賭博のどれかをしている。敷地内にはコンテナみたいな掘っ立て小屋の事務所と、車が二台までは入れる駐車場、それにやっぱり掘っ立て小屋みたいなガレージがひとつある。 小説:尾八原ジュージ「ねずみが出る」 わたしたちはそういうものを、決まって「ねずみ」と呼んでいた。 小説:紅坂 紫「酒神(あるいはくいとめる)」 前で、からだに魂をつなぎとめているのだから。記憶を部屋につなぎとめているように、気配を場所につなぎとめているように。誰かの苗字か、名前のどちらかを忘れてしまったとき、あなたのからだを作っている血や骨からそのひとの魂は削り取られてしまっている。 小説:坂崎かおる「ヒーロー」 いつごろからだろうか、百科事典が届くようになった。ブリタニカ。一冊ずつ、不定期に届いた。救世軍や支援団体経由で来たが、差出人はわからない。ただ、ときどき、名刺が挟まっていた。「百崎尋」。モモサキ・ヒロ。 小説:鮭とば子「初恋」 薬をやるようになったのは、おれがまだ十七とかそこらの可愛い子供だった頃だ。高校時代は勉強も部活もなんにもやってなくてとにかく暇で、誘われたらどこでも行くようにしてたらよくわかんないパーティに連れられるようになって、ある日友達の先輩の先輩の知り合いの、みたいな関係の人から薬をおごってもらう。 小説:瀬戸千歳「虎の埋葬」 はじめからいない虎の不在によって私たちの関係はあっけなく壊れてしまった。 小説:鳥山まこと「タイムカプセル」 土以外の他の何かを、自分は掘ったことがあるだろうか。硬そうな地表面にスコップを突き刺しながらコウタは思った。力をかけて掘り起こし、えぐれた土を眺めながらその何かを思い出そうとしたが、すぐには思い出せなかった。 漫画:橋本ライドン「或る福の神からの手紙」 就活で連敗中の私をみかねた両親から渋々明かされ 知り合いの神族経営の会社に裏口就職した 小説:蜂本みさ「記憶の蟻塚」 日曜日、あなたは汗をびっしょりかいて目を覚ます。大学の卒業式で実は単位が足りていなかったと発覚する夢を見たのだ。春なのに電気毛布の温度を高くしすぎたせいだろう。夢の中のあなたは黒地に牡丹の散った着物に薄紫の袴をつけ、誰かとセルフィーを撮りまくっていたが、やってきた大学事務の人に留年を告げられ、膝から崩れて泣きわめいた。 小説:安河内瞳「君の葬式には行かない」 その男は俺に永遠の命を与えると言った。 小説:吉田棒一「インダストリーストリー」 寮メシを食べながら会社の昔話を聞く。昭和の時代は環境対応がいい加減で、祝坐化学も海に汚染物質を垂れ流していたこと。稲津野の漁業組合と付き合いがある理由はそれで、今でも毎年「寄付金」名義で事実上の上納金を収めていること。生野さんと金さんは当時のことを知っていて、少し後ろめたそうにしている。 写真・短歌:ヨノハル「昼の光に」 遠ざかるほどに根雪はかがやいて記憶のための手旗となって 名づけても名づけてもなお憎しみはきみを苛む野火の熱さで 写真:ヨノハル 企画・編者・装幀:瀬戸千歳
    1,650円
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    閑窓vol.5.1 道辻の(ささやかな)灯り

