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【短いおはなし】3月16日は「国立公園指定記念日」

あーぁ、今日は一番苦手な数学のテストだ。昨日の英語はまぁなんとかなったんだけど、今日の数学は絶望的……。

「はーい、では筆記用具以外はすべてしまってください」

試験監督の先生がそう言うと、各々が鞄にノートや教科書、参考書をしまった。無駄なあがきと知りつつ、私も粘りに粘って最後まで公式を覚えた。

裏返しになったテストが配られる。念力で表面が見えないかとバカな男子の何人かがテストを凝視している。

チャイムが鳴った「はい、でははじめてください」

先生の言葉と共に一斉にテストを表にする生徒たち。まずは学年、クラス、名前を書いてっと。さっそく問題の1を確認する。そこには次のように書かれていた。

問題1.ここはとある国立公園です。この国立公園はとても広いことで有名で、四季折々の豊かな自然が何よりの宝物です。
さて、この国立公園には有名な池があります。その池にはもっと有名な兄弟がいます。兄のたかし君と弟のまさる君です。兄のたかし君は今年小学校5年生、弟のまさる君は小学校2年生になりました。
この2人は毎日毎日365日欠かすことなく、池の周りを回り続けています。さらに不思議なことに、たかし君は時計周りに、まさる君は反時計回りに回ります。そして、二人ともロボットのように決まった速度で池の周りを歩きます。
しかし、兄のたかし君は今年で5年生もう高学年なのです。彼のことをいいえ、彼ら兄弟のことをクラスの女子たちは陰ではグルグル兄弟とバカにしています。そのことに気が付いている、たかし君は疑問を感じ始めました。なぜ僕たち兄弟は毎日毎日、学校が終わった後、この国立公園で池の周りを回らなければならないのか。これに何の意味があるのか。自問自答の日々が続きます。
そんなある日、弟のまさる君にそれとなく聞いてみました。まさるは池の周りを歩くのは辛くないかと。そして弟まさる君の言葉を聞いて、たかし君は涙が出ました。
僕は反時計回りに歩いた先でいつもお兄ちゃんと会えるから嬉しいし、楽しいよ。これからも頑張ろうねと言ったのです。
それからは、雨の日も雪の日も休まず兄弟は池の周りを歩きました。そんなたかし、まさる兄弟のある日からの問題です。
1周7kmの池の周りを、たかし君は吹っ切れたように分速150mで、まさる君はいつもと変わらず楽しそうに分速100mで、同じ場所から逆方向に進みました。
2人が出会い喜びを分かち合うのは出発してから何分後でしょう。

3月16日は「国立公園指定記念日」

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