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グミと鬼太郎、見えない世界の扉が開く、ゲゲゲ

 道端に白いグミの花が咲いている。誰も気づかないで咲いている。

 グミは、春に花が咲くものと、秋に花が咲くものとがある。日本には、ナツグミ、アキグミなど何種類かのものがある。赤く熟れた実は食用になるが、あんまりおいしくない。白い花は、花と言うより葉っぱのようで全然目立たず、注意していなければ気がつかない花だ。道端に咲いていても気づかない。花が散り、実ができていても気づかない。

グミ3




 「見えない世界の扉が開く」は、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」のナレーションの言葉だ。日曜日のアニメ、今はポケモンを放映しているが、その前に放送していた。そばにいても見えない世界がある。

 鬼太郎は、幽霊の両親が現代社会に生きていけず死に、埋められた墓場から這い出てきたおどろおどろしい妖怪だ。妊娠していた母親の腹から出てくる。死んだ包帯だらけの父親の目玉だけが、息子のことを思い命を得て動き出す。のんびりした茶わん風呂に入っている目玉おやじは、実はそんなおどろおどろしい妖怪なのだ。「墓場鬼太郎」というタイトルがぴったりする。それが本来の鬼太郎なのだ。

クリックしてからYouTubeで見られます。

 
 作者の水木しげるは、戦争で片腕を失っている。
 水木しげるは、本名、武良(むら)茂。神戸の水木通で水木荘の大家をしていた。「水木さん、水木さん」と呼ばれたのでペンネームを水木しげるにしたそうだ。
 神戸にアンパンマンストリートはあるけど、水木ストリートはない。水木が育った境港には水木しげるロードがある。神戸も、人通りの少ない水木通あたりに鬼太郎像でもおけばいいのに。フォトスポットになる。裸の彫像はいたるところにある神戸だが、鬼太郎にあやかってもいいだろう。野外の裸の像には批判もあるが、かわいらしいキャラになった鬼太郎に批判はこないだろう。神戸にも山や海があり、昔話もけっこうある。新しい町だけでなく、古い町もあるのだ。新しい町づくりに、そういう伝統を生かせていない。

水木しげる&武良布枝_20210306014108

 水木しげる夫婦像


 おどろおどろしい鬼太郎だが、それがアニメになるとかわいらしい正義の味方になってしまう。猫娘がメインのヒロインになってしまう。そんな作品が、第6期のアニメでは妖怪らしさも出してきておもしろかった。回によっては戦闘ゲームみたいなのもあるけど、古い妖怪話のような回もある。
 第6期のナレーションが「見えない世界の扉が開く」。見えない妖怪の世界があると言っているが、見えないのではなく、見ようとしないものが世の中にはたくさんある。


 グミの木にしても、小さな木々が生えている中によくある。よくあるけどそこにあることに気づかない。少し白っぽい葉を見ても気づかない。実が赤く色づいても、白っぽい赤だ。鮮やかな赤ではない。だから気づかない。
 それでも、いろんな場所にグミの木があるということは、小鳥がグミの実を食べ、フンの中に種を入れて、あらゆる場所にまき散らしているのだろう。いろんな場所にグミの木がある。人間が、人間にとって役に立たないグミの木を植えたのではない。小鳥が種を運んでいた。小鳥は、小さな木々の間で目立たないグミの実を見つけては食べているのだろう。


 鳥にしても、カラスやスズメ、ハトはいっぱいいるけど、他の小鳥は注意して見なければ発見できない。小鳥の動きさえも、我々には見えない世界になっている。
 神戸にある森林植物園のチラシには、メジロ、ホオジロ、シジュウカラ、コゲラ、アオゲラ、ツグミ、シロハラ、ジョウビタキ、ルリビタキなど、たくさんの鳥が見られると書いてある。見られるはずなのに見た記憶がない。そこにいるのだけれど、見ようとしなければ見えない。バードウオッチングをしている人は、見えない世界を見ているのだろうか。


 食用にするグミは、ビックリグミという種類がある。実が大きく、色も鮮やかな赤になる。このグミはおいしい。

 人間は、自分に都合のいいものは大切にする。自分に関係ないと思うものは見ないようにする。ビックリグミ意外のたくさんの種類のグミが、今もどこかで実をつけている。

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