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KINCHOの広告から感じたこと

"もうどう広告したらいいのかわからないので。"

そんな広告文句で最近バスりSNSでも話題になった新聞広告がある。殺虫スプレーなどで有名な企業、KINCHO(大日本除虫菊)の広告である。今回は、コロナ禍で元気がなくなっていた広告業界に再び光を灯したこの広告について個人的に考察していこうと思う。

バズりを生んだ新聞広告

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新型コロナウイルスの影響で国内の経済にも、一般消費にも大きな影響を及ぼしていた5月末、全国の主要新聞社に出稿されたのがこの広告だった。公になるとすぐに話題となり、SNS上でも多くの共感と興味を作り上げた。目を引くコピーでまず人々の興味をバッチリと掴み、その後ウェブサイトへの誘導をかける。そして、その先のコンテンツも見てて飽きない、むしろもっと読みたくなるような物が用意されていた。

コロナの影響で今後先行きが不透明な状況に対して、この広告ではKINCHO頭文字から以下のような計6つのパターンを用意されていた。

"K-type" 緊急事態・外出自粛などが、まだ継続している場合。

"I-type" いまだ学校などが完全に再開されていない場合。

"N-type" なにを言ってもクレーム、炎上、袋叩き。広告なんてやっている場合か!の場合。

"C-type" 近いうちに収束するぞ!と先行きの見通しが立ってきた場合。

"H-type" 晴れてコロナに打ち勝ち、飲食店にもお客さんが戻り始めている場合。

"O-type" おめでとう!コロナに打ち勝った!の場合。

皆さんにもリンク先に飛び見てもらいたいと思うので、コンテンツに関しては深く触れないが、K→Oへ行くにつれて状況も回復していくと言う流れの作り方は流石の一言。別にその状況とは関係なしに、コピーで興味を持たれた方はとりあえず一通り全てのパターンを見てみようと思うのではないだろうか。

コピーに込められた正直な気持ち

"もうどう広告したらいいのかわからないので"

そんなコピーを見たら、興味を持たないはずがない。しかしのこのコピーには、KINCHOさんの正直な気持ちが見て取れる。そして、誰もが無言に共感してしまう。KINCHOさんの広告担当者はこんな広告を出していいのかと言う葛藤に悩まされたそうだが、そんな葛藤も本当に真剣に取り組んだ証拠なのではないだろうか。コピーは出来の良し悪しでその先見続けてもらえるかを決める大事な導入部分であるが、良し悪しを無視して"本当の気持ち"を前面に出した結果が多くの人の心に響き、共感を生んだ。斬新と言えばそれまでだが、新聞広告でありながらもSNSでの拡散・自社ウェブサイトへの誘導も視野に入れていたらしく、正直でありながらも綿密に計算されたコピーと言えるだろう。

対象者は全ての人

6パターンのコンテンツを見ると、より幅広い層をターゲットにしているのが見て取れる。

"K-type"は英語外国人の写真が散りばめられたグローバルなレイアウト
"I-type"は小学生を対象としたeラーニングならぬ、gラーニング
"N-type"は自社製品のリピーター向けの自虐PR
"C-type"は家庭夫婦
"H-type"は飲食業界
"O-type"はオチを期待する5パターンまで見た人全て

このように、対象者を幅広く設定することによって、なぜか当事者ではなくても、いつの間にかより身近な問題だった事を気づかされてしまう。コロナで停滞する経済活動ではあるが、時は止まらず気温が上昇するにつれて夏が近づき、ゴキブリも我々の生活にアプローチしてくるのを知らせるかのように。そして、誰もがゴキブリを嫌い、KINCHOの商品が生活必需品と言うことを思い出させてくれる。

見ていくと、その面白さに次を期待してしまう。実際に興味深いのだが、最後にはオチにも期待してしまう。

徹底された自社分析と柔軟性

今回、バズったことで多くの人はこれだけが割とユニークな広告だと思う人もいるだろう。しかし、実際はテレビCMにおいても面白いものを出している。これまで沢口靖子や山瀬まみが強烈な姿で登場し、毎回インパクトを残してきた。最近では、長澤まさみの関西弁CMも話題となっている。このように、割と昔からインパクトが強いCMを出してきたのがKINCHOの広告戦略。

それができるのは、徹底された自社分析がなされているからだと考えられる。強み、生活への貢献度、歴史、業界でのポジショニングなど、あらゆる側面で分析が徹底的になされている。今までに培ってきたKINCHOブランドが今回のような広告を可能としたのだろう。また、このような斬新でユニークな広告を作るクリエイターのアイデアを受け入れる柔軟な企業体制があってこそだと感じる。面白いアイデアをクリエイター達が提案したとしても、企業側にそれを実行する力と勇気がない場合はどうしてもコンサバな出来となってしまうのだ。

まとめ

私は今回の広告のように、見てて面白いと思わせるアイデアそのものが非常に好きで、自分なりにまとめてみた。逆境にも負けずに、新しい形で広告を打ち出すことで、人々に共感を生み話題を作りそして企業の名前と生活必需品を宣伝出来ている今回の例はとても参考となった。斬新なアイデアが形になる体制も重要な要素だと思うし、もっともっと面白いアイデアを受け入れることができる社会になればと強く願う。




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