Re:ゼロから始めるホスト生活

 源氏名はタマキとした。その日は緑のすごいかっこいいスーパーカーがすすきのを駆け抜けた日だった。

緑のすごいかっこいいスーパーカー

 このスーパーカーが駆けた街の後と先では全く違う世界が広がってしまうような実像だ。
 今日の日は僕もスーパーカーに翻弄され、本入店を控えたホストクラブが見つからなくなるほどであった。大遅刻をして出勤し、道に迷って店にたどり着けなかったことを説明していると、上司のFに「お前ヤバい薬やってんじゃないだろうなあ?」と言われる始末。
 そんな僕のホストクラブ入店初日は洗い物を中心に任された。正直いてもいなくてもどっちでもいいような雑務係の僕は洗い物をこなしてホールに突っ立っていた。店内は派手なEDMにネオンきらびやかな発色。そんななかでも一人こつこつと洗い物。まるで言われたことだけやっているペッパーくんのようである。それとなく雑務をこなしお仕事を終えて帰ろうとしたところ。
「家どこなの?」
「〇〇区☓☓条です」
「どうやって帰るの?」
「送迎で送ってもらうと聞きました。」
「火曜日は送迎やってないのよ。だから始発までをVIPルームで待機!」
そして、このお店は閉店から1時間足らずで、同じ空間をつかって2部の朝ホストをやるというのである。
上司のFに「頼むから中に居てくれ」と念を押されたが、コンビニに買い物にいくついでに友達のホストAくんに会いに行った。
Aくんは顔はかっこいいのだが、パチンコ狂いで常に金欠に陥っている貧乏ホストだ。僕が前の店で働いていた時は一日で初回指名4本飲み直し2本を新人でとった強者である。
Aくんには、生活費とパチンコ代で6000円を貸しているくらいの仲だ。いつか彼が売れっ子ホストになったときにはお金を貸してもらおう!
「Rさんっていたじゃんか?オジサンホストの!今度、女の子連れて初回来てくれるってよ。熱くね。」
「熱いっすね先輩」Aくんはこんな感じのかわいいやつなんだけど、Aくんと遊ぶ時には必ず、ついでまわる少女の友達がいる。この少女の連絡先を今は聞いている最中である。上司のFはVSルームのドアを開け締めしては「つかれた」

なかなかいかつい男なのであるが、8年前の写真だそうだ。

8年前は僕は天真爛漫な19歳だったはずだ。その頃からホストを初めていればよかったのか悪かったのかは知る由もないか。夜職だけで生きてきた人間が昼に帰れるのか、果ては又逆も真なり。
そんなところで1日目の日記を終了とする。

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