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本のサイズ(判型)ってどんな種類があるの?【改めて出版業界の知識を学ぶ】

 こんにちは! マイストリート岡田です。

 ここでは、ちょっとややこしい出版業界特有の用語や慣習について、僕も改めて学びながら紹介していきます。

 今回は「本のサイズ(判型)」について。

 現在は臨時閉店してしまっている書店も多いですし、電子書籍も普及してきていますから、「本のサイズ」と言われてもあまり気にしていないのかも。

「単行本」「新書」「文庫」と言われて、なんとなくのサイズの違いはわかっていたり、「新書」と「新刊」の区別がつかなかったり、いろいろです。

「文庫」に対して単行本のサイズを「大判」と言っていたり、本のサイズについては曖昧になっていることが多いのかもしれません。

 出版業界の用語は、古くに定着した言葉がそのまま現在まで使われてきていたり、読者のほうにはわかりにくい状態のまま提示されていることも多いのです。


■文庫判

 日本の書籍の主流とも言えるサイズですね。
 基本はA6判サイズとなる105mm×148mmとなります。

 文庫判の中でも、いくつか規格の違いがあって、高さが151mmだったり、152mmだったりします。
 新潮文庫、文春文庫は151mm。
 集英社文庫、光文社文庫、宝島社文庫、ヒーロー文庫は152mm。

 幻冬舎文庫は特殊で、幅が100mmになっていて、本棚に仕舞ったときに並びがちょっとだけ凹むのが特徴です。

 中には「トールサイズ」として高さが160mmになっているレーベルもあります。ハヤカワ文庫は2009年からトールサイズに変更されていて、同じくトールサイズの平凡社ライブラリーが友達だと思ってるのが面白いです。

 トールサイズは慣れていない書店員だと文庫サイズカバーを掛けてしまいそうになることでお馴染み。市販されている布製などのブックカバーにも入らないので、専用のサイズも出ています。


 これは単行本にも当てはまるのですが、製本の方法として「天アンカット」というものがあります。本の背以外の部分を、天・小口・地と言うのですが、上部分の天を断裁して揃えない製法のことです。

岩波文庫、新潮文庫、創元推理文庫がこの製法を使っていますね。

現在、話題になるときは「不良品だ」と思われてしまうのが悲しいですが、これは「フランス装」と呼ばれる洒落た装丁を真似して採用したものだったのです。新潮文庫は現在でも「スピン」という栞ひもをつけている、貴重なレーベルです。



 文庫本は、価格はページ数などでまちまちですが、500~1000円くらい。安価で持ち運びがしやすく、いまの出版物の中ではもっとも親しまれているものだと思います。

 江戸~明治期にも小型本としての文庫はありましたが、小型で持ちやすい廉価版の本という形で刊行を始めたのは昭和初期の「岩波文庫」だったそうです。

 ドイツで廉価本を出版していた「レクラム文庫」を参考にして、古典的な価値のある文学作品や学術書を、小型の書籍として一般大衆に普及させるという意図で創刊されたそうです。

 これが「文庫本」という出版形態として定着していきました。古典的な名作や、ベストセラーとなった作品を、廉価版として文庫化していくのが基本でした。

 けれどライトノベルは若年層向けの小説群なので、最初から文庫本での刊行がされるようになりました。そこから派生して、ライト文芸作品なども、単行本刊行後に文庫化するのではなく、最初から文庫本として刊行されています。

いきなり文庫」という言葉も、作品の惹句になっていました。

 いまでは単行本→文庫という流れが当たり前ではなくなり、「最初から文庫で出してくれ!」という要望も見られるようになりました。


■B6判・四六判

 B6判は主に青年コミックの単行本に使われるサイズだと認識していました。しかしWeb小説の書籍化もこのサイズが主流になっています。

 B6判は 128mm×182mm
 四六判は128mm×188mm

 書籍の単行本としては四六判というB6判よりも高さが6mm大きいものが採用されることが基本でした。表紙に硬い板紙を使うハードカバー(上製本)の書籍も四六判が基本です。

 現在、Web発の小説作品はこのB6判と四六判の、ソフトカバー単行本が混在しています。

 B6判はKADOKAWA(エンターブレイン)や電撃の単行本、MFブックス、TOブックス、GAノベル、GCノベルズなど。

 四六判はアルファポリス、宝島社の単行本、Mノベルス、HJノベルスなど。

「単行本」と言いつつ、レーベルでほぼデザインが統一されていて、シリーズ刊行がされていくので、叢書(種々の書物を、一定の形式によって順次刊行してゆくもの)になっているとは思います。

 その他、一般文芸と呼ばれる小説群は、ハードカバー・ソフトカバーどちらもあります。フランス装と呼ばれるオシャレな装丁にする場合も見られます。「単行本」なのでデザインはその書籍独自のものとして、いろいろと趣向が凝らされていますね。

 特殊紙を使ったり、箔押しをしたり、UVニスを使ったり、型抜きしたり、エンボス加工したり……けれどこういった特殊加工はお金がかかるので、なかなかできません。憧れです。

 単行本は本体価格が1000~1500円と、文庫よりも高く設定されます。初版部数が減り続ける昨今では、こうして文庫ではない判型での刊行をして、少ない部数でも利益が出るような施策をしています。

