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Peachの旅くじでGO!ひとり大阪旅

 Peachの「旅くじ」をご存じだろうか?2022年にグッドデザイン賞を受賞した、旅くじ。5000円でがちゃがちゃを引いて、どこ行きのフライトになるかはわからないというスリリングさと、6000円分のフライト代になるというお得さもあって、全国各地で盛り上がった。
 わたしは札幌初日に参加し、大阪行きをゲット!さらに10000円分を引き当てたというスペシャルラッキー大興奮である。そして1人で大阪に行くことに!

ミッションは「大阪のおばちゃんぽい服で新世界を歩いてきて!」

 予想外に?新千歳空港に早めに到着。フライトまでまだ3時間あるという阿呆加減。いや、ゆっくり夕食をとれると思えば、有意義な時間だ。いつも通り「弟子屈ラーメン」に迷うことなく入店し、「スモールサイズの味噌ラーメンとサッポロクラシックください」と注文。これを人は「金澤佑樹セレクト」と呼ぶ。そろそろセット割とか作ってもらいたい。
 それよりも、北海道を離れる時には「サッポロクラシック缶」をスーツケースに入れることと、体内にできるだけ「サッポロクラシック生」を注入しておくことが重要だ。さて、フライトまで何杯飲めるか?という勝手なミッションを掲げ、今これを書いている現在、2杯目を飲んでいる。場所はフードコート。気兼ねなくパソコンを開いてこんな阿呆エッセイを執筆できるフードコートの気軽さよ!しかもさっきラーメン食べたから、生ビールだけを頼めるフードコートのキップの良さよ!(本当か?)今回の被害者(社)は、松尾ジンギスカンさん。ジンギスカンは注文していないが、サッポロクラシックの大ジョッキを頼んだのは私です。ごめんなさい、というかありがとう。
 さて、そろそろチェックインをする時間なので移動する。

 コンビニでサッポロクラシック缶を4つ買い、スーツケースに大事にしまう。そのまま荷物を預け「貴重品は入っていないですよね」と言われ、真っ先にクラシックを想ったわたしは、変態だ。搭乗手続きを終え待合室へ。中でもビール飲めるところあるもんね♪と早めに入ったが。これが間違いだった。
 この時、19時半。すでにお店はラストオーダーを過ぎ、なんと売店も全て閉店。ああああ、久しぶりにこんな遅い時間のフライトだからうっかりしていた。ビールが飲めないではないか!さっきのクラシック缶、カバンに入れずひとつだけ持ってくればよかった、と嘆いても仕方ない。がっかりしたまま大人しくPeachへ乗り込んだ。くそう。ホテルに着いたら飲もう。

大阪に到着


 Peachは関空がおうちなので、到着が遅くても問題ないという22:55着。久しぶりの夜の関空でPeach機体が揃う姿に、感動する。あああ!!と歓喜の声を我慢。周りはこの時間到着の便だけに、こっちが地元の人が多い印象。夜の関空に興奮しているのは私だけか。黙ってホテルへ向かう。
 事前に伝えていたチェックイン時間を間違えていたことに今更、気が付いた。軽く1時間遅れか?と思っていたらさらっと2時間近く予定より遅延してのチェックイン。
 泉佐野駅からホテルまで歩く。遅れるって電話しておけばよかったかなぁと思いながら、もうここまできたら行っちゃった方がいいよなーと荷物をコロコロさせて歩く。夜道にゴロゴロと音が響く。
 フロントに着くなり「ごめんなさい!遅くて!」とまるで妻の帰宅を夜中まで待っていた旦那に謝るかのように、勝手にフロントにいた男性に名前を告げる。まず、伝えるべきは誠意だ。
 チェックイン日時が遅れたから、本日は泊まれませんなどと通告されるより早く、寄り添うが勝ちだ。そんなよこしまなわたしの思いをよそに、ホテルマンは「いえいえ、お疲れ様でした」と対応してくれた。しかも、予約した喫煙部屋(他に空きがなかった)から「お煙草吸われないなら、禁煙のお部屋変えますか?」と聞いてくれるという更なる神対応。ええ!私はニコチンとか何十年も入れてない、身体もココロもクリーンな人間ですので!とにっこり笑って部屋移動。感謝しかない。
 ということで、ちょっとぬるくなったクラシックを飲み干し、快適な爆睡の一夜を過ごす。

