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〖短編小説〗2月14日は「ふんどしの日」

この短編は459文字、約1分で読めます。あなたの1分を頂ければ幸いです。

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世の中には「人の褌(ふんどし)で相撲を取る」という言葉がある。その語源は明治時代までさかのぼる。当時からふんどしは力士の命と等しく、大変に神聖なものとして扱われてきた。神事に臨む力士が身に着ける唯一のものであるから納得である。

そして前代未聞の事件は起きる。当時の人気力士であった「安房天坊(あわてんぼう)」関が、予め部屋で決めていたふんどし以外のふんどしを着用して本場所に臨んだ。その時に着用したふんどしは、安房天坊の恋人から送られた物で、今では当たり前だが当時では珍しい金色のふんどしだった。のちにそのことが公になり、安房天坊は処分を受ける。ただ、その後の安房天坊の談話が残っている。

「わたしの誕生日である、2月14日に頂いたふんどしは、彼女の愛情そのものである。力士である私が、ふんどしを身に着ける以外の使い道があったならば、逆に教えてほしい」

今現在まで続く、バレンタインデーの始まりだと言われているこの事件。今年は、肌に優しい天然素材を使用したオーガニックふんどしが売れているそうだ。

2月14日は「ふんどしの日」


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