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百人一首「かるた会」論③~「しつけ」として

 小中学校では、藤原定家の小倉百人一首を使ったかるた会がよく行われる。

 指導者がついてのかるた練習は、期間全体でだいたい3~4時間をめどにする。他にすることもたくさんあるので、せいぜいそのくらいの時間しかとれない。中学3年生の受験生では、正月の頃など、かるたどころではない。中学1・2年で「かるた」は完結できるように計画する。そこで興味を持てば、個人的にかるたで遊べばいい。そこから競技かるたへ進むのも個人の自由。

 基礎を教えるのが義務教育だと思う。それ以上の学習は、インターネットも発達している現在、個人で十分できる。


 かるたは、古典に親しむだけでなく、集中することによって「しつけ」も教えられるよい機会だろう。
 「しつけ」と言っても、「かるたのルール」を徹底すること。それがしつけになる。

 かるたをやってる最中に教室を飛び出す子は「かるたのルール」以前の問題。「生徒指導」の問題になる。でも、そんな生徒が出ないようにルールを徹底する。


 練習、本番ともに、子どもたちには取り札だけを渡す。絵札は箱から抜いておき、渡さない。絵札を渡すとすぐに坊主めくりをしてしまう。目的が違ってしまう。絵札がなくても、分厚い札を使ってピラミッドを作る子もいる。これも厳禁。他の遊びをする子がいたら、「かるたはやめ!」と言う。すると子どもたちの方から注意の声があがる。「ちゃんとやろうよ」。こっちが注意しなくてもよい。みんなかるたが好きなのだ。かるたがしたい。だから注意する。
 わざわざ時間を取って、かるたをするからには、教科書で学ぶ以上のものを教えなければならない。


 枚数確認をする
 何人かいる集団なら、班を決める。班を決めたら班長を決める。班長に直接かるたとチェックカードを渡す。責任を持ってするように指示。カードには班員の名前を書き、取った枚数を記入する。始める前に枚数確認。10枚、あるいは20枚の山を作らせる。これも徹底。総枚数を記入する。100枚なかったら99枚とか書く。予備のかるたと交換することもあり。

 かるたが終わった時に総枚数を記入する。ここがポイント。
 100枚あればOKだが、枚数が足りなかったら、見つかるまでさがす。隣の班へかるたが飛んでいるかもわからないので(と全体に言って)全員が静かに待つ。枚数の足りない班が100枚見つけるまで待つ。待たせる。休み時間もなくして数える。次の時間が始まるぎりぎりまで確認させる。
 1回そういう体験をすると、「きちんと確認しなければならない」ということが身をもってわかる。これが「しつけ」。取ったらポケットに入れてしまう子もいる。「みんなで」確認しなければならないと思わせる。
 2回戦以降、最初の枚数チェックで数が足りない場合は、その直前の時間に使用した団体の、その箱を使った班の班長をさがしに行く(チェックカードで班を確認)。そして、「みんなの」前で班長を指導する。班員のポケット点検もする。そこまで徹底して「しつけ」をする。


 取るときは、「はい!」と言って取る。「はい」と言わない場合は没収すると言って、「はい」と言わせる。一人で黙ってさっと取って、他の子が、まだ取られていないと思ってさがしているのに、知らん顔している子もいる。一人遊びじゃない。「みんなで」していることの確認のためにも「はい」と言わせる。



 最低限のレベルとして、「むすめふさほせ」の一字札は覚えさせる。

「む」
村雨の露もまだひぬまきの葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ

「す」
住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ

「め」
めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かな

「ふ」
吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風を嵐といふらむ

「さ」
寂しさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ

「ほ」
ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる

「せ」
瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ

 藤原定家「小倉百人一首」を使ったかるた、カルタ、歌留多、骨牌の子どもたちへの指導法。3/4。


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