大阪のホテルの冷蔵庫にサッポロクラシックが美しい

 さて。朝。ねむ…。夜遅くの移動で疲れたせいか、朝が辛い。なんとか8時半に起きて身支度した。
 電車に揺られ、今日のメイン!住吉大社へ。
 駅を降りてスーツケースをロッカーに預けようか迷った。でも、戻りはこの駅ではなく路面電車の予定なので、ここで置いていってもなぁと悩み、ごろごろさせながら大社へ向かう(この距離感のわからなさで、後から酷い目に合うのだが)。信号を待ちながら、住吉大社の正面に立つと「あ、来たことある!」と記憶が蘇る。しかし参拝したことなど細かい記憶は無い。取材かなんかで、どひゃーーーという瞬きする間もなく大阪を巡ったことがあるから、なんかその時だったかもなぁと思い返す。
 今日は1人だから、のんびり行こう。
 と、堂々たる上り坂カーブを描く「反橋」の手前で怯む。あーーー、スーツケース重いだろこれ。神様に会うために、自ら困難を抱えてきてしまった。何なのかこれは自分に課した責務なのか何だこれ重い。渡ればそれだけでおはらいになるという橋を、片手スーツケースでひいひい登った。上まで来たところで、すでに達成感がある。いや、まだ修行の始まりだ。池を覗き込んで休憩した。ゆっくりと下ってから鳥居で一礼し、境内に踏み入れると、そこは
 砂利でした。
 そりゃそうだ!神社の境内ということを忘れていた!おいスーツケース!コロコロ!転がせない!ということで、約10キロのそれをほぼ片手にお参り。重い…。

ここをスーツケース持ってのぼる修行的体験からスタート

 境内は参拝の方で混むこともなく、ほどよい感じ。おばさまグループもいれば、スーツのサラリーマンらしき人たちもいる。大阪人の大切な「すみよっさん」なんだなぁと実感する。
 有名な「五大力」のところにひいはあ到着(「五」「大」「力」と書かれた石を三個一組で探して、これをお守りにすると、体力・智力・財力・福力・寿(命)力を授けてくれるそう)。案の定、先客が楽しそうに石を探していた。
 他の人たちから少し離れて自分も探す。ん?大量の石の中に手を入れる前から、もう文字入りの石が見えている。
 お?と手を伸ばし「力」を確保。
 そしてそのまま探っていたら、意外とあっさり「五」「大」も見つかった。「力」はもうひとつ見つかったので、1個はそっと戻した。その間1分もかかっていない。やや拍子抜けしてありがたく持って帰る(専用の袋は後ほど購入!)

こんな簡単にゲット出来ていいのか?と正直思ったが…皆どうなんだろ?

 そのまま奥に進むと、個人的にその場所がとっても居心地がよかった。あーこの樹、わたし好きです。ここにもうしばらくいたいなあと思っていたら、タイミングよく近くのベンチが空いたのが見えた。迷わずそこへ向かう。スーツケースをおき、一息つく幸福。
 なんて気持ちがいいんだろう。深呼吸して過ごす静かなひとり時間。
 しばらく休憩したら、途端に元気になった。再びスーツケースを持ち、参拝もしながら道を戻る。ああ、来てよかった。まだ全ての社には回れていないけど、次回はもっと身軽で来よう、2回目の参拝を目指そう、と心に決める。
 そして、決めていたお昼ご飯の店の方へ向かう。
 鰻だ。

 鰻と言えば、私にとっては「成田」。「開運の町」として鰻屋が参道に多く並ぶ町だ。住吉大社に参拝したら、成田のようにやっぱりうなぎのぼりに開運目指したい!ので参拝後は鰻を食べる!というわけで。、
 小さなその店のドアを開けると、カウンター数席とテーブル2席のこぢんまりとした空間。そこに、私より人生の先輩方が座って鰻を楽しんでいた。店の方に申し訳ないくらい邪魔なスーツケースを端に置き、カウンターに座る。う巻きを食べたかったので、それと蒲焼の両方が味わえる定食を頼んだ。
 その途端、厨房で卵をまぜまぜし始めるおじさま(作り手)の様子が見えて、嬉しくなる。あうう!私のために卵まぜまぜしてくれてるう!そしてご用意された定食は、私の期待通りのうまさだった。最初は多めに感じたご飯を全てたいらげ、大満足で店を出る。本当に美味しかった。コスパも最高。大阪すごい。

