寒竹泉美

京都在住の小説家です。医学博士(京都大学)です。理系ライターもやっています。 お仕事…

寒竹泉美

京都在住の小説家です。医学博士(京都大学)です。理系ライターもやっています。 お仕事や活動履歴などはHPにあります。 https://kanchikuizumi.amebaownd.com/

マガジン

  • 【連載小説】ちょうどよいふたり

    日本リフレクソロジスト認定機構会報誌「Holos」で連載中の連作短編小説です。1年に3話更新されます。作中の人物も4カ月ごとに成長していきます。

  • 考えていること

    日々、考えたことを少し長い文章で。まだまだ人として未熟だからきっと考えは変わっていくのだろうけれど、その途中過程を書いておきたい。

  • 毎日小説家でいつづけるための執筆日記

    毎日小説を書けなくても、毎日小説について考えたり取り組んだりすることはできるんじゃないか。まずはそこから始めようと思いました。執筆や思考の記録です。

  • 意識研 - 「意識」とは? AIに回答不能な究極の問を問う

    • 7本

    意識研 https://ishikiken.studio.site/

  • 短い小説いろいろ

    公開OKの短い小説をいろいろ集めました。また発掘したら随時アップします。

最近の記事

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2022年の仕事と創作を振り返る

記憶が人を形成する。ということは、忘れていることをときどき拾い上げて思い出していったほうが成長できるんじゃないだろうか。去年振り返り日記を書いたのが今年の励みになったので、また今年もやってみようと思います。 書籍◆『ゲノムに聞け 最先端のウイルスとワクチンの科学』中村祐輔・著 (文春新書) 2022/3/18発売。科学図版のディレクションでお手伝いしました。わたしがラフを描いて、いつもお世話になっているイラストレーターの奥田まがねさんとパンダせんぱいさんに仕上げてもらいま

    • 第33話 有言実行とわがまま

       シャンデリアの光る広い会場には丸いテーブルがいくつも配置され、その周囲に人が座っている。それが何だか湖に浮かぶボートのようだと思いながら、果穂はステーキ肉をほおばり、赤ワインを一口飲んだ。そして、同乗者たちの顔をちらりと見る。視界に入るのは知らない顔ばかりで、遭難したような気分だ。隣には幸彦と結季がいて、彼らだけが唯一の知り合いだったが、自分たちの結婚式を控えたふたりは、招待客というより探検隊といった感じで、披露宴の様子を観察している。そして、何かの演出が行われるたびに、こ

      • 44歳のテーマは「たくさん遊ぶ」に決めた

        先日、誕生日を迎えて44歳になりました。44歳って、こう改めて文字にするとすごい破壊力だなあ。精神年齢14歳くらいのイメージなんだけども。 2022年の日本人女性平均寿命が今87.09年だそうで、これから先まだまだ伸びるだろうけど、とりあえず半分越えたという感じ。誕生日だから抱負を述べるなんてことは、述べてもすぐ忘れるからやめてたけれど、昨日急に「44歳はたくさん遊ぼう」とテーマがひらめいた。 というのも、最近仕事ばかりしていて自ら遊ぶ気持ちになれない。人から誘われたとき

        • 登場人物は作者に嘘をつくし、私も私に嘘をつく

          今ずっと漫画「ONE PIECE」を読んでいる。1997年から連載が始まったらしい。そのときわたしは18歳で(1979年生まれです)、ジャンプを購読していて(もちろん紙で。電子で漫画を読む発想すらない)、ONE PIECEの連載が決まる前のお試しの読み切り短編を読んだことを覚えている。 それが今も続いていて、大人気で、読み切りを読んだときには想像もしなかったたくさんの仲間に囲まれて(←主人公が)、すごいよほんと…と、まあ20年遅れで感動しているわけだけども(今86巻の途中な

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        • 【連載小説】月の子屋
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          別の名前で小説を書いてみようと思ったら気がついたこと。

