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【短いおはなし】2月26日は「フロリダグレープフルーツの日」

米国一色のあなたは一人歩いている。友だちの家からの帰り小さいリュックを背負ったあなたは夕暮れの中歩いている。

少し帰りが遅くなり早足になる。最近、靴流通センターで買ってもらったスニーカーのサイズはどう? 試しに履いてみた時に本当はきつかったけど、ピンクの色はこのサイズしかありませんと店員さんに言われて、お母さんに「サイズどう?」と聞かれ、ぴったりだよと噓をついたことを知ってる。

あなたは友だちの家で、はじめてグレープフルーツを食べたね。今まで見たこともない大きな蜜柑がでてきて、つい「大きい蜜柑」と言ったら、友だちのお母さんに笑われて少し恥ずかしそうにしていた。グレープフルーツは新鮮な宝石みたいで、目を離せなかったあなた。友だちが食べるのをまねして、お口に入れた。この世の果汁すべてを入れたジュースかと思うほど汁が溢れ、白いワンピースに跳ねた。今まで食べていた商店街の八百屋の蜜柑がサハラ砂漠に感じたね。

帰りに友だちのお母さんからグレープフルーツを一つもらったあなたは、重くて両手で持った。「フロリダグレープフルーツって言うのよ。世界で一番おいしいグレープフルーツよ。ほらここ見て」とお母さんの真っ赤なマニュキュアの爪が、黄色いフロリダグレープフルーツのおへそみたいに貼ってある青いまるいシールを指さした。そこにはFloridaと書いてあったが、あなたはまだ英語は読めない。アメリカのフロリダのグレープフルーツと教えてもらい、あなたの脳内は米国一色。

広い海、いんぐりっしゅ、金の髪、馬、砂浜で鬼ごっこ、アメリカステーキなど、思いつくままにフロリダを想像し、片手だけでかっこつけて持とうとしても全然持てないフロリダグレープフルーツを両手でしっかり持つあなた。フロリダグレープフルーツをたかいたかーいし、そのまま匂いを嗅いでみようとするも、鼻に激突! 一瞬だが鼻血のあの赤い匂いと外国のフロリダの匂いがした。ついでに青いシールも嗅いでみると日本の東京の匂いがした。

あなたは思う。大人になったらフロリダグレープフルーツをトラック一台分買いにフロリダに行こう。お金はドルでしょ? 知ってますとドヤ顔のあなた。

2月26日は「フロリダグレープフルーツの日」

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