これで2000円しなかった。うまうま

 出た腹をさすって、路面電車の停留場へ向かう。もうこの時点で気がついてしまったけど、住吉大社の駅と、路面電車は非常に近い。
 スーツケース、最初の駅で預けた方がよかったじゃん!!!
 次回、住吉大社参拝の時には、スーツケースはなしで!人は経験をへてこそ成長するのだ。
 停留場で待っていたら、何となく以前来たときの記憶がゆるく蘇った。以前もここで路面電車を待っていた。そんなに昔のことではないのに、今となっては非常に昔のことのように感じる。それだけわたしも成長したってことかもしれない。出っ張るお腹をさすって、路面電車に乗り込む。
 実は旨い鰻を食べながら、気になっていたことがある。
 足がかゆい。
 多分、境内でベンチに座り優雅な時間を過ごしていた時に、攻撃をされたと予想。路面電車に乗り、座って足を確認する。
 どわー。何だか片足3箇所ずつくらい虫に刺されている。かゆいいいい。
人の目も気になるので、急にボリボリはかけないが、めちゃくちゃかゆい!気を紛らわせようと、窓から外を眺めた。
 右も左もほぼ建物に囲まれ、緩やかではあるものの、上ったり下ったりを繰り返す線路。狭いところを縫うように走る場所もあり、まるで優しいアトラクションのよう。
 路面電車というのはどこの地域でもクルマや自転車や歩く人々、全てと仲良くゆっくりと生きているのが心地よい。
 街並みに溶け込む様子が、好き。
 向かいの商店のガラス窓に、路面電車の姿が映り込む瞬間とか。
 あー、わたしって感性豊かなだな。作家とか詩人になれるんじゃ!?⟵なれるもんならなってみろ

はちきれる腹 


 路面電車を恵美須町で降りる。目指すは「新世界」だ。peachの旅くじミッションは「大阪のおばちゃんぽい服で、新世界を歩いてきて!」ということだったが、せっかくネットで買った豹柄のスカーフとスカートは配送が間に合わなかった。
 恐らく、今頃札幌の自宅に着いているかもしれない。遅いよ!ということ で、いつも通りの自分でとりあえずはテクテク行く。
 それにしても酒が飲みたい。
 鰻屋さんでも飲まなかったし、それなりに歩いて疲れてもいる。そろそろわたしにアルコールという名のガソリンを!プリーズ。ギブミー。びあー。
 好物のサッポロクラシックを、大阪では飲めないことは承知しているので、とりあえず1人でも入りやすそうな店を探す。串カツは…少し食べたいけど、先程鰻を食べているので、ハッキリ言うとそれはメインでは無い。
 表通りや裏路地をゴロゴロさせてキョロキョロ歩いていると「大ジョッキ」と書かれたお店が目に入った。あー、もうここにする。わたし。大ジョッキプリーズ。
 店内はそれなりに賑やかで入りやすかった。テーブル席の他にカウンターもあるし、1人でも入りやすい。ちょうど串を揚げている職人さんの目の前に案内され、座るや否や「大ジョッキください」と叫ぶ。
 え、大丈夫?大ジョッキは1リットルあるよ、と言われ「全く問題ないです」と答えたら、店主にやりと笑った。さっきの鰻が腹の9割を占めているので、串カツは野菜のみ(ビールは別腹)。アスパラとシイタケを頼む。
 そこへ大ジョッキ。
 うはー。ぷはーーー。うほーー。
 生き返る…。

