海が私を包み込む
さらさらの砂を踏みしめて歩いている。
私は感覚を研ぎ澄ませる。
ざばーん、ざばーんと寄せては返す波。
少し塩の匂いが混じった風。
怖くなるほどに蒼く澄み渡る空。
海が私を包み込む。
私も海になる。
また、砂をぐっ、ぐっと踏みしめる。
自分を限界までなくして
空っぽにして
歩いていく。
私の心は消滅する。
空気になったように
ふわふわと漂う。
やがて、何処かに着いた。
これが目的だったような気がする。
近寄ると、それはお墓だった。
何が書かれているかは掠れて読めない。
でもきっと、それでよかった。
私は墓の横に座り、
ただ海に日が沈むのを眺めていた。
綺麗だった。