    閑窓vol.5「道辻を灯す」の舞台だった架空の商店街、祝坐町商店街に新たなお店が新しく4店舗加わりました。全4篇収録。 梅の季節/丸屋トンボ 長年連れ添った妻に先立たれた夫は、一年も経つと呆けるそうだ。医者は娘の心構えのためにと親切心から伝えたのだろうが、傍聞きした夫の三木夫にとっては気分が悪い。今年で米寿を迎えても、なぜか耳は遠くならなっていない。 付憑/瀬戸千歳 カガノさんは風呂がきらいなので、ひとりになりたいときは銭湯へいくことにしている。蒸気のなかにいては境目がますます曖昧になってしまうらしい。それじゃあ銭湯は霊とかいないんですかと、いつだったか尋ねたことがある。そういうんに頓着せんアホみたいなんがおる。 名もなき骨/熾野優 このバス停は車庫の次の停留所にあたるため、毎朝バスの到着が遅れることは決してない。いつも同じ時刻のバスに乗るので並ぶ人たちの顔ぶれも覚えていて、眼鏡をかけた長身だが猫背のサラリーマン、オフィスカジュアルといった服装の茶髪の女性、そしてこうやってバスを待つ間にようやく目が覚めてくる私が続く。 顔燕(ツサカ)/Yoh クモハ 黒い翼が初夏の空気をバターナイフのように切り取っている。商店街をツサカが飛ぶようになると汗ばむ季節だ。ツサカは軒先に巣を作る鳥だ。縁起のいい鳥だと言われているが、フンも落ちるし、食べ物屋には歓迎されない。 挿  画:橋本ライドン デザイン:瀬戸千歳 写真:ヒロセミサキ 口絵:椎木彩子 イラスト:橋本ライドン 装幀:瀬戸千歳 閑窓社 2024.5.18 初刷発行 B6版/28ページ/中綴じ本
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    八つの神様、八つの祈り。 [仕様] カバー・オビ有り B6サイズ(128mm×182mm) 本文148頁 秘密結社きつね福 御札デザインのシール付属 2023.11.11 初刷り 2024.05.18 増刷 再増刷版です オビのデザイン、本文の一部が初刷りから変わっています 犬山 昇「デュッセルドルフの神さま」 水子おばさんの部屋は、水際の最下層にある。ひび割れが目立つ築四十年のアパートは、入口が四階にある。彼女以外に住人の気配はないし、他の部屋はすべて硝子窓が黒のテープで覆われている。目の前はリゾート再開発に失敗した湖で、最寄りのJR駅から五キロ歩いたところに、その湖上アパートの入口はある。 大木芙沙子「お正月さん」 そのひとは、私たちが遊んでいるところへある年ふらっとやってきた。仏間は大人たちがお酒を飲んでいる居間から便所へ通じる廊下の途中にあったから、便所へいくついでに私たちの姿を確認していく大人はいたけれど、そのひとは居間とは逆方向の廊下から歩いてきて、「おじゃまするね」とふすまを開けて、後ろ手でそれを閉めると、すとん、とその場に胡坐をかいた。 尾八原ジュージ「おまよい様の住む家は」 おまよい様を見た。黒い子どもの影のようなものが古地川さんの家の門から出てきたと思ったら、ぴゅんと走って角を曲がった。わたしはとっさに追いかけた。遅れて曲がった角の先に、その姿はもうなかった。 木古おうみ「虚渡しの日」 虚渡しの神が現れる期間はほぼ五十年毎だ。直近で現れたのは二十一年前だから、後三十年近くは安全だ。出たとしても、神に遭遇する確率は飛行機事故より遥かに低い。 紅坂 紫「高峰」 その日、高峰は月見団子をふたつ買ってきた。島で唯一の和菓子屋の名が入ったビニール袋を揺らして、土間に立ったままわたしを呼んだ。気分が良かったのだろう。デジタルノイズのような顔を色とりどりに変えながら大きな声で笑っていた。 鮭とば子「たいか様」 たいか様。その漢字には複数の説があるけれど、大抵は『大禍』と『対価』が選ばれる。「大禍を呑めば対価を与える神様」ということがわかりやすいからだ。 瀬戸千歳「生まれたばかりの泉」 死者に会える泉のうわさを耳にしたことはあったけれど、それにまつわるアルバイトがあるとは思ってなかったし、まさか受かるとも思っていなかった。どれくらいの倍率かは知らないけれど受かったのは僕だけだった。 橋本ライドン「らぶらぶ様」 まったく 信じる力はおそろしい。 企画・編集・装幀:瀬戸千歳 ※付属シールを貼った書影は初刷り時のものです。
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閑窓社とは?