本当にデカい!大ジョッキ。これ持つだけで筋トレになる

 すると先程の店主、その2つを揚げて私の目の前にホイッと置きながら「うちの名物は?食べるでしょ」と声をかけてきた。小心者なので「ハイ!」と答えるわたし。名物を頼まずにいたとは申し訳なかったので肯定はしたが、果たしてそれは何だ?そしてこの満腹の状況で食べられるのか?
 目の前のアスパラとしいたけを見ると、何だか思っていたものよりも大きい。串カツって衣がサクサクではなかったか?これは何というか、もにゃっとしていてまるであれ、アメリカンドック的なふわふわ衣。ぱくっと食べると、もちろん甘くはないがものすごいボリュームである。それはそれで美味しいけど、何か想像と違うな…とスマホで店の口コミをチェックする。
 どうやら、この他にないふわふわ串カツだからこそ根強いファンがいるようだ。うむ。それはそれでわからんでもないが、今の私の腹にはまるで爆弾を投げ込まれたようだ。
 「名物」は牛だった。串に刺した牛肉も、もちろんふわふわになっていてまさにミニドック的な。周りを見渡すと、オンナ1人で飲んでる客は皆無。しかも大ジョッキって…そりゃあ店主も「こいつは飲むし、食うだろうな」と見立てたんだろうな。うん、飲むんだけど今日は食べられないの…ヨヨヨ…と泣きたい。しかもボリュームある串カツ。店主も「へいへい!」と言わんばかりに串カツを揚げてくれるもんだから、んもうね、残せないという。魔のループ。

 それでも何とか完食し、店を出る。ひいい、もう腹いっぱいで空気さえも入らない!ここからどこかに立ち寄るパワーもない。ああ、ヒョウ柄とか着て写真撮りたかった!というところで思い出した。大阪の友人から聞いていた、新世界でも有名な動物柄に特化したお店を。せめてそこには寄ってみようと仲通りに入る。が、たまたまなんだろうけど、人が誰もいない…。あああ、そんな中でひっそりと佇むその店に入るには…うわあ…勇気がいる!!
 ちらりと横目で見ながら、ゆっくりと通り過ぎる。「あかん!勇気出さなあかんで!」と、自分の中ももう一人が大阪色でけしかける。
 
ハンガーにかけられている虎(柄)や豹(柄)が「こっち来いや!」「おい!来んのかい~」と煽る声に耳をふさぎ、通り過ぎた。
 負けだ。勇気が足りない、わたしの負けだ。というか、今の出っ張った腹で虎顔のTシャツとか着たら、そのまんまマジ立体的な動物になってコワイ。許して。旅くじミッション。
 今にもはち切れそうな腹を抱えて、再び電車に乗った。とにかく、ホテルにチェックインして荷物から解放され、ちょっとだけ休みたい。「近鉄日本橋」で降りると、近くにあったドラッグストアが目に入った。
 そうだ、胃薬、買おう。
 ついでに虫刺されの薬も欲しかったが、秋に差し掛かった季節にもうそれは購入したくなかった。明日、札幌に持って帰っても使わないし、寧ろ自宅にはほぼ出番のないそれが2つもあるのだ。絶対にいらない。
 かゆい足を我慢し、胃薬だけを購入。「ホテルはどこじゃ、ホテルは」の一心で歩く。チェックインし、スーツケースから荷物を出すより先に、先ほど買った胃薬を飲む。ごくん。あああ、これが欲しかった。

旅先で胃薬買うって初なんだけど!

 ほっとしたところで荷物を片付け、上着を脱いでベッドに直行した。あふーーーだめだ、この腹。苦しい。いや、声に出さずとも、苦しい。瞼に浮かぶのは「赤ずきんちゃん」に出てくるオオカミの姿。あいつがおばあさんと赤ずきんちゃんを飲み込んだ時は、こんな感じだったのか?いや、多分そっちではなくて、わたしに近いのは後半の方。つまり2人を出してからの「石」を詰め込まれた時の方。
 あんなに美味しいものを食べて、満腹で幸福なはずだったのに、なぜ今こんなに苦しい?!誰かがわたしの腹に何かしたのか?という後半。……。
 気が付いたら、17時になっていた。
 阿呆だ。バカだ。まあ、どっちもだ。
 ベッドに倒れ込んで、2時間近くたっている。うっかり寝てしまった。別に決まった予定がなかったとはいえ、旅先で昼寝をするという初体験。あああ、食べ過ぎとは恐ろしい。自分の腹の具合をそっと伺うと、確かに寝る前よりはよくなっている。これで夜ご飯は食べられるだろうか?夜は友人との約束があるのに!
 ゆるっと身支度を整え、少し早めにホテルを出た。昼間は意外と歩いて汗をかいたので、着替えた。peach10周年記念のTシャツだ。もはやヒョウ柄とどちらが目立つか?という面白さ。
 待ち合わせの場所までポテポテ歩く。大阪は何回も来てるけど、夜に1人で歩くのは初めてかもしれない。知らない路地にドキドキとワクワクを抱えてキョロキョロ。突如、花屋さんがあるところを見ると、やはり夜のための繁華街なのか?ん?うひうひなどと邪推する。

