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論文 (卒論・修論)、ケーススタディの書き方

ゼミで理論や概念を用いた分析ができるようになるため、文章力を上げるため、論理的思考力を高めるため等、いろいろな思いを込めて論文やケーススタディを書くことを課題にしています。ここでは、ざっくりと書く手順や流れをまとめます。詳細、不明な点については直接相談、質問してください。卒論や修論の書き方がわからない学生も参考にしてください。(分野や先生によって書き方も違うので、指導の先生ともちゃんと相談して)

ケーススタディ、論文を書く流れは以下の4つにまとめられます。


1.問題意識 (仮) の設定

何を調査したいのかをまず考えましょう。それを一言でまとめられるようになれば問題意識の設定は終わりです。日常の「なぜ」という疑問について調べましょう。たとえばマーケティング分野では以下がよくある問題意識の例です。この際、Yes/Noで回答できるようなものではなく、5W1Hで始まるような問題意識を考えてください

「なぜ○○はヒットしているのか (why)」「ブランドへの愛着を高める要因はなにか (what)」「推し活をする意味はなにか (what)」「○○はどのようにして高い顧客満足度を維持しているのか (how)」

ゼミでは3年のとき、ミニ研究をします。そこではこちらから問題意識を設定しています。「なぜ○○はヒットしているのか」です。ちなみに、調べていくうちに最初の問題意識が変わることはよくあります。すでにその問いへの回答が論文で提出されていたり、あまりおもしろくないと思うようになったりその理由も様々です。そういう意味で問題意識 (仮) です。途中で変わっても気にしないでください。はじめに何を調べてみたいかよく考えましょう。そうしないと次のレビューがはじめられません。

2.情報探索 (レビュー)

ケーススタディであればそのケースに関わること (商品やブランド、ライバル、市場、消費者の意識に関する理論について) を色々調べまとめます。もちろん4Pや5Cといった講義で学んだ理論や概念も振り返りながら確認します。

論文の場合はその分野と関連する文献をレビュー (その論文での発見事項や問題点等のまとめ) しましょう。そして、現時点で何がどこまで明らかにされているのか、一方で先行研究の課題や見落としは何かを検討します。その穴を埋めるためにみなさんが論文を書きます。言わずもがなですが、その後の分析や文章にまとめる段階でも情報探索は継続していきます。

論文が初めての人は、まずはベンチマークとする論文 (査読付きで20P程度あるもの) を見つけ、自分がどんな研究をしたいかをしっかりイメージしておくことを勧めます。それを見つけた後は、そこでレビューしている論文や、似たテーマの論文を5~10本程度読んで見ながら、自分が当初やろうしていた問題意識がすでに明らかにされていないか、その問題意識のどんなところがまだ十分に議論されていないか等を深め、問題意識の重要性が示せるようにしましょう。

修士論文の場合、そのテーマの博論を見つけて読むと、基礎的なところからしっかりまとめられているので勉強になります。

文献レビューでは、先行研究を上手に要約し、本リサーチがどのようにして、それを確認ないし拡張させたり、洗練させたりするのに役立つのか、示すことが求められる。

McCracken (1988)

3.分析

どういった理論や概念を使えば自分の問題意識に答えを出せそうか考えましょう。それが”仮説”と呼ばれるものです。ここに各自の独自性が宿ります。今まで調べた情報を自分なりにまとめ、新しい情報 (+α) を付け加えます。たとえば、4Pで情報を整理し、そこから自分なりのまとめを導き出すというのも十分立派な+αです。修論はもう少しレベルを上げてください。

ちなみに、Google Scholarで論文を探し、それを基に適用できる理論等を探すのが初学者にはおすすめです。使い方等はまたゼミで話します。査読付きの論文は査読者の先生がその質をチェックしているので、積極的に読んでください。

調べていくと概念や理論がまとめられている教科書や専門書のありがたさがよくわかると思います。その際、役立つ書籍については以下を参考にしてください。

4.文章にまとめる

文章を書き始めるのは全体構成であったり、書くことが概ね決まってからにしましょう。いきなりレビューしながら書き出すと、その中身に引っ張られた変な主張になったり、かなりの書き直し等のリスクがあるためです。そのためにも事前にレビューをある程度して、それをメモしたりしながら重要なことは頭に入れておきましょう

もちろん人によって書き方は様々ですが、個人的にはアウトライン (骨組み) を概ね決め、それから肉付けをしていくように文章を埋めていくスタイルが無駄が少なく好みです。例を挙げると下のような感じです。このあたりは相談してください。

1.○○というブランドについて
(1)市場全体の話
(2)○○ブランドについて
2.理論や概念の紹介
(1)分析枠組みの紹介
(2)もう少し突っ込んで議論
3.分析
・・・・・

肉付けをしていくなかで構成が変わっていくことは多々あります。というかほとんど変わります。それは肉付けの過程で新しい情報を得たから、分析の視点が変わったからこそ起きます。成長のひとつです。ちなみに、肉付け過程ではどういった理論や概念を使うのか、なぜそれを使うのかがしっかりと説明されていると読み手にとっては親切です。ここらへんで1と2と3と4のすべてが同時平行的に繰り返されていきます。アンケート調査を行う際には、事前にしっかり仮説を立ててください。結果に基づき仮説を立てるのは決してしないようにしてください。仮説が支持されなくてもそれは十分に意味のあることです。書き始めるとわかりますが、書けば書くほど修正点が見つかります。この気持ちです。

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2,300字のレポートであればどんな書き方でもなんとかなりますが、2万字程度の論文を書く上では途中でのやり直しは辛いものがあります。もちろんしっかり構成を考えた上でも書き直さないといけない場合もありますが、極力そういったことは起こらないようにまずは全体構成をしっかり決めましょう。まずはアナログ (ペンとノート、ポストイット) を使う所から始めましょう。ゼミでもちょこちょやりますね。ここらは教員と相談しながら進めてください。

ちなみに、ゼミで行った卒論とケーススタディは以下の通りです。基本的にはここまで書いたことを意識しながら説明しています。

最後に

論文を初めて書くとき、大変なことばかりだと思います。特に卒論を書かなくても卒業できる場合は気持ち的にも楽な方に行きたくなることも多いと思います。ですが、そんな時こそ簡単に楽な方に行かず、論文に真摯に取り組んで貰えば、ロジカルに物事を考え、頭の中にある考えを文章化する練習にもなります。

ChatGPT等を活用したい気持ちはわかりますが、文章の書き方を専門の先生 (指導教員) から学べるのは学生の間だけです。それ以降は文章の書き方に関する指導はなく、書いた文章で評価されるだけです。しっかり頑張って学びましょう。最後に、自分が普段読んでいる文章以上の文章を書くことはできません。書く練習のためにも読みましょう。

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