見出し画像

AIに負けない国語教育を~「AIvs.教科書が読めない子どもたち」から

 「AIが神になる?」「AIが人類を滅ぼす?」「シンギュラリティ(AIが人類を超えるとき)が到来する?」というセンセーショナルな言葉。AIとは関係なさそうな「教科書が読めない子どもたち」という言葉。「人間が勝つために必要なこと」と銘打って数学者でもある新井紀子のこの本が出版されたのは2018年2月。国語力のない「教科書が読めない子どもたち」に対する警鐘を鳴らしており、マスコミにも多く取り上げられたが、2022年も終わろうとする今、教育界は変わっていったのだろうか。

 最近のニュースを見ると、コロナ禍の影響なのか、令和3年度の体力・運動能力調査で、小中学生の運動能力が低下していることがわかった。


 新型コロナが流行しただけで人間の心身に大きな影響がある。特に小中学生は環境の影響を受けやすい。そんな年代だからこそ、心身を育てる教育の内容が大切になる。体力が低下したのなら運動すればよい。

 2019年開始のGIGAスクール構想で、小中学生は一人一台のタブレットを持つようになった。コロナ禍にはタブレットを使ったリモート授業ができる。タブレットを活用できる。そして時間が経った今、GIGAスクールはどうなったのか。進歩的な取り組みをしている学校や自治体もあるが、ほとんどの子どもにとっては、学校へ持って行く荷物にタブレットが増えただけだ。タブレットが活用されていない。ただカバンが重くなっただけ。宝の持ち腐れとなっている。

 あれだけ「機械」に多くのお金を使っているのに効果が見えない。お金の使い方を間違えている。
 教育に多くの問題が残っている今だからこそ、もう一度読み返してほしい本が「AIvs.教科書が読めない子どもたち」である。
 高価な「機械」を与えるだけでなく、問題意識を持つ「人間」を多く作らなければ教育は崩壊する。教育を支えているのは企業が与える「機械」ではない。安い給料のブラック職場で、保護者やマスコミからボロクソ言われても、「子どもたちのために」とがんばっている教師だ。「人間」が「人間」をつくっていく。その教師がまちがった教育をするのは日本の損失。だからこそ何を教えるべきかを今考えていきたい。


 この本の中には、「東ロボくん」というAIの話が出てくる。人工知能に東大入試を解かせるプロジェクトだ。東大にはまだ合格しないけれども、有名私大には合格するレベルに達している。

 「東ロボくん」と並行して日本人の読解力調査もしている。そこで日本の中高校生の多くは、「中学校の教科書の文章を正確に理解できない」ということがわかった。
 日本の教育は、漢字や英単語、歴史の年表や計算力を教え込んできた。それらは人間がどうあがいてもAIには勝てない内容だ。「東ロボくん」が有名大学に入学できる内容でもある。そんな教育ばかりしてきた。一生懸命英語学習をしても、AI搭載の翻訳機があれば人間の出る幕はない。
 時代にあわない教育を進めている。将来を見すえた教育ではない。

 それではAIを使いこなすために人間に必要なものは何なのか。
 筆者はAIにはできない文章読解力をつける教育の必要性を説く。そこまでの流れが推理小説を読むように読者に訴えかけてくる。
 筆者は続巻で、読解力向上の方法を述べている。


 読解力向上にはいろいろな方法があるだろう。詩歌を読む、詩歌を自分で詠むという方法もある。筆者の方法が全てではない。機械でも読める説明文中心の授業が中心となり、文学的文章を読まなくなったからこそ、それぞれの教育者が教育現場で新しい学習を実践し、その内容や方法を報告し共有することが大切だろう。家庭においては親が意識改革をして子どもの本当の教育を考えなくてはならないだろう。覚えるだけの計算力や英語力ではAIには勝てない。
 国語教育が日本の未来をつくる。


 学校教育においても家庭の子育てにおいても、今一度「AIvs.教科書が読めない子どもたち」を手に取り、教育に対する問題意識を持って未来を切り開いていきたい。


 

この記事が参加している募集

読書感想文

国語がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?