大阪の夜のきらきらがたまらんね、と1人テクテク

 友人が指定してくれた店は、わたしの好きなクラフトビールの立ち飲み店だった。わぁいわぁい!ちょっとまだ早いけど、先に入っちゃおうっと。
さっきまで腹いっぱいで「死」に近かったくせに、ビールを目の前にすると途端に元気になる自分。
 水を得た魚。
 鬼に金棒。
 適材適所。
 適当適量。

 最後はいい加減なこと言ってるが、まぁ飲もう。適量とは何杯のことかな。まぁ適当だな、的な。

 ありがたい事に、ビール中心のお店だったので飲むだけでも通常運転。悪いが食べ物はまだ胃に入る余地がない。うまうま、とビールを飲んでいるうちに友人がやってきた。
 「マジすかそのTシャツ!」と笑っている。よしよし、想定内。
 peachの本拠地に来て、このTシャツを着るという醍醐味を誰かに見て欲しかった。1人旅だったからね。ヒョウ柄は着れなかったし。
 久しぶりの再会に乾杯する。クラフトビールを3杯飲み、次の店に移動。 カウンターに座って、目の前でホルモンを焼いてもらった。じゅうじゅう鳴るのを見ながら、彼女オススメのおつまみも、ちょいちょい箸を出すくらいには胃も回復してきた。「子どもの頃から、これ食べてたんで」といって勧めてくれたのが「スルメキムチ」。これが予想外にめちゃくちゃ美味しい。え、大阪には何回も来てるけど、初めて食べた。地元人間と飲むとこういう楽しさがあるよね!うん!うまい!
 そうこうしながら、隣に居合わせたお客さんに話しかける友人を見てると、いかにも大阪らしくていい。やっぱり大阪はこうじゃないと!どこの地域に行っても似たような現象は起きるだろうけど、大阪だからこそ距離が近い気がして楽しい。あ、腹が苦しい。また食べすぎた。
 気の置けない相手と飲む、この上なく楽しい酒の時間。今度は札幌での宴を約束しながら、ホテルへ戻る。ちゃんと飲んだくれの年上女をホテルまで送ってくれるあたり、ジェントルマンである(ごめん。完璧女子です)。
 そのままホテルでぐだっと寝落ち。

最終日は迷子

 翌朝、9時起床。気持ちよく荷物をまとめてチェックアウトする。今回の旅はいつもスーツケースをゴロゴロさせて動くので、面倒だ。とはいえこのまま空港に向かうから仕方ない。
 さて!今回の旅、シメは「なんばグランド花月」。
 以前にも来たことはあるが、1人での鑑賞は初めて。年齢を重ねてゆくたびに「初めて」が少なくなっていくからこそ、機会があれば何でもやってみたいなぁと思っている。自分からそれに挑戦するのもいいけど、とりあえず人から勧められるとか、誘われることについては、積極的に体験してみたいなぁと思っている中年、それがわたし。

この日は「見取り図」からのスタート。うはうは大興奮

 開演時間前に到着した。前回は、持っていたスーツケースが席に座る際にめちゃくちゃ邪魔になって大変だった(両サイドに他人がいる席だったから、足元にしか置けず。でも狭いので、んもうぎっちぎち)。今回はそれを教訓に、会場にあるロッカーにすぐに預ける。よしよし、これで身軽だ!いつでもごろごろさせてないで、適材適所?に置くことが肝心だ!
 時間までお土産屋さんを物色し、ついに開場時間!!そのうち右隣には子連れの夫婦が座った。こんな小さい時からお笑いに触れられるとは、なんとyouは幸福なんだ!と他人の子に言ってあげたいほど、自分も興奮中。何とか自制して大人しく開演を待った。
 ところで、左隣には誰も来ない。
 わたしの席は、その列の左端から2番目。つまり、左隣りの向こう側は壁(通路)である。う…これならスーツケース持ってきても良かったのではないか?あのスペースに置けただろ?悶々としながら開演。そうなると色んな事を忘れて、手をたたいて笑い、時には声を我慢し、そりゃもう楽しくウハウハと2時間近くを過ごした。あああ、「笑い」ってやはり尊いものだ!楽しかった。
 と、終わって我に返る。
 結局最後まで左隣りは空いたままやないかーーい!誰も来んのやないかーーい!何できいへんのや!何のためにスーツケース預けたんや!?‥‥関西弁を聞きすぎて、「にわか」にツッコミを入れたくなっている自分がちょっと気持ち悪い。
 今回、2回「スーツケースを預けるか、預けないか」という問題が発生したが、この問題にことごとく回答を間違えてしまったようだ。ああ、次回からはスーツケースについてだけは「思った方と逆を選ぶ」ということを試してみたいと思う。そんなこと考えたの、小学生以来だぜおい。
 狙っていたお土産を購入し、1階へ降りる。このままたこ焼きを食べることを決めていたので、迷うことなく「生ビール」「たこ焼き」を購入。立って食べるお気楽スタイルだからこそ、1人でも立ち寄りやすい。大阪旅で、ようやくたこ焼きにありついた。昨日はそんな腹の余裕は皆無だったからね。

