閑窓社

文芸同人誌「閑窓」を発行しています。 最新刊はvol.3「閑日月に捧ぐ」 問い合わせ→…

閑窓社

文芸同人誌「閑窓」を発行しています。 最新刊はvol.3「閑日月に捧ぐ」 問い合わせ→kansousha2019@gmail.com

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    瀬戸が書いた映画の感想記事のまとめです。

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    熾野が書いた記事のまとめです。

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    アンソロジー 非実在神様

    八つの神様、八つの祈り。 カバー有/オビ付き 御札デザインのシール付属 犬山 昇「デュッセルドルフの神さま」 水子おばさんの部屋は、水際の最下層にある。ひび割れが目立つ築四十年のアパートは、入口が四階にある。彼女以外に住人の気配はないし、他の部屋はすべて硝子窓が黒のテープで覆われている。目の前はリゾート再開発に失敗した湖で、最寄りのJR駅から五キロ歩いたところに、その湖上アパートの入口はある。 大木芙沙子「お正月さん」 そのひとは、私たちが遊んでいるところへある年ふらっとやってきた。仏間は大人たちがお酒を飲んでいる居間から便所へ通じる廊下の途中にあったから、便所へいくついでに私たちの姿を確認していく大人はいたけれど、そのひとは居間とは逆方向の廊下から歩いてきて、「おじゃまするね」とふすまを開けて、後ろ手でそれを閉めると、すとん、とその場に胡坐をかいた。 尾八原ジュージ「おまよい様の住む家は」 おまよい様を見た。黒い子どもの影のようなものが古地川さんの家の門から出てきたと思ったら、ぴゅんと走って角を曲がった。わたしはとっさに追いかけた。遅れて曲がった角の先に、その姿はもうなかった。 木古おうみ「虚渡しの日」 虚渡しの神が現れる期間はほぼ五十年毎だ。直近で現れたのは二十一年前だから、後三十年近くは安全だ。出たとしても、神に遭遇する確率は飛行機事故より遥かに低い。 紅坂 紫「高峰」 その日、高峰は月見団子をふたつ買ってきた。島で唯一の和菓子屋の名が入ったビニール袋を揺らして、土間に立ったままわたしを呼んだ。気分が良かったのだろう。デジタルノイズのような顔を色とりどりに変えながら大きな声で笑っていた。 鮭とば子「たいか様」 たいか様。その漢字には複数の説があるけれど、大抵は『大禍』と『対価』が選ばれる。「大禍を呑めば対価を与える神様」ということがわかりやすいからだ。 瀬戸千歳「生まれたばかりの泉」 死者に会える泉のうわさを耳にしたことはあったけれど、それにまつわるアルバイトがあるとは思ってなかったし、まさか受かるとも思っていなかった。どれくらいの倍率かは知らないけれど受かったのは僕だけだった。 橋本ライドン「らぶらぶ様」 まったく 信じる力はおそろしい。 装幀:瀬戸千歳 書影は付属シールを貼ったサンプルです。
    1,300円
    真夜中文庫
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    アンソロジー 夢でしかいけない街(増刷版)

    人魚の歌、灯篭流し、流氷の街、増殖するペンギン、海底の不動産屋、父とのプール、瞼のうらの湖……小説・短歌・漫画・写真・イラストでつむがれる16編の夢物語 [仕様] カバー・オビ有り B6サイズ(128mm×182mm) 口絵12・本文196、全208頁 秘密結社きつね福 2023.05.20 初刷り 2023.06.24 増刷 増刷版です オビのデザイン、本の厚み、本文の一部が初刷りから変わっています [書き手] ・左沢森「北に旅」 ・伊藤なむあひ「夢街奇譚」 ・大木芙沙子「みずうみ」 ・オカワダアキナ「ヒッポカンピ 」 ・尾八原ジュージ「春の夜の歌」 ・紅坂紫「波の彼方(あなた)」 ・坂崎かおる「ペンギニウムの子どもたち」 ・鮭とば子「シャク太郎の呪い」 ・白川小六「蜘蛛を助ける/蜘蛛に助けられる」 ・瀬戸千歳「餓虎」 ・谷脇クリタ「海氷街の羽海子」 ・橋本ライドン「夢の約束」 ・本所あさひ「海底街と斎藤さん」 ・yuca「忘れるために」 ・ヨノハル「渡河」 ・Raise「閘」 写真:ヨノハル 企画・編集・装幀:瀬戸千歳
    1,650円
    真夜中文庫
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    閑窓vol.6 常しなえの佳日

