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会社は安易に10万円未満のPCを買うな【税務×ガジェット】

かねとこ山です。

現在、このnoteでは主にガジェットとか会計について取り上げようと思っているのですが、

「ガジェット×会計みたいなハイブリット記事書きてぇなぁ~」

と思いまして、なんだろなぁと考えてみたのですが、

真っ先に浮かんだのが、「会社の10万円未満PC問題」です。

これ、なにかといいますと、まず法人税法の規定について少し説明する必要があるのですが、

法人税法上、10万円未満の減価償却資産については少額減価償却資産として、取得した期の損金に全額算入することが可能になります。

これを適用することで、なにが出来るかといいますと、

なんか当期めっちゃ利益あがったけど現金持っていかれるの嫌やなぁ。せや! 経費処理できるモノたくさん買って課税所得減らすンゴ! そうすれば節税になるで!

といった具合に、経営者は期末において、資産の取得額を丸々経費にすることができます。

そうすることで課税所得を一気に減らし、納税額を減らすことが可能になるわけです。

ただ、この考えをPCに適用すると、少し問題があります。

最初に結論を言うと、

税務上有利な処理が独り歩きしすぎて、肝心の生産性が損なわれてね?

ということです。

下の画像はカカクコムに記載されたノートPCのうち、10万円以下という条件でフィルターをかけたものです。

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ここで、PCのスペック(機能)としてまず重要な要素になるのはメモリです。

たまにストレージと混合する人がいるのですが、ストレージというのは端末に保存できるデータの容量を指し、メモリは端末の作業領域のことを指します。

分かりやすく書斎を例にすると、ストレージは本棚の大きさで、メモリは机の大きさになります。

ストレージが大きければ多くの本(データ)を置けますし、机が広ければ色々な書類(アプリ)を同時に開くことが可能になります。

先程の画像に写っていたPCのメモリは大体8GBといったところですね。

これがどのくらいのスペックかといいますと、「まあwindowsを動かすなら最低限このくらいだよね」くらいの性能です。

※ちなみに僕は大学時代、4GBのノートPCを使っていたのですが、これは本当に使っててイライラするレベルなので、買わないほうが良いです(妥協できるなら大丈夫ですが……)。

ただこれは、8GBあれば最低限大丈夫という意味であって、仕事とかでゴリゴリ使うレベルならスペック不足感が否めません。

それでは次に、価格レンジを10万~15万に引き上げてみましょう。

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おっ、なんかメモリがさっきの倍になりましたね。あと処理速度を示した、CPU列にある「GHz」の数値も大きくなりました(GHzは大きければ大きいほど処理が早いです)。

ここで勘のいい人はあることに気づくかと思います。

あれ? なんかランキングが11位から始まってね? さっきはちゃんと1位から順番に並んでたやん」

僕もこれ、書きながら気づいて驚いたんですけど、別に並び順としては全くおかしくないんですよ。

どうやらこの「売れ筋」の列に表示される数字は、「フィルターを掛けた中の順位」ではなく、「ノートPC全体の順位」なんですね。

要するに、ランキング上位に位置するノートPCの大半は10万円以下なんですよ。

なんでこんなことが起こるかといいますと、さっきの法人税法の規定ですよね。

短期的な目線ですが、経営者側からすると、ちょっと性能のいいPCに十数万払うより、10万円未満のPCを購入して全額損金に落とし込むほうが魅力的に見えます。

ちなみに、これは巷で「10万円の壁」なんて言われたりもします。

んで、この最低限しか動かないスペックのPCを導入する企業が増えたせいで、日本全体の生産性が損なわれてるというのが、「会社の10万円未満PC問題」というやつです。

いや、例えばこれが「車」とかなら良いんですよ。

よく車を使った節税で、「4年落ちのベンツに乗る」みたいなのがあります。

普通自動車の法定耐用年数は6年なので、残存耐用年数は(6年-4年)+4年×20%=2.8年となり、端数は切捨てるので償却年数は2年です(計算規定はこちら)。

200%定率法を採用すれば償却率は1÷2年×200%=1となり、期首に取得すればその全額を1年で償却可能です。さっきのPCのように全額損金に算入することができ、結果的に節税になります。

ただ車って、正直移動さえ出来れば全部同じみたいなところありません? (すみません、僕免許持ってないんで、反論は受け付けます)

ただノートPCは別です。だってオフィスワーカーなら仕事の速さに直結するやん。

でもさっきの「10万円の壁」があるせいで、あと少し払えば大きくスペックアップ出来るPCを買わずに、低スペックPCを購入してしまう企業が後を絶たないわけです。

※ただこれはカカクコムをもとにした情報なので、もしかしたら法人向けに販売されているPCはもっと安いかもです。

一応、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例というのを適用すれば、一定の要件を満たすことで30万円未満まで一括償却出来ます。

でも個人的には、「特例とかケチなこと言わないで、常に一括償却出来てもええんちゃう?」と思ってしまいます。

Chromebookみたいな「ブラウザ特化型ノートPC」ならまだしも、windowsで10万円未満……満足に動かせるマシンなんてあるのでしょうか。


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