やはり粉もんを食べたくなる。ビールはキリン

 ハフハフと口に放り込みながら、時間を確認する。まあこのまま空港に向かう予定だが、余裕だ。できれば高島屋に寄って地下でお土産を買って帰りたい。満腹になったので移動。お土産を入れてさらに重くなったスーツケースを、ごろごろしながら高島屋へ向かう。目的は「北極星」と「赤福」。関西エリアに来るとどうしても「赤福」は買いたくなる。しかも高島屋には2個入りというレアなかわいいものも売っている。それは空港では買えないからね。多分ね。
 北極星のオムライスをテイクアウトし、札幌まで持って帰るあたりは変態度は満点。帰宅後に食べたいから仕方ない。はっきり言って賞味期限6時間ぎりぎりセーフの計算。うしし。どちらの目的も果たし、さてあとは空港行きの電車に乗るだけ。さらにスーツケースは重くなったが、もうゴールは目の前、頑張れ自分。

 というところで、電車がどこかわからない。あちこち行ってみるが「南海本線で空港行き直通」である。なぜ見つからないのか。あああんもう、誰か教えて!とぐるぐる歩く。
 ご存じの方は「え?高島屋からって、出てすぐじゃん」と寧ろ困惑されていることだろう。わたしだって困惑したよ!あとから考えたら、本当にわたしが出た地下からすぐ左だった。しかし、この時は気が付かずまっすぐ進んでしまった、という間違いがもとで、これもうマジで20分のロス!!
 他の路線図を見るも、地図を見るも何がなんだかわからなくなり、プチパニックである。そして、ある時気が付いた。
 「あ、電車って…地上だった」ということに。
 は?何を言ってんだ?と思われるだろうが、札幌に移住して5年目のわたし。実は札幌で「電車」といえば、ほぼ「地下鉄」のことを指す。ちなみに地上にある線路は「JR」と呼ばれる。つまり「電車」=「地下鉄」という意識がすっかり脳みそを占領していた。だから高島屋の地下の出口から歩いて「階段を上がる」という選択肢がなかったわけ。あーあ。

 それでも無事に空港に到着し、さっさと搭乗手続き。荷物も重めの15キロ。そりゃあ持って歩くの大変だよな。よく頑張ったぜ自分よ。搭乗待合室へ早足で進む。なぜ急いでいるのか?というのは別に時間が迫っていたわけではない。
 ビールが飲みたいからだ。
 搭乗前に、何としても飲みたい。Peach shopでPeachオリジナルのクリアケースを購入し、そのままお向かいのSORATERIAへ。迷わず「おつまみセット」を注文。1人でうはーとソファに座る。あああ、大阪楽しかったなぁ。「食い倒れの町」をこの年で本気でやっちまうとは、わたしも元気なものだ(胃薬飲んだけど)。プハーっとジョッキを置きつつ、待合室を眺める。相変わらずカラフルなソファがかわいい。たくさんの人で賑わっている。YouたちもPeachで大阪を楽しんだんだね。旅くじ、した?わたし、したの。それで来たのむふふ、と誰も聞いていない独り言を脳内でつぶやく。
 フライトまで、あと15分だ。ゆっくりと立ち上がった。

いいこで帰宅。楽しかった大阪!

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