          文学界新人賞という小説の賞がある。芥川賞直結の(可能性が高い)、わたしにとって、憧れの純文学の賞だ。出してみたいとずっと思っているのだけど、応募規定の「新人の未発表作品に限る」という文言でいつも立ち止まる。わたしは新人じゃないよなあ…。しかし、純文学作家としては新人と言えるのではないか。少なくとも、編集部も審査員も誰一人わたしのことを知らないだろう…などと、無理やり言葉の定義を拡大解釈してみたりするけれども、まあだいぶ苦しい。 もし「新人賞」を受賞したら、わたしを知っている

          別の名前で小説を書いてみようと思ったら気がついたこと。

          アートの価値について、ぐるぐる考える

          アート作品についた値段を見ると、お金に対する価値観がぐらぐら揺らいで混乱する。1億とか、数百万とか、そういうレベルなら自分には全く別世界の話で済ませることができるのだけど、小さな絵が、たとえば10万円だったとき、10万円というのは一体何だろう…とわからなくなる。 何か月もかけてできあがったものもあるし、ほぼ一瞬で(素人目には)ささっと描き上げたようなものもある。だとしても、その能力は長年の鍛錬のたまものであって、労力と能力の対価という面で考えれば、アート作品の価格は安い(…

          アートの価値について、ぐるぐる考える

          ライターの視点:ウェルビーイングとテクノロジー(シーズン2 第2回)

          毎月行われている意識研究会は、シーズン2「ウェルビーイング・テクノロジー」に突入した。他の回の報告は書いてないけど、まあ順番に書こうとしたらいつまで経っても更新できないので、書きたいと思ったときに書くのが吉かと。 意識研究会についての詳細はこちら。 シーズン1の「マインドアップローディング」に比べたら、「ウェルビーイング・テクノロジー」というテーマはちょっと身近な感じがする。だけど、ウェルビーイングもテクノロジーもあまり真面目に考えたことがなかったし、ましてやその2つの関

          ライターの視点:ウェルビーイングとテクノロジー(シーズン2 第2回)

          幸せのキャパを増やす方法と、幸せを貯める方法。

          漫画『DEATH NOTE 』をKindle大人買いして読みまくっていて、昨日読み終わった。今更読み始めたのは、ネットで「DEATH NOTEの主人公はなぜ死んだんですか?」っていう質問を見て、ちょっとしか読んだことなかったけど、あいつ、死ぬんかい…!と思って読みたくなったから。 面白かった。絵もストーリーも、人物の書き分けっぷりがすさまじい。それぞれのキャラが、それぞれの動機で動いていて、少しもぶれていない。ときどきストーリーにとって意外な動きをするけれど、その動きも、後

          幸せのキャパを増やす方法と、幸せを貯める方法。

          第32話 夫婦旅行と青い部屋|2023年5月

           果穂のサロンに結季が来るのは久しぶりだった。以前に来たのは、一年以上前だ。その頃、結季はまだ会社員だった。会社辞めてフリーの旅行プランナーとして活躍しはじめてからは、休みが不定期になり、ぎりぎりまで予定が見えないことが多くなった。果穂のサロンも順調に予約が埋まってしまうため、なかなかタイミングが合わなかった。それで、ずいぶん間が空いてしまったのだ。 「寝てもいいよ?」  と、果穂は言った。リフレを受けている結季がめずらしく静かだったからだ。 「もったいないから起きとく

          第32話 夫婦旅行と青い部屋|2023年5月

          仕事を断れないわたしに、小津安二郎が教えてくれたこと

          PrimeVideoの松竹プランに課金して、小津安二郎監督『秋刀魚の味』を見た。小津作品はこれで5作品見たけど、そのうち、これ含め3作品(『秋日和』『晩春』)が、ひとりになってしまう親を気遣ってお嫁にいけない娘と、その娘のために親ががんばって話をつけて、最後は娘が結婚していって、親はひとりになってしまう、というストーリーだった。 なんで同じようなものを繰り返し作るのだろう。そしてそれを、なんで少しも目を離せず見てしまうのだろう…と不思議に思いながら見続けていた。 『秋刀魚

          仕事を断れないわたしに、小津安二郎が教えてくれたこと

          電子書店が消えれば購入した電書も消えるし、電子遊技場が消えればわたしも消える(でも、紙の本と生身は残る)

