マガジンのカバー画像

【ノベルゲームシナリオ制作】エアリアルソニックライダーズ

35
大学生の時、コミケで出したいと考案してから、10年間完成していないノベルゲームのシナリオをnote上でオープン制作していきます。公開したシナリオをベースに、感想や考察などを交えな…
運営しているクリエイター

2020年6月の記事一覧

chapter5-6:夏祭りの夜に

chapter5-6:夏祭りの夜に

晴天の下、校庭脇の花壇に植えられた黄色のヒマワリがまぶしい。ミンミンゼミの声に、ツクツクボウシも紛れ込んできた8月も中旬。夏休みも残すところ半月といった所だった。ヴィーナスエースの決勝戦の観戦を終えて、改めてその距離を感じたオレ達エアリアルソニック部は、各々が課題を模索しながらその実力を上げるべく頑張っていた。同時に絵美里を中心に、新しい部員の募集を動画などを通じて呼びかけるものの、なかなか学内の

もっとみる
chpater5-5:ツバサとオトハ

chpater5-5:ツバサとオトハ

――人混みが凄くて、サーキットから出るだけで2時間近くかかった。

その間、少しのやりとりはあったけど、メンバー間の言葉数は少なかった。各々に思うところがあったのだろう。
明日は自由時間なので各々好きに観光してもらって、午後には東京駅から鎌倉方面へ帰ろうという話だけは絵美里がしっかりとロビーで伝える。それらを聴き終えると、オレは無言で部屋に戻った。
ルームクリーニングが終えてあったベット似てるに飛

もっとみる
chpater5-4:遥か遠く憧れの舞台

chpater5-4:遥か遠く憧れの舞台

このホテルの屋上にバーベキュースペースがあるという事で、夕食はみんなで肉を囲む運びとなった。
「あー! 先輩それウチが育ててた肉や!」
「え、うん。ごめん。美味しかったよ」
「ふざけんなこの!」
おそらく日中一番体を動かしたはずの2人が、ここでも一番暴れまわっているのは流石としか言いようがない。その様子をカメが生配信で動画撮影している。あれじゃあカメは肉が食えないかもしれないので、後で別の皿に取り

もっとみる
chapter5-3:エアリアルソニックパーク

chapter5-3:エアリアルソニックパーク

ーー夏休みになった。

といっても補習などもあり、午前中は学校に行かなきゃ行けない場合も結構多い。そういう意味では夏休みらしい夏休みってどこだろうという感じだ。そんな補習が終わり、午後になれば自由な時間となるので自然と部室に集まってくる流れ。ちなみに補習など一切受けていないらしい輝夜先輩はとりあえずバイトに勤しんでいるらしく不在で、また補習だけでなくテストで色々問題のあった真心は当然まだここには来

もっとみる
chapter5-2: 夏休みの合宿へ

chapter5-2: 夏休みの合宿へ

期末試験の喧騒もどこへやら。気がつけば夏休みが目の前に迫ってきていた。テストが終わった学校はどこか長期休みへの期待に浮き足立っているようだった。
エアリアルソニック部も色々と問題はありつつも(主に真心の追試絡みだが)なんとか無事、夏休みへと突入できそうな様相でとりあえず一安心。午前中だけの短縮授業を終えて、オレは輝夜先輩と2人で湘南新宿ラインの電車に揺られていた。先輩は車窓を眺めながら、抑えきれな

もっとみる
chapter5-1:夢の世界の外側で

chapter5-1:夢の世界の外側で

――私は両足の自由を失った。

そんな私に自由をくれたのは、重力に逆らって飛ぶ不思議な椅子。自由に飛び回る不思議な椅子。
それは私を色んな場所に連れて行ってくれる、大切な相棒。

どうして私に自由を与えてくれるのか。
それが知りたいくて私は勉強した。

その先で出会ったのはどこまでも自由に空を飛び回る女の子の姿だった。

私はその姿に釘付けになった。
それは夢の世界、私はその世界の少女に、その世界

もっとみる
chapter4-6: 最強 VS 最速(第4章ラスト)

chapter4-6: 最強 VS 最速(第4章ラスト)

――冷静に考えて凄い状況だ。

グラウンドに展開されたフィールドを挟んで、向こう側には現女王チームがいる。しかもライダーは控えではなくレギュラー2名。担当技術も正規のメインオペレーター。練習試合でこんなメンツと対峙する機会なんて、他のほとんどのチームにはないだろう。正直こういう風な形で、乙羽に頼りたくない気持ちもどこかにはあった。だけどそれ以上に、今回は絵美里を泣かせた生徒会が許せなかった。現況の

