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小さい頃から人生を何度もやり直せるデンマークの教育システムがうらやましい

デンマークに関する本を図書館で借りて読みました。

読めば読むほど、子どもと一緒にデンマークに住みたくなりました。

いや、自分の子ども時代をもう一度デンマークでやり直したいと思いました。

それほど、デンマークで生まれ育った人たちが、とてもうらやましいのです。

なぜなら、人生をやり直せるチャンスを子どもの頃から何度も与えられているからです。


やり直しチャンス①:0年生

デンマークは原則小中一貫で、小中学校に相当する学校は「国民学校」と呼ばれていて、0年生から9年生までの10年間が義務教育期間です。

幼稚園時代にたっぷり遊んだデンマークの子どもたちが、幼稚園から学校へ移るためにソフトランディングさせる期間が0年生です。

「前の年に0年生をやったけれど、言葉や社会性がまだ十分ではないから、もう1年間、0年生をやる」こともできるそうです。

デンマークでは、他の子より1年遅れようが、まったく気にしないそうで、親が心配したり、子ども自身が思い悩むことはないそうです。

デンマークの子どもたちは、日本のような横並び社会とは無縁に、自分の成長にあわせた教育を受けながら、のびのびと育つことができます。


やり直しチャンス②:10年生

国民学校の卒業後は、職業別専門学校や高等学校へと進学します。

思春期の年ごろは、進路をはじめ、なにかと思い悩み、もがいているものです。そうした子どもたちのために、任意で進むことができる、10年生、があります。

9年生で将来の選択を決めかねている人、少し学力が足りなくてこのままでは高等学校へ進むには不安のある人、学力はあるけれど精神的にまだ子どもである人が、高等学校に進むために苦手だった科目を重点的に勉強したり、職業学校へ進むために本物の職場での体験実習をしたり、1年間かけて、決まっていない将来の目標を探すことができるそうです。

10年生に進んだからといって、必ずしも高等学校へ進まなくてはいけないわけでもないそうです。能力が身につかなかったときも、担任と親と子どもで話し合いながら、違う将来を見つめ直すそうです。

翌年、高等学校へ進学したら、1年先輩にかつての同級生がいることもあるけど、人間にはもともと違いがあることを教えられてきているので、劣等感はないらしく、ストレートで進学することがよいという認識がないそうです。

日本のような横並び社会とは無縁なデンマークでは、子どもたちは時間をかけて大事な未来への決断をなすことができます。


やり直しチャンス③:高校をドロップアウト

デンマークの高等学校は勉強が好きで、高等レベルの教育が抵抗なくわかる人が、自分の夢を叶えるために進学します。

高等学校の入学に年齢制限はなく、職業学校で3年間大工の勉強をしたけれど、やはり教師になりたい人は、高等学校に入学し直すことができます。

高等学校の入学時に試験はありませんが、卒業時に国家試験に通らないといけません。ですから、デンマークで高卒は国家試験に受かっているエリートなのです。

もし、高校の勉強についていけなくなったときは、もう一度将来を考え直し、別の道を選びます。ドロップアウトというよりも、新しい進路を見出すのです。

一度決めたら、それしかできないということではなく、いつでも違う選択肢があるのです。絶えず人生の選択肢があり、自分がその気にさえなれば、いつでもやり直すことは可能です。


やり直しチャンス④:高卒後のモラトリアム

モラトリアム(moratorium)は、「しばらくの間やめること」を意味します。

「13年間教育(義務教育10年間+高校3年間)を受けてきたから、次の教育を受けるまでしばらく休まなきゃ!!」

これが、デンマークの伝統、文化ともいえる、若者の粋ないいわけ、なのだそうです。

大学に進む際、受験は基本的になく、高校での学生試験の結果をもとに志願するそうで、高校卒業後も学生試験の結果が不十分だった科目を受け直すことができるそうです。

学生試験の成績だけが大学の入学条件ではなく、成績が多少悪くても、高校を出たあとの経験がポイントになるそうです。

だから、高校卒業後、大学へはすぐに進まず、インターンをしたり、アルバイトをしたり、外国で1~2年過ごしたりして社会経験を積むのがデンマーク人の若者の伝統なのだそうです。

デンマークは、学歴社会ではなく、資格社会といわれ、資格を持ち、かつ資質を備えた本人の能力が第一だそうです。試験の結果だけではなく、経験が重視される社会なので、デンマークの若者たちは、がむしゃらに勉強するだけではなく、多くの経験を積もうとするのだそうです。


やり直しチャンス⑤:社会人もやり直し可能

デンマーク人は生涯に平均6回転職するそうで、転職を「ステップアップ」「キャリアアップ」と考えるそうです。

学校に通いはじめたり、働きはじめてみて、別の職に興味を持ってうつりたくなることはよくあり、そのための軌道修正はデンマークでは決して難しいことではないそうです。

デンマークでは、職場が認めれば、仕事を休職し、資格を取ることも可能で、その間の生活費もしっかり保障されるそうです。

デンマークの大学には社会人枠がしっかり設けられていて、スキルアップのために資格が取れる大学に入ることができ、それまでの職業の経験が考慮されるそうです。

ですから、働きながら、子育てをしながら、生活保護を受けながら、大学で勉強ができます。

大学の学費が無料だからできることですね。


やり直しチャンス⑥:何歳でも学び続けられる

デンマークでは、何歳になっても学び続けることができるということを信条としているので、地域の教育の場も充実しており、国民が生涯学び続けられるシステムが確立しています。

デンマークの教育制度の特色の一つとして「国民大学(フォルケホイスコーレ)」があります。

国民大学は17.5歳以上の成人を対象とした全寮制の学校で、17.5歳以上なら誰でも入学可能です。

面白いのは、この学校ではいかなる「資格」も得られません。また試験もありません。

学校の目的はたんなる知識の習得のみではなく、生徒と先生が生活をともにし、互いに話を交わすなかでそれぞれの「生きる意味」を見つけ出す場となっています。そのため「人生の学校」と呼ばれることもあります。

こんな学校に通いた~い!


デンマークなら人生を何度でもやり直せるから、挫折や劣等感とは無縁そうだなと思います。


「格差と貧困のないデンマーク~世界一幸福な国の人づくり」の著者の千葉忠夫さんから読者へのメッセージです。


『「学力」とは呼んで字の如し、学ぶ力です。学ぶ力はイコール、暗記ではありません。テストの数字がいい、というものでもありませんし、いい大学を卒業している、ということでもありません。

学ぶ力とは、未知を既知にする探究心と、いのちを守る力、そして困難な壁を乗り越えていく力などをすべて総合したものです。「生き抜く力」を育てる根本的なものなのです。

したがって、生き抜く力は情緒面でしっかりと育まれる必要があるのです。社会情勢が変化しても、「生き抜く力」を持っている人は、時代にあった労働の仕方を自ら柔軟に学び、実践することができるのです。

デンマークの教育の中では「学び方を学ぶ」ことを大切にしています。それは「生き抜く力」を自ら習得し、実践するにはどうすればいいかを教えているのです。』


これは、2011年の著書ですが、「生き抜く力」はコロナ禍に必要でしたね。

この先の子どもたちが生きる時代に、いつまたコロナのようなパンデミックが起きるか分かりませんし、災害は確実に起こるであろうと思います。

その時に「暗記」したものなんて、何の役にも立ちません。

「生き抜く力」があれば、いつでもどこでも生きていけます。

そんな子どもを育てたいと強く思います。


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