    閑窓vol.6 「常しなえの佳日」 架空の百貨店、八満屋をめぐる短編集です。全8編収録。 [執筆者] ・伊藤美希 ・大滝のぐれ ・熾野 優 ・瀬戸千歳 ・鳥山まこと ・旗原理沙子 ・丸屋トンボ ・望月柚花 道の真ん中でひとり/熾野優 母と違って目が悪い私は星のひとつひとつが鮮明には見えない。ぼんやりと、小さく強く輝く光の粒がちりばめられている。 細蟹姫/瀬戸千歳 ウワサによればこのフロアにあるらしい笹は、七夕がすぎて撤去されるまで毎日短冊をかけ続けたら願いが叶うというもの、けれど婦人服のフロアにあるからおれら男子中学生がおいそれ立ち寄れるわけでもなし、実際のところクラスの男子で目にしたやつはいないみたいや。前に住んでたところでもそういう願かけは流行ったから「それお百度さんやん」なんて思わず口にするけどもちろん誰にも伝わらず、それってどんなやつなの、など聞き返され、それだけならまだしも、どんなんどんなんおしえてえなあなどへったくそな訛りを使われてむかついたし、おれも使わんように話してみるけどぜんぜんむりで、ていうか標準語をしゃべるおれサブイボが立つわ。 大理石に泳ぐ/丸屋トンボ 海の底の夢を見た。ほかのアンモナイトたちと珊瑚の森を泳ぐ。三葉虫が群れを成して行進する。頭上で巨大なシーラカンスが方向転換し、わだつみが渦を巻く。海の底なのに、なぜか遠くの山々にはしんしんと雪が降っている。アンモナイトだって夢を見るのだ。 ...and more!! 写真:ヒロセミサキ イラスト:橋本ライドン 装幀:瀬戸千歳 閑窓社 2023.5.20 初刷り A6版/190ページ/カバーなし/帯付き
    700円
    真夜中文庫
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    アンソロジー 非実在神様

    八つの神様、八つの祈り。 カバー有/オビ付き 御札デザインのシール付属 犬山 昇「デュッセルドルフの神さま」 水子おばさんの部屋は、水際の最下層にある。ひび割れが目立つ築四十年のアパートは、入口が四階にある。彼女以外に住人の気配はないし、他の部屋はすべて硝子窓が黒のテープで覆われている。目の前はリゾート再開発に失敗した湖で、最寄りのJR駅から五キロ歩いたところに、その湖上アパートの入口はある。 大木芙沙子「お正月さん」 そのひとは、私たちが遊んでいるところへある年ふらっとやってきた。仏間は大人たちがお酒を飲んでいる居間から便所へ通じる廊下の途中にあったから、便所へいくついでに私たちの姿を確認していく大人はいたけれど、そのひとは居間とは逆方向の廊下から歩いてきて、「おじゃまするね」とふすまを開けて、後ろ手でそれを閉めると、すとん、とその場に胡坐をかいた。 尾八原ジュージ「おまよい様の住む家は」 おまよい様を見た。黒い子どもの影のようなものが古地川さんの家の門から出てきたと思ったら、ぴゅんと走って角を曲がった。わたしはとっさに追いかけた。遅れて曲がった角の先に、その姿はもうなかった。 木古おうみ「虚渡しの日」 虚渡しの神が現れる期間はほぼ五十年毎だ。直近で現れたのは二十一年前だから、後三十年近くは安全だ。出たとしても、神に遭遇する確率は飛行機事故より遥かに低い。 紅坂 紫「高峰」 その日、高峰は月見団子をふたつ買ってきた。島で唯一の和菓子屋の名が入ったビニール袋を揺らして、土間に立ったままわたしを呼んだ。気分が良かったのだろう。デジタルノイズのような顔を色とりどりに変えながら大きな声で笑っていた。 鮭とば子「たいか様」 たいか様。その漢字には複数の説があるけれど、大抵は『大禍』と『対価』が選ばれる。「大禍を呑めば対価を与える神様」ということがわかりやすいからだ。 瀬戸千歳「生まれたばかりの泉」 死者に会える泉のうわさを耳にしたことはあったけれど、それにまつわるアルバイトがあるとは思ってなかったし、まさか受かるとも思っていなかった。どれくらいの倍率かは知らないけれど受かったのは僕だけだった。 橋本ライドン「らぶらぶ様」 まったく 信じる力はおそろしい。 装幀:瀬戸千歳 書影は付属シールを貼ったサンプルです。
    1,300円
    真夜中文庫
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    アンソロジー 夢でしかいけない街(増刷版)