はじめにはじめまして閑窓社です。文学フリマ東京を中心に、文芸同人誌「閑窓」を制作・頒布しています。毎号“架空の間取り”をテーマに、様々なゲストをお呼びして1号につき8名で「閑窓」を作っています。 メンバー 丸屋トンボ 昭和テイストの小説が得意。好きな作家は吉行淳之介・向田邦子。 熾野 優 家族小説が得意。好きな作家は滝口悠生・津村記久子。『光暈』で第6回世田谷区芸術アワード“飛翔” 文学部門受賞、『弾き継ぎ』で第2回文芸思潮新人賞入選。 瀬戸千歳(note) 恋愛・方言

    • よつばを育ててくれたとーちゃんへ

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      • 人生で初めて恋愛映画を観た男が感じた様々なこと。

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        • ポケモン映画の歴史は、首藤剛志との戦いの歴史でもある。

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        記事

          Aマッソのネタは「振り返ってはいけない」の一言で完成した。

           仕事が遅くなり、開始時間に間に合わなかった2020年「The W」。  吉住さん面白かった。納得の優勝。  これまでは「あー、そういえばやってたんだ、チェックしてなかったな」程度だったこの大会だが、今年は違う。  決勝者発表の一覧に、「Aマッソ」の名前があったのだ。  私がAマッソに出会ったのは大学四年生の夏くらいだったと思う。  夜中までだらだらと過ごし、なんとなくつけていたテレビでお笑い番組が始まった。深夜番組ということもあり、知らない芸人さんばかりだったけれど、も

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          共によつばを育ててきた人たちへ

           1ヶ月に渡り連載してきた「共によつばを育ててきた人たちへ」もついに最終回。誰が読んでいるのかもわからないような記事だったが、今回は「よつばとこれから」と題し、今後の展開予想、また拾いきれなかった要素などを取り上げていきたい。 ■子育ては引き継がれていく  先日、友人にこの連載の感想を求めたところ、こんな話があがった。 「風香に牛乳を届ける回の最後、よつばを迎えにきたとーちゃんがよつばを殴ったのが衝撃的だった。なぜかとーちゃんはそういうことをしない人だと思っていた。もし

          共によつばを育ててきた人たちへ

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           漫画というメディアは、長く続くことがよしとされている。  だからこそ常に変化を伴うし、面白い回があれば、面白くない回も存在する。しかし、「よつばと!」は類を見ないほどに、面白さを更新し続ける漫画だ。今回のテーマは「よつばを包む気配のこと」である。あずまきよひこがいかに「具体性」から「抽象性」へと物語を変容させてきたのかについて語っていきたい。ちなみに私は、この回を書くために「よつばと!」という漫画を取り上げたと言っても過言ではない。 ■周囲が感じるよつばの存在  「よつ

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           前回の記事にて、「よつばと!」は第5巻をもって章が区切られている、という説を私は提唱した。それは「夏が終わる」という明確な線引きの他に、これ以降この作品の基礎となる「”よつば”を”よつば”たらしめるもの」が生まれた時期だからでもある。今回は、なぜ「よつばと!」が漫画界において異才を放っているのか、その秘密に迫っていきたい。 ■よつばに命が吹き込まれた瞬間  そんなの最初から生きているキャラクターとして描かれていたじゃないか、と思われるかもしれない。けれど私は、あずまきよ

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           子どもを持たずして、子育ての妙を味わう方法がある。  2003年から連載が開始した漫画「よつばと!」  私の好きな漫画の中で、最も語るべき要素の多いものが「よつばと!」だと思っている。現在14巻まで刊行され、今年中に15巻が出るのでは、と巷ではささやかれているが、それまでのおさらいとしてこのレビューを読んでもらいたい。  ここに書かれていることは出典や根拠の明示された部分もあるが、完全な私見も含まれている。 ■「よつばと!」のターニングポイント  よつばと!には現在(1

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