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〖短編小説〗2月11日は「万歳三唱の日」

この短編は518文字、約1分30秒で読めます。あなたの1分30秒を頂ければ幸いです。

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この目一面に真っ赤に映るのは、あの赤か。青空の中を切り取る白い一枚は、かの有名な絵画の如く、誇らしげになびいている。

原始を思わせる振動。揺れる揺れる、地面が揺れる。動物の群れの足音。こんな大群、みたことない。動物ならば足音はバラバラ、みな違う個体だから当たり前。だけど変だ。この大群の足音は規則正しい。気味が悪い足音、続く続く。

お手をふるのはどちら様?まぁ、みなさん笑顔が素敵。手に持っているのは鯉のぼり?いいえ、いくら男児を応援しようとも、鯉のぼりはいけません。それは淑女の恥というもの。では心にもっているのはなぁに?白いキャンバスに一滴垂れた赤。

もう時間がありません。急いでいるの、みんなで急いでいるの。慌てることはないのに、どうしてそんなに急ぐのか、だれにも答えは分かりません。
どうしてここにいるのでしょう。だれにも答えはわかりません。

真っ赤に紅葉するのは、ほっぺたです。そして全体を包む異様な高揚。あぁ、聞こえます「万歳、万歳、万歳」嫌でも聞こえます。「万歳、万歳、万歳」

喜びや祝いを表す動作などを指していう言葉の万歳。

わたしはなぜ、ここにいるのか分かりません。わたしも数ある足音の、その一つです。

2月11日は「万歳三唱の日」

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