もっとみる
chapter4-5: 前代未聞の練習試合

chapter4-5: 前代未聞の練習試合

――嫌な予感はあった。

だけどなんとなく思い過ごしなような気がして、すぐにそれを口にしなかったのは、オレの落ち度だと思う。日々の練習にも気合が入り、部活の様子を気にしてくれる学内の生徒たちの姿も増えてきた。新聞部のおかげで練習試合の認知度はとても高く、もしかするとこれを機に部員が増えてくれれば、なんて期待もしていた。
そうしてやってきた練習試合前日、先日アキバまで見に行ったフレームが郵送されてき

もっとみる
chpater4-4:生徒会の影

chpater4-4:生徒会の影

――チリン。

涼しげな鈴の音が聞こえて、オレがベランダの方を振り返る。夜闇を背に、いつものように輝夜先輩がそこに立っていた。
オレはベランダの鍵を開ける。
「お疲れ様!」
そういいながら入ってくる先輩に対してもう何か苦言を呈する事もなくなっていた。あまりにも回数が多いので。もう感覚がマヒしてしまっているのかもしれない。
「今日もバイト先でもらったお惣菜、色々あるけど神谷野君も一緒に食べる?」

もっとみる
chapter4-3:時期外れの対外試合

chapter4-3:時期外れの対外試合

絵美里にその手紙が届いたのは、1年の五十鈴が入部した翌日だった。ラブレター、であればある意味良かったのだが、その手紙の差し出し主は子本――生徒会からの出頭命令だった。全員で行く事ない、1人で行くというので今日は来ている姫野先輩と五十鈴、オレに真心は部室で待機していた。五十鈴は色々と先輩に聞きたい話があるらしく、また先輩自身もエースヲタクという事もあり、部室の一角で勝手に盛り上がっている。そんな2人

もっとみる
chapter4-2:生徒会とラブレター

chapter4-2:生徒会とラブレター

時間を合わせるのではなく、通学の途中でたまたま絵美里と合流したのは転校して以来、初めてだった。昨日は先輩も用事があり、図書委員などの雑務があったらしく、結局真心と2人で勉強だけやって終わった。エアリアルソニック部の活動としては少しいびつだけど。
「それで、真心は大丈夫そうなの?」
「どうかな。オレが教えてどうにかなるのか分かんないけど」
「何にしても再追試とかだけは止めてよね、練習に全力出してもら

もっとみる
chapter4-1:変わり始めた朝

chapter4-1:変わり始めた朝

彼と彼女の間にはいつも沢山の人が集まっていた。
私の大切な友達で幼馴染は、いつだって私から少し遠くを歩いている。置いていかれても仕方なかった。私には何もなくて、私じゃ何の役にも立ちはしない。
2人はいつも輝いて見えた。学校の朝礼では全校生徒の前で表彰され、ネットや雑誌でも2人の顔を見かける事が多々ある。そこに私はいなかった。結構前から一緒にいたはずなんだけど、私はどこにもいないんだ。そうして気が付

もっとみる
chapter3-5:早朝のバトルフィールド(チャプター3ラスト)

chapter3-5:早朝のバトルフィールド(チャプター3ラスト)

――こんなにも体力を消耗したのは本当に久しぶりだった。

この2日間、授業の時間を除いてほとんどの時間をプログラミングと機体のハード調整にあてた。学校の規約に反する事はしないという約束で、部室に寝泊まりこそしていないが、家でもリモートでのプログラミングやシミュレーションなどの調整を延々繰り返しての3日目の朝。閉じたカーテンの隙間から光がぼんやりとこぼれている。時刻は朝の6時を少し回ったところ、なん

もっとみる
chapter3-4:それぞれの夢が集う場所

chapter3-4:それぞれの夢が集う場所

「イテテテ……」
先輩はオレのベッドの上でクルクルと回りながら苦痛を訴える。
「だから、胴着をちゃんと着てやらないからそういう事になるんです」
「そりゃそうだけどさー……ッタァ、もう! あんなヤマカンみたいな反応は反則だよ!」
タンクトップにショートパンツというラフな格好、だがその腹部の隙間からみえる肌には痛々しく赤く腫れた部位が見て取れた。今日の攻防の激しさが伺われる。
「あ、なによ、なんで私の

もっとみる