●「単行本」と呼ばれる書籍の製本方法

ソフトカバー(並製本)……ライトノベルやコミックスなど、本文の紙に厚紙の表紙を付けて製本しているもの。シンプルな作りなので安価で制作できます。
ハードカバー(上製本)……表紙は硬い板紙を上質紙などで包んだものになっていて、本文よりも一回り大きくなっています。背が丸くなる丸背や、四角くなる角背など製本方法も異なります。かなり頑丈な作りとなり、値段も高くなります。
フランス装……ソフトカバーとハードカバーの間のような、仮製本の一方式。本文を包む表紙が大きめになっていて、天地左右を折り曲げて糊付けしている。


 B6判は青年コミックスのサイズなので、あとから発生した単行本ライトノベルがB6判の規格を採用しているのも、こういったコミックスとサイズを揃えるためだったのだと思います。

 昔「スクウェア・エニックス・ノベルズ」というレーベルがあったのですが、中身は小説なのにシュリンクをしてマンガと同じ棚に置いていることがありました。マンガ勘違いして買って人からクレームがあったことも記憶しているのですが、そういうふうに、マンガと同じ感覚で手にとってもらうのも狙いだったのだと思います。


■新書判

『なぜ○○は△△なのか』『□□力』『◇◇のトリセツ』などのタイトルが印象的な、読みやすくまとめられたビジネス系・教養系の叢書のことをまとめて「新書」と呼びます。

 新書判はサイズがレーベルによってまちまちなのですが、
 105mm~109mm×173~174mmとなっています。

 単行本で出ている実用系の本の、ライト版といったイメージでしょうか。

 この一群のスタートは「岩波新書」だといいます。古典的作品を刊行していた文庫とは違い、現代的な教養の書き下ろしを収録し、時代のトレンドを反映していたといいます。これはいまの「新書」も同じですね。

 この他、新書判と呼ばれる書籍には、「講談社ノベルス」「カッパ・ノベルス」「トクマノベルズ」などのノベルス(ノベルズ)があります。教養的な内容の新書とは区別された、ジャンル小説中心のレーベル群のことで、80年代から2000年代に隆盛していました。

 2010年代になるとめっきり数を減らしてしまいました……。

 個人的にはこの「ノベルス判」のサイズは、文庫よりもカバーデザインや版面のデザインに自由度があって、ワクワクする作りだったと思います。本文が二段組でも読みやすいのがよかったと感じています。


 若干サイズは異なるのですが、少年・少女マンガのコミックスも「新書判コミックス」と呼ばれています。

 本来は「小B6判」というサイズ。サイズは新書判とほぼ同じなのでひとくくりにされているのだと思います。このサイズのコミックスが主流になった経緯はこちら。

 こちらのコミックスの場合はジャンプコミックスだと113mm×177、講談社コミックスだと116mm×173mmとなっています。


■A5判

『このライトノベルがすごい!』などのガイドブックや、『SFにマガジン』『メフィスト』などの文芸誌もA5判ですね。

 A5判は148mm×210mm

 個人的にA5判というと、4コママンガです。

 ビジュアルが大きめに載せられて、ページ数があまりなくても格好がつく判型だと思っています。見開きでA4サイズになるので、馴染みのあるサイズではあるんですよね。


■菊判

 A5判よりも一回り大きいサイズなのですが、海外ファンタジーの単行本や、児童向けの書籍に使われています。

「ハリー・ポッター」シリーズなどがこのサイズに近いです。

 菊判は150mm×220mm


 ここで「菊」という新たな単位が出てきましたが、ここまで出てきた「A判」「B判」「四六判」「菊判」というのは、印刷時に使用する紙――原紙のサイズなのです。

「菊判」はもともと新聞用紙としてアメリカから輸入されたもので、新聞用の紙なので「聞→菊」としたり、輸入紙の商標がダリアなので菊に似ていたり、というところから「菊印刷」として売り出したそうです。

「四六判」は、


明治時代にイギリスから輸入した「クラウン判」が大八つ判と呼ばれ、それから4寸×6寸のページが32面取れるので明治後半頃から大八つ判から四六判と呼ばれるようになったとされる。 Wikipedia


とのこと。

■B5判・A4判・AB判

 こちらは雑誌のサイズになります。あるいは薄い本。

『ドラゴンマガジン』や休刊が決まってしまった『電撃文庫MAGAZINE』がB5判ですね。コミック誌もこの大きさです。

 B5判は182mm×257mm

 A4判は写真集やファンブックなど、ビジュアルを大きく見せたい場合のサイズとなります。
 AB版は、幅がA判、高さがB判といったように、サイズが混ざっているものです。210mm×257mmとなると、正方形に近いかたちになりますね。


■まとめ

「文庫判」はおおよそA6判のこと。レーベルによって高さがことなる。

「新書判」は、教養系の叢書、小説のノベルス、少年・少女マンガを指す。中でも教養系の書籍群を「新書」と言う。

 少年・少女マンガのサイズは、正確には新書判よりも一回り大きく、「小B6判」と言う。

「四六判」はだいたいB6判。「単行本」と呼ばれるのはこのサイズ。
「菊判」はだいたいA5判。

 A5判は4コママンガやガイドブック、学術書など。

 B5判はコミック誌やファンブック、同人誌など。


■参考



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