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身体に障がいがあっても、人は空を飛べる! 車いすパラグライダーのはなし

パラグライダーは心身ともに健康で元気な人だけのもの・・・という思い込み、ありませんか? 山形県の南陽スカイパークで飛んでいるパラグライダースクール「ソアリング・システムズ」では、何らかの事情で自分の脚で走ることができない方向けに車いすタンデム(二人乗り)フライトのサービスを提供しています。

パラグライダー専用車いすを使って、脚にハンディのある方にも高度差300mの空中散歩をお楽しみいただけます。操縦はインストラクターが行ないますので、安心して大空へ飛び立てます。

https://soaringsystems.co.jp/tandem-flight/flychair/

私はこの南陽スカイパークの話を聞いたことがあったので「車いすでも空を飛べる」ということは知っていました。ですが、ある日「車いすパラグライダーのワールドカップをコロンビアで開催予定!」というポストがSNSで流れてきて「ワールドカップ!?」と驚いて、思わずリンクをクリックしました。しかもリンク先の案内を読むとクロスカントリー(長距離飛行)の大会だというのです。

二人乗りだけでなく、車いすでソロフライトもできる・・・という話は南陽スカイパークの人から聞いたような気もしますが、脚にハンディがあるような方がホームエリア以外の場所で飛ぶの?とか、できるだけ長い距離を飛ぶことを目指すクロスカントリーで飛んだら、降りた後はどうするの?とか、ワールドカップを開催するほど車いすパラグライダーで空を飛んでいる人がたくさんいるの?とか、いろいろな疑問が頭に浮かびます。

疑問を抱きつつリンク先の案内文をさらによく読むと、大会開催が決定しているわけではなく、開催資金を集めるためのクラウドファンディングを実施している最中のようです。しかしプロジェクトとしては動き始めていて、コロンビア、エクアドル、ブラジル、アメリカ、フランス、イタリア、スロベニア、オーストリアから参加選手がいる・・・と。ワールドカップを開催するほど車いすでパラグライダーで空を飛んでいる人は、たくさんいるんですね〜。びっくり。

WHO:Paragliding pilots with reduced mobility from all over the world. We already have 12 confirmed participants from Colombia, Ecuador, Brazil, USA, France, Italy, Slovenia, and Austria.

https://donorbox.org/wheels4flying-colombia-paragliding-event-and-world-cup

クラウドファンディングを実施しているwheels4flying はオーストリアを拠点に車椅子パラグライダーでのタンデムフライトやソロで飛ぶ人向けのレッスンを行っているスクールのようです。ホームページには使用機材やスポンサーメーカーについても記載してあるし、SNS(InstagramFacebook)を開くと車いすパラグライダーを楽しむ人々の写真や動画が流れてきます。Instagramを眺めていると、車いすで空を飛ぶ人がこんなにたくさんいるんだ・・・と実感が湧いて、すごいなぁ!と圧倒されます。

http://www.wheels4flying.com/

実は最近、パラグライダーの上手な友人が事故に遭いました。その友人はパラグライダーが上手なだけではなく、より高みを目指す強い意志の持ち主で常に誰よりも熱心に練習していたし、安全にフライトするためには練習が必要だ!ということを周りに啓蒙するエネルギーのあるひとで、私はその熱意に圧倒されるとともに尊敬していました。しかしそんな彼も事故に遭ってしまう・・・という事実を目の当たりにして、私は「誰でも事故に遭う可能性はあるのだ」と感じ入っています。ちなみに(このあと車いすの話を書きますが)彼は大事故に遭ったものの、幸いなことに、手術やリハビリなどを適切に行えば普通に運動できる状態に復帰できる見込み、今は毎日リハビリに励んでいるようです。事故の経過やリハビリの様子をnoteに綴っているのですが、なかなか壮絶・・・読むのが時々怖いほどですが、応援してます。がんばって!

しかし「誰でも事故に遭う可能性はある」のはパラグライダーだけでなく、車・自転車・歩行中などの交通事故でも言えることです。暴走車や酔っぱらい運転をする車に巻き込まれたら・・・いやそこまで大きくなくても、前方不注意の追突事故や突然の飛び出しによる事故など、毎日いろいろな場所で本当にさまざまな事故が起きています。どんなに安全運転を心がけていても、事故の可能性をゼロにすることはできません。誰でも事故に遭う可能性はあるし、怪我をする可能性もある。松葉杖や車いすを使っている身体障がい者を見て「大変そうだな〜」と他人事のように思っていたら、それは明日の我が身かもしれません。明日は大丈夫でも、明後日・明明後日、1年後・2年後・10年後、いつどこでどんなきっかけで身体に障がいを持つことになるかは、誰にもわかりません。

話は変わりますが私は数ヶ月前に職場で「多様性を考える」イベントがあり、パラリンピックで車いすバトミントン選手として活躍する女性の講演を聞く機会がありました。彼女は生まれつきの障がいで足の関節の可動域が狭く、10代の頃から車いすが手放せない生活を送っているそうです。しかし機会あって車いすバトミントンというスポーツを始めて、その面白さにハマって世界大会に参加するほどのレベルでバトミントンを続けている・・・というお話を聞き、さらに実際に車いすを使って会場を動き回る彼女の様子を見て、障がいがあっても人はここまで活動できるし、スポーツを通して他の競技者と競い合うことを楽しむこともできるんだな・・・と、胸を打たれるものがありました。

生まれつき身体に障がいを持っている人もいるし、事故や病気など後天的な要因で身体に障がいを追う可能性もある。しかし障がいがあっても、自分がやりたいことをあきらめる必要はないのです。

「車いすパラグライダーのワールドカップをコロンビアで開催予定!」というクラウドファンディングの案内を通して、驚きとともに、私はそんな感動を抱きました。

空を飛びたいという願いに障がいは関係ありません・・・が、日本人視点でこの案内を見直すと、南米のコロンビアという場所が地理的に遠すぎて「車いすでもそうじゃなくても、心身ともに健康であってもなくても、開催地まで行くのが大変だな〜」と思ってしまいました笑。つい最近、別の方面でもコロンビアについて調べたのでいつかは行ってみたいですけど・・・世界の広さを決めるのは障害の有無よりも想いの強さなのかもしれません。


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