    人魚の歌、灯篭流し、流氷の街、増殖するペンギン、海底の不動産屋、父とのプール、瞼のうらの湖……小説・短歌・漫画・写真・イラストでつむがれる16編の夢物語 [仕様] カバー・オビ有り B6サイズ(128mm×182mm) 口絵12・本文196、全208頁 秘密結社きつね福 2023.05.20 初刷り 2023.06.24 増刷 増刷版です オビのデザイン、本の厚み、本文の一部が初刷りから変わっています [書き手] ・左沢森「北に旅」 ・伊藤なむあひ「夢街奇譚」 ・大木芙沙子「みずうみ」 ・オカワダアキナ「ヒッポカンピ 」 ・尾八原ジュージ「春の夜の歌」 ・紅坂紫「波の彼方(あなた)」 ・坂崎かおる「ペンギニウムの子どもたち」 ・鮭とば子「シャク太郎の呪い」 ・白川小六「蜘蛛を助ける/蜘蛛に助けられる」 ・瀬戸千歳「餓虎」 ・谷脇クリタ「海氷街の羽海子」 ・橋本ライドン「夢の約束」 ・本所あさひ「海底街と斎藤さん」 ・yuca「忘れるために」 ・ヨノハル「渡河」 ・Raise「閘」 写真:ヨノハル 企画・編集・装幀:瀬戸千歳
    1,650円
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    閑窓vol.6 常しなえの佳日

    閑窓vol.6 「常しなえの佳日」 架空の百貨店、八満屋をめぐる短編集です。全8編収録。 [執筆者] ・伊藤美希 ・大滝のぐれ ・熾野 優 ・瀬戸千歳 ・鳥山まこと ・旗原理沙子 ・丸屋トンボ ・望月柚花 道の真ん中でひとり/熾野優 母と違って目が悪い私は星のひとつひとつが鮮明には見えない。ぼんやりと、小さく強く輝く光の粒がちりばめられている。 細蟹姫/瀬戸千歳 ウワサによればこのフロアにあるらしい笹は、七夕がすぎて撤去されるまで毎日短冊をかけ続けたら願いが叶うというもの、けれど婦人服のフロアにあるからおれら男子中学生がおいそれ立ち寄れるわけでもなし、実際のところクラスの男子で目にしたやつはいないみたいや。前に住んでたところでもそういう願かけは流行ったから「それお百度さんやん」なんて思わず口にするけどもちろん誰にも伝わらず、それってどんなやつなの、など聞き返され、それだけならまだしも、どんなんどんなんおしえてえなあなどへったくそな訛りを使われてむかついたし、おれも使わんように話してみるけどぜんぜんむりで、ていうか標準語をしゃべるおれサブイボが立つわ。 大理石に泳ぐ/丸屋トンボ 海の底の夢を見た。ほかのアンモナイトたちと珊瑚の森を泳ぐ。三葉虫が群れを成して行進する。頭上で巨大なシーラカンスが方向転換し、わだつみが渦を巻く。海の底なのに、なぜか遠くの山々にはしんしんと雪が降っている。アンモナイトだって夢を見るのだ。 ...and more!! 写真:ヒロセミサキ イラスト:橋本ライドン 装幀:瀬戸千歳 閑窓社 2023.5.20 初刷り A6版/190ページ/カバーなし/帯付き
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閑窓社とは?

はじめにはじめまして閑窓社です。文学フリマ東京を中心に、文芸同人誌「閑窓」を制作・頒布しています。毎号“架空の間取り”をテーマに、様々なゲストをお呼びして1号につき8名で「閑窓」を作っています。 メンバー 丸屋トンボ 昭和テイストの小説が得意。好きな作家は吉行淳之介・向田邦子。 熾野 優 家族小説が得意。好きな作家は滝口悠生・津村記久子。『光暈』で第6回世田谷区芸術アワード“飛翔” 文学部門受賞、『弾き継ぎ』で第2回文芸思潮新人賞入選。 瀬戸千歳(note) 恋愛・方言

    • よつばを育ててくれたとーちゃんへ

       はじめて「よつばと!」15巻の書影と帯が発表されたとき、私は「普通という奇跡」の意味を、コロナ禍における変わらない物語と捉えて疑わなかった。  しかしながら、これまで読者に感動と驚きを与え続けた「あずまきよひこ」「里見英樹」の両者が、そのような形で簡単にことを終わらせるはずがなかった。  このキャッチコピーは時代背景の反映なんてものではない。もっと長く、深く続く、変わらない想いを指した言葉だったのだ。  普通とは、奇跡である。  これまでの「よつばと!」で語られてきた

