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車を手に入れた僕の話

我が家に車がきました。
といっても姉と母のお下がりで、14年落ちで19万キロ走っていますが…家族で出かけられるのでとても重宝しています。

しかし僕には思うところがあります。
楽々と車に乗り、行きたいところにさっと行っていける状態に対して。
そりゃあ鹿児島県は車社会と言われており市内こそ車を持っていない若者が増えてきてはいますが、マイカーがないと自由な暮らしというのはなかなか望めません。
鹿児島県に住む自立生活者も多くの人が車を所有し、日常的に使用しています。

僕は自立生活14年目。
これまでの生活はとにかく歩いて歩いて歩きまくる、冬は灯油を買えずポリタンクを電動に担いでいたり。
遠方へはJRを利用し、過去10年間は毎日往復3時間かけて事務所へ通っていました。
それは簡単なことではなく、体力と時間を消耗する形でしたが、以下の2つの大きな理由が僕の体を動かしていました。

1つ目
前代表が言ってくれた言葉。

「良太がJRに乗ること、それ自体が大切な運動になっているんだよ」

この言葉は当時の僕に勇気を与え、毎日JRに乗れることの意義も考えさせてくれました。
その中で感じたことは、公共交通機関は、乗る時刻乗る車両というのが、乗客大体に決まっていて無論僕も同じ時刻同じ車両に乗り込むわけです。
そうすると周りも同じ顔ぶれ。

誰も僕をジロジロ見たりしません。
なぜでしょうか?


それは飽きているからです。


車椅子の人が乗っている…と興味を惹くわけではなく、いつもの人か、という感覚。
当たり前の光景になっているのですね。

国分ー鹿児島中央駅間の車内をインクルーシブにしました。

これは実はとても大切なことで、少なくとも僕が乗り続けた10年間その駅、その車両に乗り合わせた人たちは田舎のJRに車椅子使用者が乗っていても別段、気にも止めない人になっていると思うからです。

地方の当事者こそ積極的に公共交通機関を利用したほうが良い。

2つ目
理不尽さに気づく

毎日すんなりとJRに乗れていたわけではありません。
当初は最寄りの駅にて乗車位置を決められたり

「夕方は忙しいから早く帰ってこれませんか」
と言われたり良い記憶はあまりありません。

その都度話をして、訴えてを繰り返していました。

その後少しずつ改善し、後半は乗車30秒前に到着しても乗車介助をできる駅員さんが増えました。

上記のような対応を私だけではなく、他の車椅子使用者にできていたかは不明ですし、駅員が変わっても引き継がれるシステム作りをできなかったのは僕の力不足です。

しかしながら、日々使う人が「不便だ、改善してほしい」と要求することは現場で対応する人にも直接的な影響があり、急ぎの対応が求められます。それは人的な対応になってしまうことが多いかとは思いますが、訴え要求していくことは非常に大切なことです。

そして、多目的トイレや切符購入時の不便さ、駅員から受けた不接遇等々。
日々電車を利用することで見えてくることは多々あり、その全てを訴えたり改善できていたかというと別ですが、リアルな声を届け続けるという意味では一定の効果はありました。

上記1.2の理由から僕は実は車を持ちたくなかったのです。
理不尽さを感じてこそ、そこから生まれる怒りや悲しみを表出してこその当事者運動だと思っていたからです。

でも車を持ってしまった。

すごくすごく便利にはなったけれど、これでいいのだろうか。という気持ちが未だに晴れずにいます。
これから恐らく、車に乗らない生活に戻ることは利便性においてはないのだろうなと感じているし、他の当事者にそれを求めるのも違うなと感じています。

ではどうするか。
やはり日常的に公共交通機関を利用する環境を整える必要があります。
そんな理由をわざわざ作るのは変な話ですが、、まだまだ当事者が声を上げていかないと、特に地方のアクセシビリティに改善はみられませんので行動していきます。

例:事務所に来るときは週の半分は公共交通機関で 等

しかし、当事者運動も方法は一つではなく、タイトなスケジュールの中でたくさんの相談に乗ったり、資料を作ったりしなければならないため車を利用することも全く否定しません。
また遠方や過疎地の当事者に会いに行くには車は必須です。
現に僕は時間効率が上がったので、その他のことが体力を残しつついろいろできているなと実感しています。

こんな風に車一つとっても多くの葛藤がありました。
自分が10数年守り抜いてきたプライドなのかもしれません。

今夜は家族でくら寿司に行きます。
息子はあのガチャが好きで、あの画面を家族で眺める時間を僕も愛おしく思っています。
美味しいお寿司を安価で、車で行きさっと食べて帰宅する。

そんな贅沢の中に、僕がずっと抱えていること。

行きたいところに行けない人がいること。
自由な動きが取れない人がいること。

時折金縛りに合いそうになるほど、苦しくなるけれど。
全ては一足飛びにはいかないから。
地道に仲間を増やして取り組んでいこう。
車があるのならたくさんの人に会いにいこう。
自立生活を広めよう、伝えよう。

以上
車を手に入れた僕の気持ち

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