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書店という場所

僕は、書店に行くことが結構好きだ。といっても、「読書がめちゃくちゃ好き」とか「欲しい本が山ほどある」というわけではない。「書店」という場所自体が好きなのだ。そこでしか感じられない心の動きを求めているのである。

何気ない日常の中で「ちょっと本屋に行ってみようかな」と思いつき、特に買う本も決めずプラッと本たちが整列する空間に足を踏み入れた瞬間の「非日常に飛び込んだ」ような感覚。

本棚の本たちを順に目でなめまわしているうちに、今まで自分が読んだことのあるタイトルに出会った瞬間の「古い卒業アルバムの写真の同級生と目線が合った」ような気分。

膨大な書籍の中に、面白そうなタイトル、読みたいと思っていた本、カワイイ表紙を見つけた瞬間の「誰かに一目ぼれした」ような胸のときめき。

様々な感情が想起されることこそが書店の魅力、皆を引きつける理由だと僕は思う。どれも日常生活の中で感じられるものだが、それらをいっぺんに感じられる場所は果たして他にあるだろうか。

上にあげた3つの中でも特に3番目、面白そうな本を見つけた瞬間の幸福感といったら、他のものには代えがたい。事実、このために書店に足を運んでいるといっても過言ではない。

「何か買いたい」と思って本屋に行くことは滅多にないから、時間の許す限り書店のいろんなコーナーを巡り(小説から児童書、マンガ、雑誌コーナーまで見て廻る)、書物1つ1つを眺めていく。すると、必ず「獲物を捉えた野生動物」のごとく目の動きが止まる瞬間がある。その視線の先にあるものが、自分のビビッときた本、興味のもった本になる。そのときによって、ビビッとくる回数は違うし、注目している時間も異なる。回数が多ければ、それだけ自分の心を揺さぶる書籍が多いということだし、視線が止まる時間が長ければ、それだけその本に心が引きつけられているということだ。

目が止まった本は本棚から取り出し、表紙を眺める。次にパラパラと中身をめくる。面白そうなページを見つけたら、その部分を少し読んでみる。内容をザッと確認したら、巻末に記載された書籍の発行年月日を調べる。それからもういちど表紙に目をやってから、もとあった場所に戻す。というのが、まあルーティンみたいなものである。(普段意識しているわけではないが、今思い返したらそんなことをやっている気がする)

日常生活に彩りや活力を与えてくれる本たち。

それがたくさん並ぶ「書店」が、日常から切り離された場所に感じるのは、何ともおもしろい。

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