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#3 私の経験について(自分の感情に蓋をする)

#1私の経験について (幼少期に感じた寂しさ)からお読みください。


#3  私の経験について(自分の感情に蓋をする)

母が新興宗教にハマり、借金を作ったのはこの頃だった。

この時の母は、
力仕事を1日中したあと
家事全て
祖父母家に預けてるとは言え2人の子育て
その子供のうちの1人は、家族を罵倒し人格を否定し暴れまわる私だ。
母には、心身共に相当な負担がかかっていたと思う。

ある日、両親の喧嘩の声で目覚めた。

「いくら使ったんだ!!!!!!!!!!!!!」

「もうつかれたの!!!!もういやだ!!!!!」

「いいから答えろ!!!!!!!!!!!!!!」

父は怒り散らかし、母は泣き叫んでいた。

それでも、まだ小学生の幼い私には、
事の重大さがよくわかっていなかった。

またいつもの夫婦喧嘩でしょ・・・ぐらいに思っていた。

それから父はほとんど家に帰ってこなくなった。
週に何日か家に帰ってきては、
また怒鳴り声と母の泣き叫ぶ声が家中に響き渡った。

私も、生活の半分以上を祖父母家で過ごしていたため、
この時何が起こっていたのか詳しくは知らない。

それでも、いつもの家に、仏壇が置かれたり、
定期的に見たこともない機関紙が家に届いたり、
優しそうな知らないおばさんが頻繁に家に来たり、
集会場に一緒に行ったりしたときは、
幼い私でも、これが世間的にあまり良くないものであることは分かった。

それから、私の財布のお金が頻繁になくなるようになった。

始めは気のせいだと思った。

でも、気が付いたら財布のお金がなくなっていた。
母が私の財布からお金を盗むようになった。

私は、お金がなくなったことよりも、
大好きな母に、お金を盗られたことが悲しかった。

また・・・なくなってる・・・・
目は見開かれ、
スーっとした寒気が腰あたりから背骨をそって
頭のてっぺんまで昇ってくる。
手先に血がいかなくなったように手の感覚がなくなり
体の表面は冷たく凍るような感覚がするのに
胸の真ん中と目の裏だけ燃えるように熱い
怒りのような
悲しいような
罪悪感のような
何も感じていないような
そんな感覚がした。

それでも、私は、お金を盗られたことを
誰にも言わなかった。

私が父や祖父母にそのことを言えば、
また喧嘩になり、怒鳴り声と母の泣き叫ぶ声を聞きながら
眠れない夜を過ごすことになるだろう。

私は、悲しみ怒る父の姿も、
罪悪感に駆られ泣き叫ぶ
あるいは人が変わったかのように怒り狂う母の姿も、
見たくなかった。

そして、ある日、
私が中学校に通う制服を買うために
父が置いておいたお金が綺麗になくなった。

父にそれが見つかり、
「ここにあったお金どこにいった?」

「知らない。」

「盗っただろ!!!!!!!!!!」

「知らない!盗ってない!!!!!」

私の目の前でそれを否定する母を見て、
私は絶望した。

その場にいた全員が、母が盗んだと分かっていた。
どうにも言い逃れできない状況でも、
母は最期まで否定を続けた。

その母の姿を見て、
あぁ・・・この人はもう普通の人じゃなくなってしまったんだ。
そう思った。

いつのことだったか、
暖かい日差しが家に入り込んでいた日曜日に
父と2人きりになった。

父は、ソファーにうなだれ、俯きながら言った。

「お母さんが借金を作っていたんだ。
 その借金を返さなくちゃいけないから、
 これからいろいろ我慢をさせるかもしれない。」

その時の私は、心臓を鷲掴みされたような衝撃を受けた。
無理やり「へーあっそ」と興味なさげな返事をして、何とかその場を乗り切った。


私は、父のことも母のことも大好きだった。
苦しみから逃れるため新興宗教にお金を使ってしまう母
借金を返すことと家計のやりくりに必死な父

2人とも苦しんでいた。

2人が苦しんでいるのは
私のせいだと思った。

私が怠けてばかりいたから
私が好き勝手していたから
私が家でいい子にしていなかったから

私が家族を壊したんだ

私は、自分のことを責め、
罪悪感から、だんだん自分の感情に蓋をするようになっていった。

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