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フィクションを書くことのメリット
小説はフィクションの物語です。もっといえば、事実をそのまま書いたとしても小説として発表すればフィクションの物語として読まれます。私小説や誰かをモデルにした小説は限りなく事実に近いですし、多くの小説は作者自身の思想や経験がふんだんに混じっています。ですが、小説のなかに一部事実と違うことが書かれていたとしても、そのことに怒る人はいません。
逆にノンフィクションと銘打ってあるものに事実ではないもの
現実とフィクションをつなぐ小説の技術
本音を書いても白い目で見られず、しかも何でも自由に書けるフィクションの物語。そんなフィクションのメリットだけ見ていると、取材して事実の裏付けをとるノンフィクションを書くのが馬鹿らしくなりそうです。が、フィクションには最大のデメリットがあります。それは読者に信じてもらいにくく、説得力をもちにくいことです。当然ですね。なぜなら、読者は、これはフィクションの物語だと思いながら読み始めるわけですから。
小説だからできること
フィクションの物語を伝える方法は小説だけではありません。映画やテレビドラマのような映像作品、漫画、演劇、落語など多岐にわたります。その中で小説が他のジャンルよりも優れているのは「心の動き」を詳細に伝えることができる点にあるとわたしは考えています。
人の心の動きは複雑です。喜びの中に絶望が潜んでいたり、表面では怒りながらも心の中では泣いていたりすることもあるでしょう。たとえば、驚き、絶望し、その
心の描写がないと魅力的な人物は書けない
講座や授業で「自分の気持ちを表す文章を書いてください」というと、たとえばこんな文章を書く人がいます。
さあ、この文章のなかに気持ちを表す言葉が書かれているでしょうか。実は書かれていないのです。「すばらしい」というのは本の性質を表す言葉です。2文目、3文目も本の特長の説明です。最後の文は意見ですが、書き手の気持ちは書かれていません。
そう説明すると、書いた本人は心外だという顔をします。本を
想像力と観察力から人物は生まれる
登場人物を書くのに必要なのは想像力といいましたが、もう一つ重要なのは観察力です。これは普段の生活で必要な力です。
わたしはいつも、許されるのなら相手の年齢や職業を知っておしゃべりをしたいと思っています。どんな年齢でどんな職業の人がどんな暮らしをしているのか、どんな見方をしているのか、そのすべてが小説を書くときの参考になるからです。自分のなかに座標軸があって、そこにサンプルを置いていく感じです
登場人物のプロフィールを作る
現実世界の話をします。初めて出会った25歳の人と、数分間一緒にいたとします。あなたはその人のことを数分間分しか知りませんが、その人はあなたの見ていないところで25年分の人生経験を積んでいて、数分の間にあなたに見せたその人の仕草や発言や行動すべては25年分の経験をもとに生みだされているわけです。
小説の登場人物も同じです。物語に25歳の登場人物が出てきたとします。その人の発言や行動は、その人が25
プロット立てたほうがいいのか問題
誰が何をして(なぜそんなことをして)どうなるか、という物語の設計図を書いたものをプロットといいます。小説を書き始めの人によく、プロットを作ったほうがいいですか? と聞かれますが、わたしはいつもこんなふうに答えます。
家を一度も作ったことのない人が家の設計図を作れますか?と。もっと身近な例でいうと、料理したことがない人が一度も作ったことのない料理のレシピを書けますか?
何度も完成させる経験を積ん
文章描写こそ小説の味わい
小説の味わいを演出するのに欠かせないのが文章描写です。描写なんて読むのも書くのもまどろっこしいと思う人もいるかもしれませんが、描写がなければ、小説がほかの分野のエンターテインメント作品に勝てる要素はないとわたしは思うのです。小説を書き始めの人は、セリフの羅列になったり誰が何をしたという説明だけの文章になってしまいがちです。脚本のようなのです。しかし、脚本は絵や演技や映像や音楽が合わさって初めて一つ
もっとみる文章描写のトレーニング方法
ところで、描写は詳しければいいというものではありません。言葉からイメージを思い浮かべるのは、読者の脳に大きな負荷をかけます。あれもこれも食べてと読者の口に無理やりつめこんでも全部吐いてしまうように、適切な順で消化できるスピードで、楽しんで食べられるようなものを、うまく渡していく必要があるのです。そこに「技」があります。
どうすればいいか、一概にはいえません。文の置かれた状況によって違うからです。
小説の「構成」という技
何をどの順番で書くか、簡単にいえばそれが「構成」です。構成には大中小いろいろな段階があります。ここで取り上げるのは大きな構成、ストーリーの構成です。プロットで考えた「誰が(なぜ)何をするか、何が起こってどうなるのか」などのエピソードをどの順番で読者に見せていくかを考えます。
これは映画を思い浮かべてもらえるとわかりやすいでしょう。映画は、約2時間という限られた時間しかありませんから、何をどう見せ
構成力をつけるトレーニング方法
最後に、構成力をつけるトレーニング方法について紹介します。
前の記事で述べたように、物語にとって最も良い構成を見つけるためには、大きな手術が必要になる場合があります。ですが、最初のうちはなかなかそこに踏み切れません。せっかく書いたものを捨てたくないし、どのエピソードも設定も愛着があって一部を切ったり入れ替えたりしたくないからです。
それはわたしも同じです。せっかくまとめあげたものを、できれば直した