【短編小説】謎肉ならぬ謎麺を求めて

海外ドラマを見ていると、時折彼らが食べてる謎の料理がある。
白い箱に入っているあの謎の麺。謎麺だ。
白い容器の麺というとカップヌードルみたいだけど、あれとは違うようだ。お湯を入れたりしていないし、そもそもスープがない。
カップヌードルにも、謎肉と呼ばれている具があるが、この麺は存在自体が謎のまさしく「謎麺」なのだ。
じっくりこの謎麺が出てくる場面を観察してみると、いくつかの特徴を確認することができた。

・ラーメンというよりも焼きそばに近い
・結構具だくさん
・ファストフード的な食べ方をしている

なかなか日本ではありそうでない感じだった。
麺はやっぱりどんぶりとかお皿で出るイメージがある。軽い感覚で食べるとしたらやはりカップラーメンが近いだろう。あとは出店の焼きそばだ。日本のはだいたいプラスチックのパックだけど。
出店の麺料理といえばタイラーメンがあるが、あれはだいたい使い捨てのおわんに入っていて、ナンプラーや薬味を入れる事ができるが、謎麺の箱は密封されていて購入者が自ら追加で薬味やトッピングを付け足しているような描写はなかった。
自分の麺知識の中にもうすでにありそうで、実は何処にもなかった未知の食べ物、謎麺のことを考えれば考えるほど気になってきた。
まさに謎麺スパイラルだった。

このあと、謎麺への調査を続ける過程で自分と同じような悩みを抱えている人が結構いることが判明した。それは「海外ドラマ 麺」で検索すると、あの麺の真相に関する記事や質問が多数出てきたからだ。みんな気になっているんだなぁ。
そして結局の結論は「アメリカを中心に展開している中華系ファストフードだ」という事だった。名前を炒麺(チャオメン)といって料理自体はやはり焼きそばに近いものだという。
そして、調べを進めていくと、なんとこの炒麺を日本でも食べられる事が判明した。
食べたい!あの箱で食べたい!
僕はそう強く願い、気づけばその店目指して電車に乗っていた。
日本で展開しているのは、パンダエキスプレスという店だった。アメリカ本国でも展開しているチェーンが数年前に上陸したのだという。
パンダエキスプレスに到着した僕は迷わす炒麺を注文した。するとさすがはファストフード。牛丼くらいすぐ出てくる。作り置きでもしているのか?
システムなどどうでも良い。肝心なのは味だ。ついに念願の実食の時!

……うーん、不味くはないが特別美味いかと言われればそうでも、ない。
確かに思い返せばこの麺をドラマなどで「wow!すごくおいしい!」なんて嬉々として食していた人物は皆無だった気がする。我々にとってのカップラーメンと同じで特に驚く事のない、ありふれた料理なのだろう。
残りはただひたすらに無心で麺を啜った。
なんだかこの炒麺を通して海外ドラマの登場人物たちとの距離がほんの少しだけ縮まった……気がした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?