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安田菜津紀さんの連載100回目、そして最終回!(No. 930)

考える人 メールマガジン
2021年9月23日号(No. 930)

中野翠×佐久間文子「ずっと不思議な人だった。」
『ツボちゃんの話 夫・坪内祐三』をめぐって

2020年1月に急逝した坪内祐三さん。25年という時間を共に過ごした妻・佐久間文子さんが、その想い出を綴った『ツボちゃんの話 夫・坪内祐三 』には、坪内さんが残した貴重な仕事から生活ぶり、激しい喜怒哀楽までが、使命感をもって記されています。

「やっぱり不思議な人だったね」と語るのは、コラムニストの中野翠さん。坪内さんとは30年来の友人。そのふたりが、稀有な評論家の“素顔”を探りながら、その想い出を語ります。

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きょうだいの手紙

「考える人」と私(30) 金寿煥

 以前このメルマガでも書いたように 、2002年の創刊当時から私は「考える人」のスタッフと、学芸・ノンフィクションの書籍編集者を兼任していました。いずれにしても“新米”です。特に後者においては、とにかく優れた書き手にアプローチして、原稿をお願いしなければ何も始まりません。そのためには、まずは既刊を読み漁り、誰にアプローチをするべきか、自分なりに判断していくことから始めました。
 中でも積極的に読んだのが、前述の井上章一さん や仏教学者の末木文美士さん、評論家の武田徹さんなどです。その著作を最新刊からさかのぼり、網羅的に読んでいきました。人生で一番本を読んだのはこの時期だったかもしれません。ちょうど小熊英二さんの『〈民主〉と〈愛国〉』が話題になっていた頃でもあります。
 その中のひとりに、日本政治思想史を専門とする原武史さんがいました。原さんはこの頃すでに『〈出雲〉という思想』『「民都」大阪対「帝都」東京』『大正天皇』『鉄道ひとつばなし』などを刊行、その視野と構えは広く、大変魅力的な書き手のひとりでした。
 ならば――と、思い切って手紙を書いて送り、お会いする機会をいただきました。2003年9月のことです。「ぜひ原稿を」とお願いをしたところ、すぐには難しいということでしたが、当時の勤め先である明治学院大学のゼミに参加しないかというお誘いをいただき、以降は毎週、港区の白金にあるキャンパスに向かいました。
 ゼミが終わると、毎回白金から品川の居酒屋に移動し、そこで飲み会がありました。原さんをはじめ、同じように参加していた他社の先輩編集者との交流は楽しく、”新米編集者”にとってはありがたい学習の場でもありました。
 ある日の帰途、原さんと品川駅で見た光景が、「駅そば対談」実現のきっかけとなりました。雑誌発売直後にその内容を紹介した一文があるので、それを引用したいと思います。

 きっかけは、昨年(註:2003)10月1日の品川駅新幹線開通。当日の品川駅に足を運んだ原氏は「予想通りまずいことになっていた。JRはホントにひどいことをやる」と、いつもは冷静沈着な氏が珍しく語気を荒げ、新幹線開通による品川駅の駅そば・駅弁環境の変化に対して立腹していたのです。氏が腹を立てたのは、つまりこういうことです。
 品川駅に昔からある駅そば・駅弁屋「常盤軒」が在来線ホームの上、つまり新幹線口から離れたところに追いやられ、新幹線口に近いところは、JR東日本あるいはJR東海の子会社であるNRE(日本レストランエンタプライズ)とJR東海パッセンジャーズの駅そば・駅弁屋に占められていたことを憂いていたのです。その後、この「悲劇」を氏は講談社『本』の連載(註:「鉄道ひとつばなし」)で書いたようですが、「品川駅に似たようなケースは他にもたくさんある。このままでは『駅そば』が危ない」と、まだまだ駅そばに関して言いたいことは山ほどあるようでした。

「原さん、そこまでおっしゃるならば『考える人』で駅そばについての対談をいたしましょう」とお願いして実現したのが、対談「失われた『駅そば』を求めて」だったのです。


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