          図書館から予約取り消しのメールが届いた。予約していた本が届いたのに、取りにいくのを忘れたまま、1週間が経ってしまっていた。取り消されたのは、谷川俊太郎の絵本「ぼく」。 「ぼくはしんだ じぶんでしんだ」 から始まる絵本だ。雑誌『pen』谷川俊太郎特集を読んで知って、すぐ予約したのに、予約取り消しのメールが来なければ、予約したことも、谷川俊太郎をもっと読みたいと思ったことも忘れていた。10日前のことなのに。 家から遠くの図書館から運ばれてきて、家の近くの図書館に置かれて、待

          電子書店が消えれば購入した電書も消えるし、電子遊技場が消えればわたしも消える(でも、紙の本と生身は残る)

          育休の話を聞いて、わたしも人生レベルで自分のやりたいことをするために休みをとろうと思った話

          昨日は『ママはキミと一緒にオトナになる』を上梓したコラムニストの佐藤友美(さとゆみ)さんと、『おそるおそる育休』を上梓した毎日放送アナウンサーの西靖さんのトークイベントに行ってきました。 実を言うと、ライターとして尊敬するさとゆみさんのイベントだから聞きにいくものの、わたしには子どもがいないから、今回のテーマはあんまり興味がないなと思っていた。子どもを欲しいと思ったことは一度もないし、今後もないし、10億円あげるから子を産んでと言われても1秒で断るくらい、積極的に欲しくない

          育休の話を聞いて、わたしも人生レベルで自分のやりたいことをするために休みをとろうと思った話

          空間を使って考える

          小説講座やエッセイ講座で文章の書き方をまだ慣れていない人に説明するときには、私はよく、考えるために頭の中の中身を書き出そうと言う話をする。書くことと考える事は同じだから。書かないと本当に深いことは考えられない。3桁× 3桁の掛け算の暗算はできないが、紙に書けばできる。それと同じことが思考にも当てはまる。紙に書けば3桁の計算ができるようになるのと同様に、1階建ての思考が3階建てになる。 さらにどんな紙にどんなふうに書くかも、思考の内容に関わってくる。 ゼロから1を作り出す時

          空間を使って考える

          努力が報われないことが苦手なのだと気がついた

          ライターとして参加した新書『思い出せない脳』が発売から2週間で増刷となった。編集者さんがせっせとプロモーションをしてくれたことと、武田砂鉄さんのラジオでとりあげてもらったことが大きかったと思う。 本が売れるという経験が皆無のナカトバ作家なので(鳴かず飛ばずを、鮭とばみたいに言ってみた)、本ってこんなふうに増刷されるんだなあとしみじみ噛みしめた。いつか、自分が作者の本でも増刷されてみたい。中身のクオリティは一緒なんだけどなあ。そして『思い出せない脳』も、もっと売れてもいいと思

          努力が報われないことが苦手なのだと気がついた

          ライターの視点:第一回意識研究会を終えて

          東大名誉教授の哲学者がたちあげた「意識研究会」 意識研noteから訪れた人は、初めまして。ライターとして、この意識研究会に参加している寒竹泉美(かんちくいずみ)といいます。わたしの任務は、この難しい、怪しげな、研究会の内容を、一般の人にわかりやすく、うさんくさくないし怖くないし、何ならとても面白いと伝えること、そして、意識についていろんな人が議論できるような土壌を作るお手伝いをすることです。 意識研は「意識とは何か」という究極の問題を問い、広く語り合う文化を日本に巻き起こ

          ライターの視点:第一回意識研究会を終えて

          本はオワコンではない。ChatGPTで遊びまくったら見えてきたこと。

          5月18日にライターとして参加した講談社新書『思い出せない脳』(澤田誠・著)が発売される。昨日、見本が届いた。 本の見本が届くとしみじみ嬉しい。けど、しばらくは、中は開きたくなかったりする。毎回毎回本を作るのは吐くほど大変なので、その過程を思い出したくないから…(笑)わたしの名前は最後の奥付に載っています。 1冊の本を作るには、まず、著者に10時間くらいインタビューする必要がある。8~10万字書くには、1日6時間取り組んだとしても最低30日はかかって、さらに勉強したり調べ

          本はオワコンではない。ChatGPTで遊びまくったら見えてきたこと。