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【特別連載 第4回】小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)・感染対策・ワクチン篇

前回(第3回)はこちら↓

監 修:笠井正志(兵庫県立こども病院 感染症内科 部長)
著 者:伊藤健太(あいち小児保健医療総合センター 総合診療科 医長)

・本記事は書籍『小児感染症のトリセツREMAKE』(監修:笠井正志,著:伊藤健太)の補訂版として公開します。小児感染症全般についてさらに深く理解したい諸氏は,本編とあわせてご参照ください

・本補訂版は感染症のなかでもとりわけ流動性の高い内容を扱っています。今後の状況の変化やエビデンスの蓄積によって内容に変更が生じる可能性があり,それに伴い修正・加筆が行われる場合があります

・本記事は「小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の後篇です。前篇「診断・治療篇」はコチラです

・参考文献は文中にハイパーリンク(下線部分)にて示します

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【第4回 COVID-19によって子どものスクリーンタイムはどう変化したか】

 さて,前回は愚痴回として何も情報の付与なく,「小児,割を食ってんじゃない??」というCOVID-19流行下でずっと思っていたことをただただ吐露した。

 そういう「お前の言いたいこと」みたいな個人の考えや思いはTwitterとかいろんな場所でたくさん出ており,『伊藤,お前もか……』とみなさまの中のカエサルが言ったとか言わなかったとか。

 ということで,もう少し読者の皆様に有用な情報を! というのが今回からのシリーズである。

 題して「COVID-19流行の社会的観点から来る子どもへの影響!」である。今回は「巣籠生活で増えるスクリーンタイム,そして……」を考えてみたい。

 日本でも2020年3月から年度をまたいで休校措置が取られ,今でも学級閉鎖,学校閉鎖,休園,リモート学習,ハイブリッド学習などが実施されている。
 また,公園,スポーツ施設,レクリエーション施設の閉鎖など,子どもたちが外出せず家の中に過ごすことで,できる限り流行抑制につなげようとする動きはある。
 これは日本に限ったことではなく,世界ではそれこそロックダウンなど,より強い措置が取られていた。

 そんな子どもの巣籠生活ではスクリーンタイムが増えるのか,を真面目に検討してみよう。

 ちなみに,スクリーンタイムとは,英語版Wikipediaによると

スマートフォン,パソコン,テレビ,ゲーム機などの画面付き機器を使用する時間のこと

である。

 子どもとスクリーンタイムってそれだけで本当にいろいろ議論があるんで,その良し悪しなど激ムズ案件であるので,本項ではそこには触れない。(乳児と学童,思春期で意味することも大きく変わるので)

 一応米国小児科学会が掲げる推奨だけ以下に簡単にまとめる。

・18ヶ月未満には,ビデオチャット以外のスクリーンメディアの使用は避ける。
・18カ月から24カ月がデジタルメディアを導入する場合,保護者は質の高い番組を選び,子どもと一緒に見て,見ているものを理解できるようにする。
・2歳から5歳の場合,1日1時間までにして,質の高い番組を見るようにする。保護者は子どもと一緒にメディアを視聴し,子どもが見ているものを理解し,自分の周りの世界に応用できるようにする。
・6歳以上には,メディアの使用時間や種類を一貫して制限し,十分な睡眠や身体活動など健康に不可欠な行動の代わりにメディアが使われないようにする。
・夕食やドライブなど一緒にメディアが使えない時間や,寝室など家庭内でメディアが使えない場所を決める。
・オンラインやオフラインで他人に敬意をもって対応するなど,オンラインでの市民生活や安全について継続的にコミュニケーションをとる。

 質の高い番組(highly-quality program)ってなんやねん! とか思うが。(筆者はガチっとファミコン世代であり,ファミコンやると馬鹿になるとか,すぐ死んだって言うとか,ゲームのし過ぎはいかん!! とかいろいろ言われまくったわけだが,それって漫画とか読書ならいいの?? とかモヤッとしないわけではないのだが,一般論としてこの推奨はまあそうだよなと思う)

 スクリーンタイムについてはこれくらいにして,本項ではCOVID-19流行でどれくらい子どもたちのスクリーンタイムが増えているのか,を見てみよう。

 世界全国津々浦々,老若男女問わず多くの研究がある。

・スウェーデンの横断的オンライン調査⇒16-39歳でゲーム増えた。
・イギリス,就学前小児ロックダウン下の生活変化,保護者への質的評価:スクリーンタイム増加
・韓国,スクリーンタイム増加(1.7時間),オンライン交流増加(0.95時間)
・カナダ,学童期約1300人,母申告のスクリーニングタイム5歳,8歳9.5歳はそれぞれ,10.6時間/週,11.7時間/週,23.6時間/週であった。母体ストレスや経済的影響,子どもの年齢が大きいことが関連。
・米国,1000人6-17歳(平均10歳),平均4.4時間(2.5SD)であった。
・イラン,510人12-16歳,70%がスクリーンタイム≧2時間
・日本,コロナ-こども調査1回目報告,学童期の63%がスクリーンタイム≥2時間,幼児期8%,学童期15%は≥6時間!
・米国など6か国のアンケート調査,2500人の3-7歳,COVID-19流行以前に比べ平均50分以上(娯楽用40分,教育アプリ20分)増加した

 みんな調べすぎやろ……スクリーンタイム。スクリーンタイムのスクリーニングタイム,めちゃかかるやん…ハァハァ。

 だれかシステマティックレビューしてくれないんかな……?



(島田紳助風)お母さん…見つかりましたよ…。



BMJ Global Healthという雑誌にありましたよ…。



 あるんかーい!

 いやーやっぱり自分が考えつくようなことは世界のみなさんやってますよね。

COVID-19流行前後の様々な変化を検討したシステマティックレビュー:31文献すべてでスクリーンタイム増加。

 いやぁ中途半端に自分でやらなくてよかった…。

 細かい数字などをまとめた表がありましたので,そちらを日本語にして,一部改訂したものがこ・れ・だ!

(編注:表が巨大すぎるため上記からダウンロードください……)

 まあ,みなさん思っていた通りだと思うが,増えてますね,スクリーンタイム。

 今日言いたいことはこれだけ!

『COVID-19流行によって子どものスクリーンタイムは増える!』

である。

 次回からはじゃあそれってどんな影響があんの?? という点についてまとめてみたい。

 細かくしてかないと,続かないんで,すんません……。

次回は2月11日(金)に更新予定です
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著者紹介

監 修 笠井正志(かさい・まさし)
兵庫県立こども病院 感染症内科 部長

著 者 伊藤健太(いとう・けんた)
あいち小児保健医療総合センター 総合診療科 医長

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【 書誌情報 】

・監 修:笠井 正志 著 者:伊藤 健太
・定 価 :5,940円(5,400円+税)
・B6変判・552頁
・ISBN 978-4-307-17073-4
・発行日:2019年4年24日
・発行所:金原出版

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