【本との出会い 55】なぜ働いていると本が読めなくなるのか~全身全霊をやめましょうというお話~
現代の労働は、労働以外の時間を犠牲にすることで成り立っているというまえがきから始まる本でした。
なぜ、この本を手に取ったのかの理由は二つあります。
ひとつは、まさに、今、本が読めなくなっているからです。
しかし、それは、働いているからか?と問われるとそうではないと思います。
実際、10年前くらいまでは、私は本の虫でした。
仕事は、今よりずっとハードでした。
それなら、なぜ、今は本が読めていないのか?
心当たりがあるものの、そのことの他者の意見を聞いてみたいというのがありました。
そして、二つ目は、帯封にある「疲れてスマホばかり見てしまう・・・」に、まさに心当たりがあったからです。
その要点を頭に置いて、読書家の自分に戻りたいということと、読書の何が楽しくて、何が得なのかをもう一度知りたいと考えて、この本を手に取りました。
では、要点をまとめてみます。
1.確かに、読書の虫の頃の読書は楽しむというよりも、仕事のためのスキルアップでした。
そうなってしまう背景には、現代社会、競争社会、格差社会、合理化の環境などがあります。
ようは、仕事のスキルがあがらないと、会社で上に行けない、成果があがらない(業績の)、給料が上がらない、生活がよくならない、という世の中では当然の背景があったからです。
自己啓発書。というやつです。
自己啓発書の走りは、明治時代だそうです。
私も愛読した、デールカーネギーの「人を動かす」、ナポレオンヒル「思考は現実化する」などにつながる啓発書が出されたのもこの時代だとか。
国外では産業革命、日本では大正の社会不安、そして戦争、戦後の高度経済成長がもたらす競争社会を背景に、どんどん教養書、自己啓発書が出され、雑誌の登場で、サラリーマンの読書が増加したとの指摘もあります。
教養も仕事のためだった時代です。
2.「円本」とは「全集」のこと。
思い当たるのは、両親の私財にも、たしか「文学全集」のような20冊くらいのハードカバー、ケース付きの書籍がありました。
が、読んでいるのを見た記憶はありません。
それに、各屋やには、応接間みたいな場所が結構あって、そのガラス棚の中にもそれらしき「全集」が並んでいました。
そう、本がインテリアだったという事実です。
確かに、今、思い出しても、応接間や書斎に「全集」が並んでいる景色はかっこいいと思います。
ああ、全集を読みたい。全集は図書館でないと、かっこつかないかな、とかまで考えてしまいました。
3.生まれる前の時代のベストセラー(1950年頃)
文庫本が出されたものこの時期。
新書もこの時期。
サラリーマンの世界を小説化したものが、売れたらしいです。
4.そして、1970年代は、司馬遼太郎が登場、その後1980年代のミリオンセラー時代に村上春樹、吉本ばなな、俵万智など。
司馬遼太郎の小説と言えば、「坂の上の雲」。
日経の著名人の本棚?のようなコーナーで、結構な財界人が読んだ本の中に、「坂の上の雲」がでてきます。
まさに、立身出世。
もちろん、ドラマになったことでも、知らない日本人はいないほどでしょう。
80年代になると、女性の読書家も増えて、「ノルウェイの森」「窓際のトットちゃん」など、有名な著書が登場することになりました。
5.1990年代、このあたりから、私の読書人生が交わってきます。
あらためて、自分が読んだ「本らしい本」はなんだったのだろうかと思い出す作業をしてみました。
本らしい本とは、幼少の絵本、童話、マンガではなく、大人が読む小説、専門書、啓発書、伝記などのことです。
もし、記憶が間違っていなければ、赤川次郎、眉村卓などの、「角川文庫」ではなかったかと思うのです。
ということは、角川映画とのつながりからの読書が、本を選ぶひとつの基準点になったということでしょうか。
本題からずれましたが、1990年代に、これらの本が流行ります。
7つの習慣、いまでも大事に読んでいます。
そして、この大事な習慣、今でも実践できていない自分がいます。
6.読書はノイズなのか?
著者は、とても興味深い指摘をしています。
読書はすなわちノイズなのだと。
ノイズを除去する行為は、労働と相性がいい。だから自己啓発書が流行ると。
仕事、仕事、仕事・・・。読書とは、そのための自己啓発書による知識、ノウハウの蓄積(の錯覚)と言われると、背筋が寒くなりますね。
そういわれると、そうだなと・・。
7.全身全霊をやめましょう。
確かに、全身全霊という言葉は、もういらない年代になりました。
この本と出合って、
ああ、帰って書棚の本でも読書しようか、コーヒーでも飲みながらとか。
読むなら小説だ。しかも、池井戸や東野ではなく、赤川次郎にしようかな、とか。
そんな、閑雅をめぐらすだけで、なんとなくですが、半身でいることが持続可能に思えてしまう、そんな読後感のある本でした。
「称揚」という、あまり聞きなれない言葉が後半の文中に頻発します。
ほめたたえる、仕事に完璧になることをほめたたえるのをやめませんか、という問いです。
読書とはなにか? 読書とは、「自分とは関係のない他者を知る文脈を増やす手段」であると。
8.働きながら本を読むコツ
①SNSでフォロー(たとえば、このnoteとか)
ほんと、noteはこれに向いています。私も読書について、次のマガジンを発行していますが、そこをフォローしてくれた方々は、やはり読書好きで、読書発信をしている方々。
そこで紹介される本を、ゆるく読んでいくことはとても楽な行為だと思います。
②iPadを買う(もう持っています)
なんといっても、雑誌が読めます。しかも、無料で。
さすがに、小説などは、ちょっと疲れます。
③カフェ読書を習慣に(カフェ、贅沢な時間です)
なんでしょう。同じように本を読んでいる人が近くにいるって、なにげに心地いい時間です。
多少の雑音が、読書には向いているのかもしれません。
④書店に行く(それも地域の書店)
大型書店は、背表紙を見て歩くだけで楽しいし、読書欲をかきたてます。
しかし、最近では、個性を出した街の本屋も多いです。
できれば、そこで本は買いたいものですね。
⑤読まなかったジャンルに手を出す。
なにげに、これは高いハードルですね。
私が出を出さなかったジャンルって?と考えると。
時代小説、洋書(外国の小説)、哲学系、などでしょうか。
⑥むりをしない。
まさにこれですね。読書が苦痛になっては、いいことないです。
今、直感で何を読みたいかと問われると。
「山崎豊子」さんの小説です。
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