苦悩「言葉の減塩をしてみようという話」
恐れ入ります。かんぴょうです。
昨今は減塩文化が大変染み付いていて、ご家庭のあらゆるものが減塩食品に切り替わっていますね。
健康的で大変よろしい。
醤油に味噌汁、カップ麺。
流石に塩分50%offの塩が、普通の塩と同じ値段同じ量で売られていたときは「実質値段倍じゃねえか」とは思いましたが。
そんな大減塩時代にあやかり私も一つ、減塩をしてみようと思います。
ただし私が減塩するのは「言葉」。
口にする食品ではなく、言葉を減塩してみようと思うのです。
どういうことか。
お塩はそれだけで料理を手軽に成立させられる、大変便利な調味料です。
ただし、塩に頼りすぎると当然しょっぱくなり、料理の質を下げ、健康を損ねてしまいます。
会話の中にもそういった、頼りすぎると危険なワードは散見され、それらはしばしば不健康な「しょっぱい会話」を招きます。
だからこそ、塩分過多なワードををあえて使わない、あるいは減らすことで、健康的な会話を目指してみようというのです。
しょっぱくない会話を目指してみよう!
では、会話における「塩分」とは何か。
私は「誇張や比喩の表現の大きさ」だと考えます。
例えば「エグい」「超」「ヤバい」「まじで」「メッチャ」「無限に」など。
これらは言葉の塩分が高いですね。
塩分過多ワードです。
身近な人がこのあたりを常用していたら、すぐに健康診断をオススメしましょう。
高血圧で引っかかる可能性があります。
グラタンコロッケバーガーがほぼ小麦粉だけで構成されているのと同じように、塩分過多ワードだらけの会話は、虚無と不健康を招きます。
でも美味いからグラコロ食っちゃうよな。
それが怖い。
では反対に、健康的な会話が望める「減塩ワード」とはどんなものでしょう。
「ちょっと」「ほんの少し」「心なしか」「1、2個」このあたりが健康!減塩ワードです。
控えめな表現を用いることで、素材本来の旨味が引き立つ会話となりますね。
「そんな控えめな表現で大丈夫か?」と思うかもしれませんが、平気です。
幸い、日本人は出汁や旨味を尊ぶ民族のため、減塩ワードでも楽しい会話を続けることは可能でしょう。
無理に誇張した表現を使わずとも、人は想像を働かせ、細部の情景まで掴み取ることができるのです。
「ちいさい秋、見つけた」なんてその最たる例ですね。
あんな過ごしやすい季節、普通デカければデカいほど良いんだから。
小ささ、少なさにも会話の彩りは生まれるのです。
では、塩分過多トークと減塩トークを、実際の例文で比べてみましょう。
①好物
〜塩分過多トーク〜
「ねぇマジでさ!パンケーキとか無限に食べられるんだけど!」
「ほんとそれな!一生食べ続けられる笑」
よく見る光景ですね。
出来もしないこと、ありもしない嘘を大き過ぎる比喩で例えるのはやめましょう。
女子高生の胃袋なんて大きめのモバイルバッテリーくらいしかないんだから。
〜減塩トーク〜
「パンケーキってずっと食べてられるよね。今まで食べた量を合わせたら、ギリギリ1回炊き出しができないくらいにはなるんじゃないかな」
「お前が我慢すれば笑えた子供も居ただろうにな」
いかがでしょうか?
実際そんなに食べているかは大した問題ではありません。
物事をいつもより控えめに例えることで、何気ない雑談でも高品質になるのです。
炊き出しのチョイスが終わってるのは一旦置いとくとして。
②テスト勉強
〜塩分過多トーク〜
「今日全くテスト勉強してねぇわ!ガチで終わった笑」
「ヤバくね?今日の小テスト落とすと流石にマズいっしょ」
あり得る会話ですね。
私も学生時代、しばしば耳にしました。
しかしこれでは何とも身の詰まっていない、塩っ辛さだけが残るトークになってしまいます。
〜減塩トーク〜
「今日の歴史のテスト、なんとか弥生時代の見開き2ページちょっとだけ勉強できたわ」
「張る山小さすぎない?天保山?」
いかがでしょうか?
あえて少なく、小さく物事を伝えることで、テスト勉強をしていない悲哀をより感じられ、相手も悲しみ混じりの返答(罵倒)をしてくれるでしょう。
吉野ケ里遺跡一本狙いでテストに臨むバカがいたら、友だちになりたかったね。
③昨日の飲み会
〜塩分過多トーク〜
「いや昨日マジで超酒飲んだわ!世界一ビール飲んだわ!」
「それはエグいて笑」
ショボい(断言)しょっぱい(断言)。
こんな塩辛い会話を酒のアテにしているのなら大したものですが、およそそんな人はいないでしょう。
〜減塩トーク〜
「いやあ中々飲んだね、昨日は。渋谷にあったワインの2%くらいは今、私の腹の中にあるだろうね」
「胃に小さめのワイナリーができてるじゃないの」
これは少し変化球ですね。
控えめな表現を用いつつ、ガッツリ飲んだということが伝わるナイスな会話です。
少しだけ表現に変化を加えることで、会話の品質はむしろ向上し、彩りのある生活になるでしょう。
バッターの手元でほんのちょっとだけ曲がるカットボールって極上よね。
塩分過多なワードを使うことによる会話の品質低下、おわかりいただけましたか?
塩分過多ワードは大変便利で、ついつい使いがち。でもそれによる会話の品質低下は免れません。
正しい食育を行うのと同時に、ご自身の口にする言葉の塩分量、見直してみてはいかがでしょうか。
あ、すいません私のプレミアム醤油豚骨、硬め濃いめ多めでお願いします。
おしまい
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