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粉雪舞う日、窓に灯る愛情表現(島根旅行)

僕はよくふらっと旅行に出かけるのですが、その思い出を一つ共有したいと思います。 これは、僕がある年の夏に、島根県に一人で行った時の話です。

特に目的を持たずに旅をすることが多いです。 見知らぬ土地でその場の思いつきで行動するのが結構楽しいんですよね。 島根県の松江に着いた僕は、その日たまたま花火大会をやっているという情報を聞きつけました。事前に調べていれば、それはあって当たり前になりタスクになりますが、事前に調べていなければ、それは出逢いになります。

日本海沿いであり、大きな湖もあるこの町での、ゆったりとした、大きな音だけども心は落ち着くような花火大会なのでしょう。 人が少なく静かな場所が好きな僕は、その祭りに行ってみることにしました。

電車で数駅先のその会場に着くと、ちょうど夕方時です。海沿いに沈む夕日と、付近に生え並んだ松の木が、 心を落ち着かせることができる、なんとも素敵な景色であり、今でも記憶に焼きついています。本当に来てよかったとそこで感じました。

花火までは時間がまだあったため、まばらな人の中を散策していると、とある広場に出ました。 ここで、僕の心の平穏が一旦、ぐるりとなります。

その広場では、DJブースでEDMミュージックをかき鳴らされ、酒を煽り踊る人、しまいには、シャボン玉を永遠に吹き出し続ける装置が膨大な数のシャボン玉を吹き出しているという、とんでもないパリピイベントが行われていたのです。

本当に同じ祭りだったのでしょうか。 それとも別の世界線の島根に来てしまったのでしょうか。あっちの世界線では、島根県はかなり『イケてる』県なのかもしれませんね。

しかし、広場を通らないと先には進めませんので、その広場を突っ切りました。 僕の体に当たる無数のシャボン玉は、儚くも消えていきます。 この空間から消えたいのは僕の方だったのに、ずるいです。

とてもドキドキしました。多くの人が言う「ひと夏のドキドキ」ってこれのことだったんですね。 そのイベントに出会い、心の平穏をぐるりとされた僕は、花火を待たずして電車に乗って宿に帰りました。 駅に着いたと同時くらいに花火が始まったみたいで、駅のホームでは打ち上がり始めた花火が見えました。全形の15%程度しか見えなかったです。とても綺麗でした。

しばらく待ったのちに僕は、宿に戻るためにまだ人の少ない電車に乗り込みました。 祭りの日なのになぜ人が少ないかというと、みんな花火を見ているからですね。くっそ〜。

二人がけの席に腰掛けた僕の二つ前の席には、日本人の女性と、おそらく海外の方と思われる男性のカップルが座っていました。僕から見ると、カップルの後頭部を見ているイメージです。 そのカップルが、ずっと頭を寄り添わせ、いかにも仲良さげな雰囲気です。心の中の孤独な部分に、激パリDJにスクラッチされた僕の心が、さらにすり減りそうになります。

そういうカップル、街中によくいますよね。良いか悪いかはさておき、そのような場面に出来わすと僕は、とある遊びを始めます。 それは、イヤホンをつけて、YouTubeで「カラオケ音源」を流して聴くわけです。 するとどうでしょう。目の前にいるカップルは、カラオケのイメージ映像に変わってしまうのです。カラオケのイメージ映像の中に、自らの手で閉じ込めることが可能なんです。

今回の電車の中でも、早速この遊びを始めました。 選曲は、レミオロメンの「粉雪」です。選曲は大切です。『いかにも感』に関わってきます。

「僕は君の全てなど知ってはいないだろう」
「それでも一億人から君を見つけたよ」

粉雪のカラオケ音源に合わせて、額を合わせて顔をくっつけあったり、顔を手で撫であったりと、かなり積極的です。(こういうカラオケのイメージ映像、あるなぁ)などと思いながら、彼らの愛情表現をしばらく眺めていました。

大サビに差し掛かる前、とある停車駅に電車は着きました。 ここでなんと、彼女の方が電車を降りるみたいです。 彼女は立ち上がり、駅のホームに向かい歩き出しました。

別れ惜んでいる彼氏。切なそうな表情の彼女。
(これから大サビに入る良いところなのに…)と残念がる僕。
しかし、駅のホームに降りた彼女に向けての彼氏の行動で、このイメージ映像は思わぬ盛り上がりを迎えます。

大サビ前の静かなメロディが流れている時に、彼氏は電車の窓に自分の息を吐き、曇った窓に指で「ハートマーク」を書き、彼女に微笑みました!

(おお!なんというベタベタな愛情表現!ドラマでしか見たことない!いや、ドラマでもギリ見たことない!というかドラマってあんまり見ない!) そう思っている矢先、カラオケ音源が大サビである「こなぁぁぁゆきぃぃぃ!!」という、一番の盛り上がり部分に入りました。なんたる偶然。二人の愛が織りなす奇跡。『奇跡の出逢いを果たした二人』とありますが、大概の場合はこちらの方が奇跡なのかもしれません。

みなさんもふらっと旅行に行ってみてはいかがでしょうか。そして、カラオケ音源を、このような遊びに使ってみてはいかがでしょうか。 思わぬ出逢いとドラマが待っているかもしれません。 根拠はないけど、本気で思ってるんです。

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