      • 人生で初めて恋愛映画を観た男が感じた様々なこと。

         タイトルに強い言葉を使ってしまったけれど、「人生で初めて恋愛映画を観た」というのは、もちろんそのままの意味ではない。  26年も生きていれば否が応でも恋愛映画を享受する機会はやってくるもので、けれどそれを観たところで、しっくり来ることがなかったのも事実だった。  すべてが嘘とまではいかないまでも、「ああ、この映画は『陽の当たる場所』しか描かないのだな」とひねくれた感想しか持てなかった。中には日陰の部分を見せる作品もあったけれど、それはあくまでも陽に当たるための布石であり、日

        • ポケモン映画の歴史は、首藤剛志との戦いの歴史でもある。

           2020年12月25日、夏の代名詞として有名なポケモン映画も、今年はコロナウィルスの影響によりクリスマス当日の公開となった。  登場人物たちが薄着であることに違和感を覚えつつ、ポケモン映画を劇場で見ている自分が厚着をしていることにも違和感がある。  大まかなストーリーは公式サイトを見てもらうのが手っ取り早い。 https://www.pokemon-movie.jp/story/index.php  簡単に言えば、幻のポケモン「ザルード」に育てられた少年「ココ」がサトシ

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        記事

          Aマッソのネタは「振り返ってはいけない」の一言で完成した。

           仕事が遅くなり、開始時間に間に合わなかった2020年「The W」。  吉住さん面白かった。納得の優勝。  これまでは「あー、そういえばやってたんだ、チェックしてなかったな」程度だったこの大会だが、今年は違う。  決勝者発表の一覧に、「Aマッソ」の名前があったのだ。  私がAマッソに出会ったのは大学四年生の夏くらいだったと思う。  夜中までだらだらと過ごし、なんとなくつけていたテレビでお笑い番組が始まった。深夜番組ということもあり、知らない芸人さんばかりだったけれど、も

          Aマッソのネタは「振り返ってはいけない」の一言で完成した。

          共によつばを育ててきた人たちへ

           1ヶ月に渡り連載してきた「共によつばを育ててきた人たちへ」もついに最終回。誰が読んでいるのかもわからないような記事だったが、今回は「よつばとこれから」と題し、今後の展開予想、また拾いきれなかった要素などを取り上げていきたい。 ■子育ては引き継がれていく  先日、友人にこの連載の感想を求めたところ、こんな話があがった。 「風香に牛乳を届ける回の最後、よつばを迎えにきたとーちゃんがよつばを殴ったのが衝撃的だった。なぜかとーちゃんはそういうことをしない人だと思っていた。もし

          共によつばを育ててきた人たちへ

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           漫画というメディアは、長く続くことがよしとされている。  だからこそ常に変化を伴うし、面白い回があれば、面白くない回も存在する。しかし、「よつばと!」は類を見ないほどに、面白さを更新し続ける漫画だ。今回のテーマは「よつばを包む気配のこと」である。あずまきよひこがいかに「具体性」から「抽象性」へと物語を変容させてきたのかについて語っていきたい。ちなみに私は、この回を書くために「よつばと!」という漫画を取り上げたと言っても過言ではない。 ■周囲が感じるよつばの存在  「よつ

          共によつばを育ててきた人たちへ

          共によつばを育ててきた人たちへ

           前回の記事にて、「よつばと!」は第5巻をもって章が区切られている、という説を私は提唱した。それは「夏が終わる」という明確な線引きの他に、これ以降この作品の基礎となる「”よつば”を”よつば”たらしめるもの」が生まれた時期だからでもある。今回は、なぜ「よつばと!」が漫画界において異才を放っているのか、その秘密に迫っていきたい。 ■よつばに命が吹き込まれた瞬間  そんなの最初から生きているキャラクターとして描かれていたじゃないか、と思われるかもしれない。けれど私は、あずまきよ

          共によつばを育ててきた人たちへ

          共によつばを育ててきた人たちへ

           子どもを持たずして、子育ての妙を味わう方法がある。  2003年から連載が開始した漫画「よつばと!」  私の好きな漫画の中で、最も語るべき要素の多いものが「よつばと!」だと思っている。現在14巻まで刊行され、今年中に15巻が出るのでは、と巷ではささやかれているが、それまでのおさらいとしてこのレビューを読んでもらいたい。  ここに書かれていることは出典や根拠の明示された部分もあるが、完全な私見も含まれている。 ■「よつばと!」のターニングポイント  よつばと!には現在(1

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