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短編小説:「夢から醒める」

【前書き】

皆様、お疲れ様です。
カナモノさんです。
今回は〝ある女性の体験〟をかいてみました。
大分前に書いてはいたのですが、暗い内容なので読みにくいかなと出していなかったものになります。
どうか、楽しんで頂けたら幸いです。


【夢から醒める】

作:カナモノユウキ


「もう、目覚められないのかな。」
私はずっと、夢の中にいる。
ここ数日、いや数ヶ月?私は目覚められないでいた。
ドアを開けても同じドアのある部屋しか続いていない、無限に続く迷路のような夢。

ガチャ・ダダダダッ・ガチャ・ダダダダッ・ガチャ・ダダダダッ・ガチャ

最初は夢だし黙ってても勝手に目覚めるでしょって思ってたけど、そんなことなかった。
「現実だと今いつなのかな。」
「何年も立ったりしてるのかな?」とか考えると不安や恐怖が増してしまう。
私は逃げるように部屋から部屋へ進んでいった。
部屋は大体が同じレイアウトで真っ白、四角い部屋にまた白い脚長のテーブルとそれに誂えた椅子が三脚。
それ以外にもテレビやタンスが白に統一されている。
本当にここはなんなんだろう。
「早く目覚めたいよ…。」
そう言えば、何部屋かに数台は必ずベッドがあったりするのはなんなんだろ。
私に寝てとでも言ってるのかな、でも夢の中で寝るなんて何だか怖いわ。
それにやっぱり夢の中だからかな、全然眠くならない。

ガチャ・トットットッ・ガチャ・トットットッ・ガチャ・トットットッ・ガチャ

闇雲にドアを開けて次へ次へ進んだけど、出口のドアなんて無い、白い部屋ばっかり。
「なんなのよ、ここから出してよ…。」
みんな今ごろ何してるんだろ、友達と約束した映画行きたいな。
彼氏とのデートって明日だっけ?
そんなことすらハッキリ思い出せなくなって来た。
必死に思い出そうとしても、頭が痛くなるぐらいで何も思い出せない。
なんだか段々具合も悪くなってきた……、そうだ、少しベッドに座ろう。
ここに来て考え過ぎのせいか、今更疲れてきたのかな。
ベッドに腰掛けると、その心地よさに凄く安心して私は直ぐ横になってしまった。

ブン・ざーーー・ざーーー・ざーーー

急にテレビの画面が着いた、最初は砂嵐ばっかりだったけど段々何か写し出されてきた……なんだか懐かしい映像だ。
小さい手が大きな人達に向けて必死にアピールしてる。
あの大きな人は…若い頃のお父さんだ、お母さんもいる。二人とも楽しそう。
二人がいる部屋、昔の家だ!……懐かしい。
次は幼稚園だ、はじめて好きになったタカシくんだ、可愛いなぁ。
お遊戯会でやったアンパンマン体操、いつの間にかお父さんも踊ってたの面白かった。
迎えに来てくれる時、お母さんが手繋いで帰ってくれるのが嬉しくてワクワクしてたっけ。
小学校は色々したなぁ、タカシくんと四年生まで一緒のクラスでいつも後ろの席で眺めてるの好きだった。
テストでいい点取った時のお母さん特製カレーが大好きで、お父さんも食べたいからって応援してくれたな。
あ、大好きなジャングルジムだ!
お父さんと一緒に登って見た夕陽が綺麗で、日曜日はお父さんと良く夕方の公園行って遊んで。
この映像は、小学校四年生ではじめてお母さんと喧嘩したやつだ。
あの時のお母さん、怖かったな。
そうだ、私の部屋を勝手に片付けてタカシくんへのラブレター読まれたんだ。
そんなことで怒ったんだな……私。
小学校の卒業式、お母さんの泣き顔が目から離れなかったな。
お父さんが仕事抜け出して来てくれて、帰り道に3人で食べたハンバーグが凄く美味しかった。
この教室も懐かしいな、中学の教室だ。
いつも友達に会うのが楽しみで、早く登校してたっけ。
部活とかもはじめて、この頃からお母さんともお父さんとも遊ばなくなったな。
親友のナツミに会ったのもこの頃だ。
アイドルとかアニメとかの話して、お小遣い二人で出し合って雑誌とか買って。
修学旅行、同じ班じゃなかったけど、夜中にこっそりナツミの部屋に忍び込んでみんなで夜更かししたな。
高校の担任だったヤナギタ先生、厳しい人だったけど好きだったな。
高校になってもほとんど仲間が変わらなくて安心したなぁ。
この場面、はじめて告白した公園だ。
脚も声も震えてたな私、いいよって言ってくれたの嬉しくて私泣いたんだっけ。
お父さん、この頃から体壊しぎみで入院してたな。
お母さん、看病大変そうだった。
ノートに数式書いてる、大学受験だ。
お父さんもお母さんも大変だったから、少しでも安心させたくて勉強頑張ったな。
目標の大学受かった報告、お父さんに直接したかったな。
お母さんと一緒にお墓に報告しに行った時、二人で泣いたな。
お母さんと二人暮らし、辛いことあるけど楽しくて。
色んな話もしたな、彼氏と別れた話とか、ナツミが結婚するとか。
テレビは私の小さい時から今までを写し出した。
不思議な番組、何か走馬灯みたいだな。
思い出せば出すほど、鮮明にテレビに写し出される映像。
見ている内に気持ちが落ち着いて。
あれ、眠くなって来た。
このまま眠ると、私どうなるんだろ。
………みんなの夢、見れるかな。
起きたら、みんなに会えるかな。
すーーーーっ
すーーーーっ
すーーーーっ

ピーーーーーーーーーー

白い部屋で寝ていた私を、お父さんがお越しに来てくれた。


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

〝最後の時、走馬灯は見れるのだろうか〟とういう疑問は皆様が一度は考えると勝手に思ているのですが。その見え方はどのような感じなのかと妄想した時に書き上げたものです。
僕ならせめて、録画映像を見るように走馬灯を眺めてみたいと思いこのような内容に落とし込んだんだと思います。

力量不足では当然あるのですが、
最後まで楽しんで頂けていたら本当に嬉しく思います。
皆様、ありがとうございます。

次の作品も楽しんで頂けることを、祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


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